ファッション

「グラインド」前編集長が新メディア「シルバー」で目指す“東京発のインターナショナル誌”

ファッションカルチャー誌「グラインド(GRIND)」と「パーク(PERK)」の千葉琢也・前編集長が2誌発行元のミディアムから独立し、自身の会社サウザンド(THOUSAND)で9月20日、新メディア「シルバー(SILVER)」をスタートする。3、6、9、12月の年4回発行のプリント版(1500円)とデジタル版の双方で始まる同メディアは“東京発のインターナショナル誌”を目指す。プリント版は「時代を超える価値を持つ、次世代のビンテージとなる雑誌」作りを心がけ、デジタルはプリントと同じ内容を週2回の頻度で更新する。「インターナショナル誌」とはどのような定義か?デジタルとプリントにはそれぞれどのような役割を与えるのか?千葉編集長に聞いた。

WWD:なぜ、ミディアムを退社して「シルバー」を立ち上げたのか?

千葉琢也「シルバー」編集長(以下、千葉):自分が次のステップへと進むために、インターナショナルに認められるファッション誌を作りたかった。一番最初に考えたのは「どう消費されないファッションメディアを作るのか」。1980、90年代の「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」や90年代の伊「ヴォーグ(VOGUE)」など、インパクトのある本当にいいものはデジタル上でも未だに存在感を放っている。自分も“次世代のビンテージ”となるような、時代を超えて残る消費されないものを同じ志を持つブランドと一緒に作りたい。そのためにはよりよいファッションストーリーを作る必要があり、予算などの制約を自分で判断したかった。ミディアムを退社し、サウザンドを立ち上げたのはそのためだ。

WWD:“東京発のインターナショナル誌”を作ろうと思った経緯は?

千葉:東京には外国人を含めて約2500万人がいる、ファッションの中心地の一つ。でも、「ヴォーグ」や「GQ」のような海外誌のローカル版以外、インターナショナル誌と呼べるものがない。そもそも世界を目指す必要がなかったのだろう。一方で、人口300万人のドイツ・ベルリンにはデムナ(・ヴァザリア、Demna Gvasalia)の「ヴェトモン(VETEMENTS)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」を世界に広めた「032c」のような雑誌がある。自分も東京から世界に発信できる雑誌を作りたいし、それを「シルバー」で実現したい。

WWD:何人体制で制作する?

千葉:僕を含めて会社には4人、それと外部エディターの方だ。「シルバー」では、単に洋服だけでなく、アートや音楽など着る人のスタイルを含めた、広い意味での“ファッション”を表現する。そのため年4回発行のうち、3と9月はファッション、6と12月はライフスタイルにフォーカスする予定だ。スタイリストやファッションディレクターも単に洋服を着せるだけでなく、人間像を表現できる方々を選んでいる。

WWD:扱うファッションブランドはドメスティックが中心?

千葉:世界中のブランド。そうしないとインターナショナル誌ではなく、ただの“東京の雑誌”になってしまう。各国のブランドと一緒に並べることで、東京のいいブランドを世界に発信したい。創刊号ではモデルにローラさんを起用した「アレキサンダーワン(ALEXANDER WANG)」のファッションストーリーや、木村拓哉さんや高良健吾さんらを写真家の操上和美さんが撮り下ろす「ワコマリア(WACKO MARIA)」のページなどがある。著名人の方を起用することで単にマニアックなもの、というのではなくアンダーグラウンドなものでもポップに表現できるようにしている。自分が意外とメジャー思考なだけかもしれないが(笑)。

メディア名「シルバー」の由来

WWD:なぜ、メディア名は「シルバー」に?

千葉:アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)のスタジオ「シルバーファクトリー(THE SILVER FACTORY)」から取った。芸術家から音楽家、ポップなものからサブカルチャーまであらゆるカルチャーの交差点だった「シルバーファクトリー」にならい、新メディア「シルバー」もカルチャーの媒体であり媒介でありたい。デジタル版をスタートするのも、現代で媒介として存在するため。販路も書店の他、世界中のセレクトショップや日本全国の美容室など、クリエイティブ感度の高い人との媒介となれるようにしている。

WWD:デジタル版のコンテンツはどういったもの?

千葉:基本的にはプリント版と一緒。週2回の頻度で更新する。違いはプリントが日本の雑誌を強調するため日本語で掲載するのに対し、デジタルは英語と日本語のバイリンガル。紙メディアはいかに残してもらえるかが重要で、そのためにレベルの高い装丁にしている。特装版も作る予定だ。そのためにはまず多くの人に見てもらう必要がある。その役割はデジタルが担っている。モデルに著名人の方を起用しているのもそのためだ。ソーシャルでバズるはずだし、逆にバズらなかったら社会が必要としていない、ということ。これはプリントも同じで、ある程度売れないと意味がない。初版も2万部と、インディペンデント誌にしては多い。

WWD:週2回の更新頻度は、他メディアと比べかなり少ないのでは?

千葉:逆にコンテンツを大量に出し過ぎると、何が重要な情報なのかが分からなくなってくるし、他媒体と同質化してしまう。一つ一つのコンテンツが強力なことの方が重要。仮に月間のPV(ページビュー)数が少なくても、ソーシャル上で話題になればそれでいい。

WWD:イベントなどは考えている?

千葉:「シルバー」のローンチパーティー的なことをやりたいのではなく、その都度ブランドやアーティストとのコラボや展示などができればいい。イベントは瞬間的なもの、プリントは残すもの、そしてデジタルは常に社会にタッチするためのもの。この3本柱で「シルバー」という媒介を作り上げる。

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