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「若返る」とはうたえない日本の広告表現を考える ITのプロ「WWDビューティ」最新号につぶやく

 大手通信会社に入社後、国内外でITソリューションを提供するビジネスマンが、今週のビューティ週刊紙「WWDビューティ」で気になったニュースを要約してお届け。最先端のテクノロジーから企業と、その利用者が必要とするものについて考え続けたITのプロ、CKRが未来的視点からニュースにつぶやきを添えます。

今日のニュース:P.5「特許技術、ヒト由来皮膚幹細胞を高配合した美容液が発売」

読み解きポイント:科学で攻めるか、ポエムで攻めるか。表現規制がある日本での化粧品マーケティング。

ニュースのポイント

 プロフェッショナルヘアメーカーMB Labは、米国の幹細胞研究開発会社AIVITA Biomedicalが開発したヒト由来皮膚幹細胞コスメ「ルートオブスキン(ROOT OF SKIN)MD」を発売。独自のヒト幹細胞培養液を活用して、肌になる前のエキスを取り出し、美容液に配合。シワ、ハリの減少、シミなどに働きかける。AIVITA Biomedical社のCEOであり開発者のハンス・キルテッド医学博士(Hans S. Keirstead, Ph.D.)は、再生医療に従事してきた幹細胞の権威。ルートオブスキンブランドの収益の100%は、がん治療の基金に寄付される。

CKRはこう読む!

 「56」。薬事法、薬機法が定める、化粧品の効能について、広告表現が可能な項目数です。「皮膚にうるおいを与える」「肌にハリを与える」は、表現として認められています。今から8年前、「乾燥による小ジワを目立たなくする」という表現追加を最後に項目は増えていません。

 AIVITA Biomedical社のホームページにあるニュースリリースを見ると「rejuvenating skincare products(若返りスキンケア製品)」としっかり記されていますが、日本で「若返り」と広告表現するのはNGです(「見た目年齢マイナス5歳肌へ(見た目の話で若返り効果を示すものではありません)」はOKです)。

 政府が表現規制を強めた日本で、化粧品はどのような広告宣伝がされているのでしょうか?

 一つは、情緒的・抽象的な表現で、商品の魅力を伝えることが多くなりました。

 「年齢を重ねても、上質で魅力的に輝きたい!」「ふっくらピーン!」。「たしかにそうだよね」と肯定したくなる表現です。その結果、消費者は前向きな想像を膨らませるようになりました。「日本初」「最高級」という合理的根拠のない表現はできない不動産業界の広告が、ポエム化した(「悠久の高台で」や「高みを目指す」などが代表例です)世界にも近いでしょう。皮肉にも、表現規制の強かった業界ほど、細かい機能や効果による開発競争ではなく、デザインやストーリーによる製品価値の差別化が進む可能性は高いんです。

 もう一つは、科学的な世界観から、商品の魅力を伝えることも増えています。「再生医療に端を発する皮膚幹細胞美容液」と言われると、あえて「若返り」と表現しなくても、その効果を間接的に伝えることができます。幹細胞培養液配合の美容液は、「不活性な細胞を改善し、肌を再生する」という魅力ある特性をもっています。従来の「アロエなどの天然成分で水分、油分を補う」「コラーゲン、ヒアルロン酸などを肌に浸透させる」というスキンケアのアプローチとは違います。魅力的な特性をもつ幹細胞培養液配合の美容液は、広告表現の観点からも今後、目にすることが多くなるかもしれませんね。

CKR Kondo : 大手通信会社に入社後、暗号技術/ICカードを活用した認証決済システムの開発に従事。その後、欧州/中東外資系企業向けITソリューションの提供、シンガポール外資系企業での事業開発を経験。企業とその先の利用者が必要とするもの、快適になるものを見極める経験を積み、ウェアラブルデバイスやFree WiFiを活用したサービスインキュベーションを推進。現在は、米国、欧州、アジア太平洋地域にまたがる、新たなサイバーセキュリティサービスの開発を推進中