ファッション

サイズ表記の呪縛は恐ろしい エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年7月30日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

サイズ表記の呪縛は恐ろしい

 夏にサンダルを履くと思い出すことがあります。元上司の故・織田晃さん(当時は「WWDジャパン」編集委員)と狭いエレベーターで乗り合わせた時のこと、サンダル履きの私の足の指を見て一言「かわいそうに」とつぶやきました。エレベーターの中って、なんとなく気まずくて上とか下とか見がちじゃないですか。そんな感じで、下を見て目に入ったからふと口にした……程度の会話でしたが衝撃でした。「え、私の足の指ってかわいそうなの?」と。

 「かわいそう」な理由は、足の指がゴツゴツしていたからです。私の靴のサイズは25㎝ですが、学生時代から30歳位までは24.5㎝だとかたくなに思い込んでいました。常時無理に足を詰め込んでいるから常時足が痛く、指の関節は自己防衛でどんどん硬く頑丈になっていき、冒頭のエレベーター内の会話に至ったというわけです。靴を履くには、脚の指は我慢するのも仕方なし、多少荒れても仕方なし……がマイ常識だったので「え?」となりました。

 ならば最初から25㎝を履けばいいじゃない!という話ですが、足が大きい=背が高いことに強烈なコンプレックスがあった10代の思い込みパワーは凄まじく、「25だと幅が広すぎるのよね」などと、ほぼ自己暗示にかかり続けたというのは嘘みたいな本当の話です。

 何が言いたいかというと、「サイズ表記という、数字や記号から生まれる固定観念は恐ろしい」ということです。当時の私も、「25がイヤなのではなく、25などという規定外に大きい自分がイヤ」だったのです。もし売り場に25㎝の靴が常備されていたら、10代の超繊細なワタクシも安心して25を買っていたでしょう。そして足の指はきれいなままだったでしょう。靴も服もサイズとは切っても切れない関係ですが、SやMやL、75Aや80Dなどは便宜的に使う記号でしかないのに、時に人としての価値まで決められているような感覚に陥らせるパワーさえあるのも事実です。

 前置きが長くなりましたが、こんな経験からもワコール(WACOAL)の新接客サービス“3D スマート アンド トライ(WACOAL 3D SMART & TRY)”はすごい画期的!と思いました。だって一般的なサイズ表記ではなく、自分だけのデータで自分のサイズを把握することができるのですから。ブラジャーのサイズはそれこそ「悩み」に直結しがちな数字ですから、そこから解放されるのは、単に体に合うブラジャーを手に入れる以上の喜びに違いありません。同じ理由から“ゾゾマット(ZOZOMAT)”にも期待しています。

 この先、自分のサイズのデータを常時スマホで持ち歩き、店頭の服にピッとかざせば、自分の体形ではどのように着ることができるのか瞬時にわかる、というサービスも誕生しそうです。誰かが規定した「標準」ではなく、自分にとっての「標準」をもとにした買い物ができるのは、多くの人をコンプレックスから解放するのではないでしょうか。で、もちろんそこには大きなビジネスチャンスもありそうです。

 ちなみに、今の私の足の指はそれほどゴツゴツしていません。なぜなら、海外で靴を買うようになってサイズの呪縛から解放されたから。38だろうが、38.5だろうが、39だろうが、それは数字に過ぎない……今はそう思えます。

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