ファッション

「イッセイ ミヤケ」がユニホーム 「LVMHプライズ」ファイナリストの素顔

 LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENESSEY LOUIS VUITTON)が若手デザイナーを支援するために創設した「LVMHヤング ファッション プライズ(以下、LVMHプライズ)」。その2018年ファイナリスト9組のうちの1組に選出されたのがルドヴィック・デ・サン・サーナン(Ludovic de Saint Sernin)だ。ルドヴィックは自身の名前を冠したブランドを18年春夏シーズンにプレゼンテーション形式でスタート。ユニセックスなデザインを基調に、アート性やストーリー性を絡めた“どこか奇妙で上品な”コレクションを発表している。2シーズン目ながら既にアイデンティティーを確立しつつあり、アデライデ(ADELAIDE)をはじめ、スーパー エー マーケット(SUPER A MARKET)、伊勢丹新宿本店の自主編集売り場リ・スタイル(RE STYLE)など、日本でも徐々にその存在感を増してきている。「毎年来日している」と語り、インタビュー中もせんべいをしきりに手に取っていた(!?)ルドヴィック・デザイナーのインスピレーション源や洗練された上品さの中にある“奇妙さ”を探った。

WWD:今回の来日の目的は?

ルドヴィック・デ・サン・サーナン(以下、ルドヴィック):旅行や制作のためのリサーチを兼ねて毎年この時期には来日するようにしています。それに加えて今回は、業界のいろいろな方に出会い、私のコレクションをお披露目することも目的です。日本にはいろいろなインスピレーション源がある。デビューコレクションで使った生地は日本で調達したもので、他の国ではなかなか手に入らなかったもの。香川県のイサム・ノグチ庭園美術館の色合いのファブリックを使ったこともあります。日本のデザイナーも大好きで、「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は私のユニホームと言ってもいいくらいです。

WWD:ファッションデザイナーになったきっかけは?

ルドヴィック:非常に自然な流れでファッションデザインの世界に入っていきました。子供の頃から絵を描くことが好きで、母が昔の「サンローラン(SAINT LAURENT)」のショーを録画したVHSを見せてくれたことがきっかけとなり、ファッションの絵を描くようになりました。その後、18歳の時にパリの芸術大学デュペレ(Duperre)でファッションやアートなど、さまざまなことを総合的に学び「バルマン(BALMAIN)」にインターンとして入社しました。

WWD:なぜインターン先に「バルマン」を選んだ?

ルドヴィック:オリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)=クリエイティブ・ディレクターが若くして成功しており、彼の下で学びたいと考えたからです。「バルマン」では1日約19時間とハードワークが続きました。デザイナーとしてのリサーチの時間が取れないなど、19時間の労働は決して理想的なものではないと思いますが、そこで学んだオリヴィエの仕事に対する姿勢や「バルマン」のクラフツマンシップは今の私の仕事に生かされています。

WWD:今までに影響を受けたアーティストやデザイナーはいる?

ルドヴィック:アーティストだとサルバトール・ダリ(Salvador Dali)らがいます。ファッションだと先ほども言った「イッセイ ミヤケ」や「ザ ロウ(THE ROW)」、そしてビンテージショップで見つけた「トッド オールダム(TODD OLDHAM)」などですね。トレンドに追従したものではなく、変わらないスタンスで作品を作り続けている人たちに魅力を感じます。

WWD:デザインする上でのこだわりや特徴は?

ルドヴィック:良質な生地を選ぶようにしています。まだまだ小規模なブランドですが、今までの経験上そこは譲れない。あとは色合い。ブランドの規模感からメンズのコレクションスケジュールに合わせてプレゼンテーションを行っていますが、女性、男性を選ばないジェンダーレスなデザインもブランド開始当初から意識しています。

上品かつ奇妙なコレクションの裏にあるテーマとは?

WWD:コレクションからはアート性やセクシャリティが感じられたが、テーマやストーリーは設けている?

ルドヴィック:本やアート作品、SNSなど日々いろいろなものをチェックし、インスピレーションを受けています。それがコレクションを作るに当たって洗練され、一つのストーリーとなる。今回のコレクションでは先ほども言ったダリの作品に見られる“シュルレアリスム(超現実主義)”をコンセプトに、「ロリータ(Lolita)」という映画を題材にしました。主人公の女性が年上の男性に好かれ、さまざまな駆け引きが行われるというストーリーです。コレクションでは「もしその主人公が男性だったら」というイメージのもと生まれる、“矛盾”を持ったセクシャリティを表現しました。上品さはありながら、カッティングで肌を見せるなどコレクションとしてのバランスをとても大切にしています。レスリングウエアから着想を得たレザーパーツを組み合わせたウエアやフロントが大きく開いたロング丈のパンツなど、服だけど簡単には着られない“奇妙さ”や“矛盾”を込めています。

WWD:18-19年秋冬コレクションでは「レペット(REPETTO)」とのコラボレーションも行っていたが、その経緯は?

ルドヴィック:デビューコレクションでもスタイリングのためにクラシックな「レペット」のバレエシューズを使っていましたが、そこから男性もはけるシューズを作ると面白いのではという話になり、今回のコラボに至りました。「レペット」は本来、ダンサー用のモデルとファッション用のモデルを作る工場がそれぞれ別。今回のコラボモデルでは両方の工場に協力してもらい、“スティッチ・アンド・リターン”というダンスシューズの製法を用いつつ、タウンユースなアイテムを作ることができました。偶然にも私の祖母の家の近くに「レペット」の工場があったということも、アイテムとしてのストーリー性を増してくれています。

WWD:「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」2018年のファイナリストに選ばれた理由を自身でどう分析する?

ルドヴィック:こだわって作ったビジュアル全般の評価が非常に高かったことだと思います。審査員の方はノートにブランドとそのコレクションの内容を細かく書き込んで評価しているのですが、私のブランドに関しては彼らのノートはほぼ白紙に近い状態でした。恐らくブランドの世界観やデザイナーの私がどういう人物なのかがビジュアルを通して瞬時に伝わったのでしょうね。

WWD:今後の目標は?

ルドヴィック:現在は私ともう1人のデザインスタッフの2人で自宅で制作しています。まずは今の活動を続けていくこと。いずれは多くのスタッフとパリに大きいアトリエを持ち、作品はもちろんビジュアルなどのコンテンツをより充実させていきたいですね。そのためにも「LVMHプライズ」でグランプリを獲得することが第一の目標です。

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