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「ルイ・ヴィトン」の親会社が環境保護のイベント開催 「われわれこそいち早く取り組んできた」

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「ディオール(DIOR)」を擁するLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は9月25日、環境保護に関するイベント「フューチャーライフ(Future LIFE)」をパリで開催した。ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMH会長兼最高経営責任者(CEO)などと共に、同社のサステイナビリティーに関する取り組みの“顔”としてステラ・マッカートニー(Stella McCartney)が初めて登壇した。

 ステラが率いる「ステラ マッカートニー」は、「グッチ(GUCCI)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」などを擁するケリング(KERING)の傘下だったが、2018年3月にケリングが保有する50%の株式を買い戻す形で友好的に独立。19年7月にケリングのライバルであるLVMHと提携した。その際、ステラがアルノーLVMH会長兼CEOや取締役会メンバーへのサステイナビリティーに関する特別アドバイザーの役割も担うことが併せて発表されていた。なお、LVMHは12年から「LVMHによる環境のためのイニシアチブ(LVMH Initiatives for the Environment(LIFE))」プログラムを導入しており、今回のイベントもその一環となる。

 アルノーLVMH会長兼CEOは、「当社は27年前にフランスの大企業として初めてサステイナビリティー関連部門を設立し、その実現に尽力してきた。今日、環境保護は任意の選択肢ではなく必須事項だ。ラグジュアリー業界をけん引する企業として、環境問題でもさらにリーダーシップを発揮していきたい」と語った。

 ステラは、「サステイナビリティーの実現は簡単ではないし、簡単だと言うつもりもない。しかし、私は環境に配慮することを“制約”だとは感じておらず、むしろ大きなインスピレーション源だと思っている。今や世界中の人々が気候変動について話していて、日々の暮らしの中で工夫し始めているのだから、彼らの職場である企業でもそうした取り組みをするのは自然なことだ」と話した。

 本イベントで、LVMHは25年までに動物由来の全ての原材料を最も先進的な動物福祉基準に準拠して取り扱い、サプライチェーンにおける完全な追跡可能性を実現すること、そして動物由来の原材料の生産過程での環境負荷を軽減することを表明した。また、13年から18年の間に売上高が290億ユーロ(約3兆4220億円)から470億ユーロ(約5兆5460億円)へと大幅に成長したにもかかわらず、二酸化炭素排出量は16%減となっており、同社が掲げている20年の数値目標も達成できる見込みだと発表した。

 今回のイベントにはLVMHが擁する主なブランドも参加しており、環境保護に関するそれぞれの取り組みについて説明した。マイケル・バーク(Michael Burke)=ルイ・ヴィトン会長兼CEOは、「アメリカアリゲーターの再繁殖プロジェクトに貢献できたことを大変誇りに思っている」と話した。ローラン・ボワロ(Laurent Boillot)=ゲラン(GUERLAIN)社長兼CEOは、「ハチの保護に尽力している。ハチがいなければ、花は育たない。花がなければ、ゲランも立ち行かない」と述べた。マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)「ディオール」アーティスティック・ディレクターは、イベントの前日に開催された同ブランドの20年春夏パリ・コレクションで、園地栽培に取り組むアーティスト集団アトリエ コロコ(COLOCO)と協業し、ショーの会場に164本の木々を配して森を表現したことについて語った。ショーの終了後、木々は移設されてパリの街造りに生かされるという。

 LVMHと熾烈なライバル争いを繰り広げているケリングも、サステイナビリティーの実現に関する先駆的な取り組みで知られている。同社は本イベントの前日に、グループ全体およびそのサプライチェーンにおいて温室効果ガスの排出を完全に相殺することを発表した。

 ケリングはまた、ファッション業界が環境に与える負荷を削減するためのコミットメント、「ファッション協定(Fashion Pact)」を主導している。これは今年4月にフランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEOがエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)仏大統領からの依頼を受けて設けられたものだ。現時点では、「シャネル(CHANEL)」「エルメス(HERMES)」「プラダ(PRADA)」「バーバリー(BURBERRY)」などの欧州ラグジュアリーブランドに加えて、「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」を擁するPVHコープ(PVH CORP)、ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)、ギャップ(GAP)などの米系企業、「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」などのスポーツブランド、そして「H&M」を展開するH&Mヘネス・アンド・マウリッツグループ(H&M GROUP)や、「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)などを含めた32社が署名している。なお、LVMHはこれに参加していないものの、「ステラ マッカートニー」は署名している。

 アントワン・アルノー(Antoine Arnault)LVMHヘッド・オブ・コミュニケーション&イメージは、「『ナイキ』『ザラ』『ギャップ』『H&M』などに対して何の反感も持っていないが、彼らとは共通項もない。当社はワイン生産やホテル業などにも進出して幅広く事業を展開しているので、彼らと同じ協定にまとめて入れられることに意味を見いだせないし、良心の呵責を弱めるためだけに署名をしようとも思わない。当社は、署名よりも行動することを好む」と語った。

 ステラは、サステイナビリティーに関する意識が高い消費者が増加する中で企業のエグゼクティブはどのように対応するべきかについて、「子どもたちの声に耳を傾けてほしい。私たちは数字を追いかけ、『次はこの世代を対象として事業を展開しよう』などと考える業界にいるが、彼らを商売の対象にするのではなく、その声に耳を傾けて世界で何が起きているのかに目を向けることが重要だ。現在、世界で起きているこの潮流に乗り遅れたくないのであれば、変化を起こすことを恐れずに行動してほしい」と提言した。