大手アパレル相次ぐリストラ、大量出店戦略は曲がり角に?

コラム 決算

2015/6/21 (SUN) 12:00
廃止が決まった「プラネットブルー」の店舗
 大手アパレルが相次いでブランド廃止や店舗閉鎖などの大掛かりなリストラを発表した。アベノミクスを追い風にした株高やインバウンド消費の急増が喧伝されているが、その恩恵は一部に留まり、昨年4月の消費税増税後、ファッション市場の主戦場である中間層の消費が落ち込んでいることが浮き彫りになった。特にワールド、TSIホールディングスが打ち出したリストラ策は、数百店に及ぶ規模であり、ファッション業界に衝撃を与えている。

ワールド最大500店・15ブランドを廃止 / TSI新たに 260店・11ブランドを廃止

 「固定費の削減のためには一切の聖域を設けない」。5月18日、大阪で開かれた記者会見でワールドの上山健二・社長は断言した。同社は今期(2016年3月期)、10〜15の不採算・低収益ブランドを廃止し、400〜500店を閉める。今期から18年3月期までの3カ年にわたる構造改革の柱として掲げたもので、同社にとって過去最大規模のリストラになる。コスト削減を徹底することで収益の改善を図り、近隣商圏型ショッピングセンター向けの「シューラルー(SHOO・LA・RUE)」、百貨店向けのニューミセスブランド「リフレクト(REFLECT)」、リブランディングが奏功した「インデックス(INDEX)」といった堅調な業態に経営資源を集中させる。上山社長は、「出店数がすなわち企業の成長規模の目安になるというこれまでの考え方から脱し、抜本的な改革を行う」と説明したが、具体的な対象ブランドや店舗については「中間決算で進捗を伝える」と明言は控えた。

 約3000店舗ある同社の6分の1近くが退店することになる。「前期は増益になったものの、社員は誰も結果を出せたとは思っていない。3カ年計画によって、以前の右肩上がりの高収益体質に戻す」。社員の早期退職者募集については言及していないが、撤退事業の規模からみて避けられそうにない。18年ぶりに創業家以外からのトップ就任となった上山社長は銀行出身で長崎屋などの再建に手腕を発揮してきた。ワールドでは荒療治が社長としての初仕事になった。

 TSIホールディングスも5月28日に就任する斎藤匡司・新社長のもとリストラを継続する。同社は今月15日、「プラネットブルー(PLANET BLUE WORLD)」「レベッカミンコフ(REBECCAMINKOFF)」「ボディ ドレッシング(BODY DRESSING)」など11ブランドを8月末で廃止すると発表した。これらの合計店舗数は約260店、売上高は約100億円。単純計算で1店当たりの年商は3800万円と低調だった。関連部門を含めて800人の従業員が在籍している。転籍などでグループ全体の再配置を図り、早期希望退職も募る。東京スタイルとサンエー・インターナショナルの統合によって誕生したTSIは2011年6月の設立以来、営業赤字が続き、前期(15年2月期)に初めて黒字を達成した。この間、「聖域なき構造改革」(三宅孝彦・取締役)を宣言し、61ブランド・2468店舗だった販売体制を前期までに42ブランド・1570店舗へと3分の2に縮小。ただ低収益の課題は解決されず、18年2月期の目標に掲げる営業利益率7%の達成には一層のリストラが必要と判断した。

ワールドが最大15ブランド・500店舗を閉鎖

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原因は過剰出店とブランディング需要の変化か?

 両社のリストラに至った背景には過剰出店があるのは間違いない。少子高齢化の進展で日本のアパレル市場は減少しているが、反比例するようにアパレルの店舗は増え続けた。日本ショッピングセンター協会によると、13年末の全国SC数は10年前1.2倍の3134施設に増加した。大型SCを受け皿とした出店競争には、ワールドやTSIなどの老舗だけでなく数多くの新興企業もこぞって参画した。日本のアパレル市場は、年齢やテイストごとに細分化したブランド開発を得意にしており、店舗数だけでなくブランド数もどんどん増えていった。

 しかし実際の市場ではノンエイジ化が進んでおり、これまでのような“微差”を競うブランディングが通用しなくなってきた。過剰出店によって、ただでさえ、1店舗当たりの売上高が下がっていることに加え、昨年4月の消費税増税によるボリューム市場の低迷が追い打ちをかける。さらに、円安や原料高によって製造にかかるコストも急上昇。これまで低収益ながら何とか維持してきたブランドも白旗を上げざるをえなくなった。ワールドもTSIもブランド数を減らし、経営資源の集中的な投資で再建を図る。TSIは過去3年でリストラをする一方、売上高上位10ブランドに選択と集中を行ってきた。12年3月期の上位10ブランドの売上高は608億円で全体に占める割合は41%だった。これが15年2月期には1.6倍の982億円で52%を占めるまでになった。コスト抑制が求められる現在、市場のポートフォリオを埋め尽くすような多ブランド策は非効率さが目立つようになった。 H&Mやインディテックスと一概に比較はできないだろうが、企画生産や商品調達などの部分で共通化したり、スケールメリットを出す流れも生まれそうだ。主にSCで多ブランド策をとってきたアダストリアホールディングスは、総投資の半分を「グローバル ワーク(GROBAL WORK)」と「ニコアンド(NIKO AND...)」に充て、人材や資金を集中させることを決めている。

 ワールドは店舗を減らす一方でEC事業に注力する。「“WWW.300(ワールドワイドウェッブ300)”を合言葉に、現状の2倍の300億円の売上高目標を立てる。全ブランドを集約した現在のオンラインストアの回遊性を高めるだけでなく、各ブランドの公式サイトを入口にしたEC事業を強化する。EC主導のブランド立ち上げも視野に入れている」と上山社長。ただEC化率を上げれば、コストが抑制され、収益力アップにつながるが、リアル店舗のショールミング化が進み、店頭の活気やスタッフのモチベーションが下がるというデメリットもある。真のオムニチャネル化により、店頭とECの双方向性を高めることが求められる。

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