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“セクシーで疲れない”ハイヒール 星あやが提案する「イエロ」

 モデルの星あやによる「イエロ(YELLO)」は、スニーカーブームの中でもハイヒールを売れ筋にするシューズのD2Cブランドだ。2万〜3万円の価格帯で、“日本にないデザイン性”と“日本が得意とする履き心地”を掛け合わせたハイヒールが好評。愛用者には、浜崎あゆみや夏木マリ、韓国の人気アイドルBLACKPINKなど、アーティストや女優などが幅広く名を連ねる。カタログやビジュアルでは、個性、人種、性別の異なるモデルを起用して、“みんな違ってみんな美しい”という多様性を反映しているのもブランドの魅力になっている。

「イエロ」は2017年6月にECで販売を開始。スタイリストからの好評やインスタグラムでの注目を受け、全国の百貨店にポップアップストアも多数出店してきた。10月18日には初の実店舗となるフィッティングサロンを渋谷・神宮前にオープンする。ディレクションから経営までを担う星あやに、立ち上げた理由やブランドを通して伝えたいストーリーを語ってもらった。

WWD:ブランドをスタートさせた理由を教えてください。

星あや:17歳の高校生の頃から雑誌「ブレンダ(BLENDA)」でモデルの仕事をしてきたのですが、月刊誌の仕事を終えてからは旅行好きが高じて海外放浪をするようになりました。ジプシーの感覚で、好きなように世界を遊び歩いていました。アメリカのマイアミやヨーロッパなど、なるべく日本人の少ないところで新しい友達を作ろうと⻑期滞在用のマンションを借りて、地元の人や、近くの店の人たちとも仲良くなっていきました。ラテン系の文化が根付くマイアミは、アメリカの都市の中で最南端にありアメリカの南米と呼ばれているんです。皆が日中のビーチからナイトアウトまでゴージャスに、キメキメのファッションを楽しんでいるところ。女性がセクシーなアウトフィットで、ジュエリーも沢山つけて、ハイヒールを履いて、ウィッグをつけて葉巻をくわえて踊っている。男性もムキムキしていて、ギラギラした目で女性たちを見つめているんです。そういう欲望強めで、自分の性を楽しんでいる姿に衝撃を覚えたんです。

WWD:ブランドの出発点は海外で見たパワフルなファッションだったんですね。

星あや:海外の情熱的な女性たちを見て、「日本で彼女たちのスタイルを表現できるようなことを何かやりたい」と思いました。もともと、私自身の私服はシンプルなものが多く、服よりもシューズやコスメにこだわりがありました。しかし、日本では欲しいものが見つからなくて、海外で購入することが多かったんです。特にハイブランドではハイヒールはそろっているんですが、それ以外の価格帯のブランドだといいものが見つからない。だから、私が本当に欲しいハイヒールを作ろうと思ったんです。

WWD:ハイヒールへのこだわりは?

星あや:日本にないデザインと、日本で企画された低反発インソールの履き心地を合わせることです。日本には“かわいい靴”はあったけれど、“美人な靴”がなかったんです。ハイブランドでは“美人な靴”はありますが、値段も高いし、履くと痛いんです。車文化ではない日本では、やっぱり履き心地は重要です。デザインは海外のトレンドをとにかく意識し、日本の流行は無視してます。ヒールの角度は⻩金比のシルエットにたどり着きました。そこに日本特有の低反発のインソールをドッキングさせれば唯一無二になれるのではないかと考えました。

作りたかったのは“ストリートでがんがん履ける痛くないハイヒール”

WWD:スニーカーブームの中、ハイヒールにあえて挑戦した。

星あや:最初周りの大人たちの反応は冷ややかで、「売れるはずがない」とも言われました(笑)。「セクシーなスタイルは日本文化には絶対合わない」ということも。でも果たしてそうかな?と思っていました。欲しかったけど今までなかった、ドレスに合わせるオケージョン用ではなくって、普段からストリートでがんがん履ける痛くないハイヒールを作りたかったんです。

WWD:シューズのデザインはどのように行なっている?

星あや:私は実家がゲームセンターで、漫画やゲームはずっと好きです。ファッションに興味がなかったら多分オタクになっていたタイプでした(笑)。だから漫画からインスピレーションを受けているものも多いです。また、“ファウンデーションパンプス”では、日本にも近年いろんな国籍の子がいっぱいいるのでヌードカラーを1色にするのはおかしいと思って、4つの異なるスキンカラーを表現して、「これら全てがヌードカラーだよ」っていうのを世の中に見せるべく作りました。名前もただベージュではなく、ネイキッド、サンキスト、ブラウンシュガー、チャイなどキュートなネーミングにしていて、「イエロ」の全てのシューズに愛のある名前を付けています。

WWD:リリース後の反応は?

星あや:最初の展示会でたくさんの人にいい反響をいただけました。噂を聞き付けたスタイリストさんたちが「こういうのが欲しかった」って言ってくださり、私が欲しかったものってみんな欲しかったんだっていう答え合わせができました。現在、購入者のお客さまの平均年齢は32歳。幅広い年齢層の方に愛用いただいているんです。XLサイズとして26.0cmまで用意があるので、ニューハーフの方たちにも気に入って履いていただいています。多様性のあるブランドにすることは立ち上げる時から自分の中で自然と決まっていました。

WWD:多様性の表現はどのように行なっている?

