1. なぜアパレル・ビューティ分野で“パーソナライズ”化が進むのか

なぜアパレル・ビューティ分野で“パーソナライズ”化が進むのか

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2018/3/31 (SAT) 10:00
左から、川崎道文・資生堂ジャパン ブランドマネジメント部デジタルフューチャーグループ ブランドマネジャー、天沼聰エアークローゼット社長、溝口勇児FiNC社長

 “パーソナライゼーション”に関連したビジネスを行うエアークローゼットや資生堂ジャパン、FiNCの3社が3月30日、合同で記者会見を開いた。近年注目が集まるパーソナライズサービスに対する提供会社ならではの思いを伝えるための会見で、新サービスの発表などではない、こうしたイベントは珍しい。エアークローゼットはスタイリストが洋服を選んでくれる月額レンタルサービスやパーソナルスタイリング事業「ピックス(pickss)」などを、資生堂ジャパンは毎日の体調に合わせてカスタマイズできるスキンケアサービスの「オプチューン(OPTUNE)」、FiNCは自身の健康管理やフィットネスのためのアプリ「FiNC」をそれぞれ運営している。

 パーソナライゼーションが注目され始めた背景には、現代ならではの“情報過多”という問題が潜む。特にファッション分野では、毎シーズン新しい商品が発売されるので、ネット通販にしても“お買い物疲れ”を起こす顧客は少なくないという。天沼聰エアークローゼット社長は、「モノが増えていく現代において、限られた時間しかない忙しい人たちは、なかなか本当に欲しいものと出合えない。自分が知っているサイトやブランドなど、探せる範囲の固定概念の中でしかモノと出合わなくなっている。テクノロジーを使ってそんな出合いをサポートし、ライフスタイルを良いものにしたい」と述べる。

 資生堂も2017年1月に化粧品のパーソナライゼーションに特化した米ベンチャー企業のMATCHCoを買収するなど、パーソナライズ事業を重要なカテゴリと捉えている。背景にはファッション同様“情報過多”という問題がありつつも、川崎道文・資生堂ジャパン ブランドマネジメント部デジタルフューチャーグループ ブランドマネジャーは「女性の肌は睡眠時間や食生活などに影響されやすく、変化する肌に合わせて最適なスキンケアを提案すべきだ」と美容業界におけるパーソナライゼーションの必要性を強調する。

 「オプチューン」ではアプリ経由で自身の肌状態を計測するだけで、自分に合う最適な5つのカートリッジ(3つの美容液と2つの乳液、1000以上の組み合わせがある)を受け取れる。カートリッジは“オプチューン ゼロ”という専用マシンにセットすることで利用できるのだが、毎日の利用時に肌状態や天候などを元に最適な5種類の配合を自動算出することで、その時に最適なスキンケアが実現できるという画期的な仕組みになっている。まずはテストローンチのため、マシン自体は無料でレンタルができ、カートリッジ(約2カ月持つもので1本2800円、5本セットで1万4000円)と月額利用料(3カ月目以降900円)で利用ができるという。

 たしかに店頭で購入した商品はその日のコンディションを元に提案されているわけで、それを数カ月続けて使うというのは必ずしも最適な選択ではない。「オプチューン」ではマシン自体がサーバーとデータ連携されているため、どこまでカートリッジを使ったのか、どういったバグが起きているのかが全て把握できるという。スキンケアにおけるパーソナライゼーションは、“店頭カウンセリング”の先にあるサービスとも考えられるだろう。

 なぜこうしたスキンケアがなかったのか聞けば、川崎マネジャーは「どこの企業も同じようなことは考えているはずで、ビューティ企業だけでなく美容機器の企業など、競合も増えるものと考えられる。だからこそ、まずはベータ版を出して顧客からのフィードバックを得たかった。今後は機械のメンテナンス方法といった予想外の課題が見えてくるはずで、トライアルを通じて早く本格ローンチを目指したい」と答えた。

 3社目に登壇した「FiNC」は高校時代からトレーナーとして活躍した溝口勇児・社長が17年3月にローンチしたアプリ。“全ての人にパーソナルコーチを”を掲げ、約150万ダウンロード(しかも毎日約1万ダウンロード増)を達成した。トレーニングや予防医学においてパーソナライゼーションは不可欠なものだが、「FiNC」は医者といった専門家の知識とテクノロジーを使って簡単にパーソナライズされた情報発信ができるアプリを作り上げた。ANAやカゴメなどを主要株主に持ち、秋元征紘・元ナイキジャパン社長や松尾豊・東京大学大学院特任准教授らが社外取締役に名を連ねることからも注目度の高さが伺える。食事の写真撮影をするだけでカロリー計算をしてくれたり、体重・姿勢・歩数などの管理を簡単にしてくれたり、これでパーソナルな日々の健康管理ができるのであれば非常に頼もしい。

 こうした企業の話を聞くと、情報にあふれ、取捨選択を迫られることが多いファッションやビューティ、ヘルスケアなどの日常生活に即した分野ほど、パーソナライゼーションは当たり前にあるべきサービスだと感じた。ここ最近で急激に注目されているのは、テクノロジーを活用したパーソナライゼーションサービスで、溝口社長が「すでに食事・睡眠などのデータが200万くらい集まっている。年内に4〜5倍まで伸びるだろう」と語るように、大量のデータを機械学習できるようになったAI技術の進歩が裏にある。しかも、利用者から集まったデータをもとにシステムが進化することで、さらに精度の高いサービスを提供できるという正しいサイクルがその成長を加速させている。だからこそ、成長の半肩を担ぐ一般ユーザーへの認知度拡大は急務だろう。そんなタイミングでのイベントだけに、一般ユーザーへ情報を伝えるメディアの一員でもある僕にとって、改めて勉強ができるいい機会になったことは言うまでもない。

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