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ゾゾマット開発担当役員が語る「PB失敗から学んだこと」

 「PB事業失敗の最大の原因は“服とブランドを作る”、この2つを甘く見ていたこと」——ファッション通販サイト「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOは24日、足のサイズを3D計測できる“ゾゾマット(ZOZOMAT)”を発表した。紙と専用アプリさえあれば、足の形状を3Dで簡単に手軽に計測できる技術で、今秋にもリリース予定だ。このゾゾマットに加え、身体計測のための“ゾゾスーツ”、プライベートブランド(PB)「ZOZO」事業を統括する伊藤正裕取締役が、PBの失敗とファッションブランドとの協業による多サイズ展開に行き着いた経緯、さらにはマスカスタマイズの未来までを率直に語った。

■ZOZOが足のサイズを計測する新技術 その利便性や精度、狙いとは?

WWDジャパン(以下、WWD):ゾゾマット開発の経緯は?

伊藤正裕取締役(以下伊藤):開発自体は、身体計測のための“ゾゾスーツ”と同時並行で進めてきました。ネット通販で服やシューズを買うときの最大のネックは試着できないこと。出発点はゾゾスーツもゾゾマットもそこにありました。特にシューズは、試着の重要性がアパレル以上に高い。なぜならサイズが合っていなければ着用自体が難しいからです。私も経験がありますが、同じブランドの同じサイズのシューズを買ったのにサイズが合わないこともある。私の場合は痛くて家から駐車場まで歩くこともできなかった。一方、当社の調査では大半の人が自分の足のサイズを把握していない。中には思っているサイズが、実寸と2センチもずれている人もいます。

WWD:シューズのサイズはブランドによってもマチマチといわれていますが、実は消費者も自分の足のサイズを把握していない、と。

伊藤:ゾゾマットを使えば、いつでもどこでも非常に手軽に自分の足のサイズを、数百万円の3Dスキャン機器を使うのと同じくらいの精度で計測できるようになる。一部では手軽に足の幅や長さを測れるサービスもありますが、ピッタリのシューズ選びのために本来は3Dスキャンレベルの精緻なデータが必要なのです。これは初公開になりますが、「ゾゾタウン」内での19年3月期のシューズの販売額は約360億円。3000億円を超える全体の10〜11%に過ぎません。このゾゾマットをきっかけに、シューズのネット販売を本気で引き上げたいと思っています。

WWD:なぜこのタイミングで発表を?

伊藤:実はマットを使って足のサイズを計測する技術自体は1年以上前に開発ずみでした。ただ昨年はPB「ゾゾ」と“ゾゾスーツ”にかかりきりになってそれどころではなく…。このタイミングになったのは、ゾゾスーツで得た計測データをテナントであるブランドに開放し、従来にはないサイズを(テナントである)ブランドと共同で販売するMSP(マルチサイズプラットフォーム)事業に、非常に大きな手応えを感じていることが大きいです。

WWD:というと?

伊藤:決算会見で前澤(友作社長)も話しましたが、ゾゾスーツとPB「ゾゾ」では本当に多くのことを学ばせていただきました。「ゾゾ」も“ゾゾスーツ”も、失敗の最大の理由は“服作りとブランド作り”をわれわれが甘く見ていたからです。僕らはITのプロではありますが、服を作り、ブランドを作ることは、考えていたよりはるかに難しかった。本来そちらはプロに任せるべきだったのです。当社が発表した共感・共創・共有という“三共宣言”は、そういった反省から生まれました。一方で僕らの得た100万人を超える詳細な身体データは、史上空前の規模であり、壮大な社会実験といってもいい。この膨大なデータのおかげで、実際にゾゾスーツで計測していない人でも8〜9割の人が身長と体重を入れるだけで自分にピッタリの一着に出会える、そういった画期的なデータです。MSPはこうしたデータを開放し、リアルに需要のカーブの多い20サイズほどを提供することで膨大な機会損失を防ぐことができる。ブランド側にとっても単に「ゾゾタウン」で販売する服だけでなく、データを参照して実はそれほど需要のなかったサイズの服の生産量を抑えられる。MSPの本格展開は秋なので実際に効果が数字になって見えてくるのはこれからですが、かなり期待しています。

WWD:シューズブランドにも同様の効果がある、と?

伊藤:そうです。ゾゾマットで計測する着用者のデータが凸面だとすれば、お客さまにぴったりのシューズをリコメンドするためには、凹面であるシューズの内寸を立体的に測った上でマッチングする必要がある。こちらは完全社外秘でやっているので方法は明かせないですが、シューズを当社に納入いただいて発送するまでの工程で計測する技術になります。この内寸の計測技術もゾゾマットをリリースする秋と同タイミングで完成できるよう進めていますが、シューズメーカーの協力を得られれば、消費者にもっといいショッピング体験をご提供できる可能性があります。水面下で一部のシューズメーカーには接触していますが、非常にポジティブなリアクションをいただいています。

WWD:とはいえ、この技術があれば、かつて服のPBで掲げた“マスカスタマイズ”も可能なのでは?

伊藤:繰り返しにはなりますが、われわれが自らこの技術を使ってPBを作ることは絶対にないし、そのつもりもありません。先程も述べたとおり、われわれはITのプロであって、モノづくりのプロではない。それは服で痛いほど経験しました。ただ、(ナイキやアディダスといったメガブランドの)シューズ生産技術は非常に発達しています。現時点だとカスタマイズシューズの生産は1カ月半ほどですが、それが2週間になれば、また違った形になるはずです。ゾゾマットが、その実現にどう寄与できるのかーーそれは私からは何も言えることはありません。ここからは私見になりますが、シューズに関してマスカスタマイズを実現するための技術的なハードルは現時点でかなり低いと思います。ただ実現するとなると話は別で、(ナイキやアディダスのような)グローバルブランドになれば、世界の各地域にシューズを供給するための工場設立などのインフラの整備が必要になるからです。それでも早ければ数年内には実現するかもしれません。