星あや:デビューシーズンのビジュアルでは、“みんな違ってみんないい”という私が思う美の多様性を見せました。これが「イエロ」が発信したい一番の思いだからです。体形も肌の色も、目の形も異なる子たちが「イエロ」のブーツを履いて、みんながゴージャスであることを強調したかった。プラスサイズの子、アフリカ系アメリカ人とロシアと日本のミックスの子、一重のアジアンビューティーな子、みんな違ってみんな美しい。しかも、合わせたT シャツは、あえて4枚1200円のパックTシャツで、それぞれ個性の異なる美しい女の子たちが「イエロ」の靴を履けば300円ぐらいのTシャツさえもゴージャスに見せることができるということを実証したかったんです。

異なる美しさを肯定することが人生をかけたミッション

WWD:ポップアップストアで採用するスタッフも印象的だ。

星あや:店舗のスタッフのことを“イエロ ドールズ(YELLO DOLLS)”と呼んでいます。2週間のポップアップのために募集をかけると、90人ほどエントリーが来ることがあります。体形も国籍にもとらわれないように採用をしています、自分のコンプレックスを克服して、それをポジティブな気持ちで味方につけた子に美しさや、パワーを感じます。心と体が健康的な彼女たちを「イエロ」の店内での代表として選ぶことにより、共感を得ています。スタッフにはレズビアンの子、ゲイの子、ニューハーフの子もいます。

WWD:“イエロ ドールズ”のスタイルにはこだわりがある。

星あや:自分のアイカラーと自分の髪の毛の色を大事にしてる子こそ、パパとママのDNAと神さまがつくってくれた色を生かしていると思います。なので、基本的にカラーコンタクトはNGで、髪の毛も染めないでほしいと思っています。その代わり、メーキャップはゴージャスにっていうのがポイント。眉毛をぼかしたりせずにきりっと描いて。お客さまにハッキリ接客をし明確に意思を伝えられる顔であってほしい。健康的でセクシーで、意志の強い顔を、モデルもうちのスタッフも作るようにしてもらっています。

WWD:スタッフの人間性や多様性もブランドの表現の一つ。

星あや:私は靴を売るだけではなく、商品、スタッフ、モデルを通して、メッセージを提示したいと思っています。女の子は子どものときに容姿について言われたことをずっと覚えています。例えば、目が細いとか、肌が黒いとか、デブとか、言われたことが根深くずっとトラウマになっていると思うんです。子どもたちっていろんなことを悪気なく言うんですけど、何十年経っても覚えてることがたくさんあって。そういったネガティブな言葉を「『イエロ』を履いて、それもいいじゃない。人はそれぞれの美を持って生まれてきたのだから」と言いたいんです。このブランドで異なる美しさを肯定したいって思っているんです。もちろん、怠けて見た目が悪いのはよくないことだと思うんですが、自分自身の生まれ持ったもので、何か人に虐げられるのはすごく寂しいことですよね。それを肯定するのが私のこのブランドをやりながらの、人生を懸けたミッションだと思っているんです。

一人一人のお客さまにブランドの魅力と感謝を伝えたい

WWD:星さんも店頭で接客をすることがある?

星あや:私は日によって立っていることもあります。でも、デザイナー来店イベントや握手会などは「イエロ」がやるべきことではないと思っています。私はディレクターであり、デザイナーで経営者でもある。できるならば受け身ではなく、一人一人のお客さまにご挨拶をして、シューズの魅力を伝えたいという気持ちが強いんです。お客さまが望まれたら写真も撮りますが、何より「ありがとうございます」ということを伝えたい。“イエロ ドールズ”たちにも背中を見せるような感じで、私もしっかりとお客さまに向き合って接客をします。

WWD:会社はアパレル企業と組むのではなく、自分で会社を立ち上げている?

星あや:「イエロ」を始めるために10代からの友人と2人で会社をスタートさせました。私はモノ作りで、友人は経営を担当しています。ずっとファッション業界にいる人だったので理解もありながら、役割がしっかり違う2人で運営しています。

WWD:ECを中心にしたビジネスにしていますね。

星あや:パッケージにもこだわっているんです。クリアのボックスに入れて、箱に入っているだけでアートのように見えるようにしました。発送時には季節のお手紙とともに梱包しています。その手紙は私が日本語と英語で全部書いていて、書いている時間はすごく幸せなんです。私があったらいいなと思っていたことを「イエロ」で実現しています。世界中のお客さまからの声もいただいているので、今後は海外発送にも対応したいと考えています。

WWD:実店舗を開く予定は?

星あや:フィッティングサロンを表参道に開きます。実際に「イエロ」のシューズを試せて、世界観を感じていただけるスペースになる予定です。

■YELLO FITTING SALON
オープン日:10月18日
営業時間:12:00〜20:00
住所:東京都渋谷区神宮前6-8-5 AIビル2階