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ステラ・マッカートニーが本音で語る 究極のサステナ世界と今日からできること

 “アディダス バイ ステラ マッカートニー(ADIDAS BY STELLA McCARTNEY)”は7月5日、2019-20年秋冬の新作を英国ロンドンのウィンブルドン近郊で発表した。そこには新作だけではなく、アパレル廃棄問題への解決策を示す試作品が展示されていた。ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)とアディダス(ADIDAS)はサステイナビリティー追求に積極的でその技術開発に力を入れていることでも知られるが、今回展示されたのは、人工クモの糸で知られる日本のスパイバーのライバルである、米国ボルトスレッズ(Bolt Threads)社の合成タンパク質“マイクロシルク(MICRO SILK)”を用いたテニスドレス、再生セルロースとオーガニックコットンで構成した100%リサイクル可能な“循環するフーディー”だ。いずれもサステイナビリティー追求においては最先端の技術を用いたもので、新たなサプライチェーンの構築が必要な挑戦的なアイテムでもある。

 サステイナビリティーとファッション性の追求において現在、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)の右に出る者はいない。01年のブランド設立当初から毛皮やレザーを用いず、例えばラグジュアリーブランドの肝であるハンドバッグは人工皮革で提案した。アイコンバッグの“ファラベラ”は大ヒットし、新たなラグジュアリーバッグとして浸透した。また、毛皮の代替品として人工ファーの“ファー・フリー・ファー”、接着剤を用いずに作った100%リサイクル可能なスニーカー“ループ”など、これまでになかった新たなオプションを提示している。そんな彼女が今注目する技術とは?ステラにとっての究極のサステイナブルな世界とは?発表会会場で独占インタビューを行った。

「従来の古いやり方を新しく変えていくことが必要よ」

WWD:今回の新作や試作品で用いた技術のどこを重視している?

ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):全ての技術を同じように重視しているわ。それぞれが異なる技術で、進んでいるものがあればそうでもないのもあるけれど。例えば、今回発表したフーディーは世界で初めての循環する服。(コラボした米企業の)エヴァニュー(EVRNU)とは13年から取り組んでいて、とてもエキサイティングな会社。もしファッション業界の無駄をなくせるのならば、地球を救えるだけじゃなくて、年間5000億ポンド(約67兆5000億円)規模の新しいビジネスが生まれる機会があるといわれている。それってすごいことよね。従来の古いやり方を新しく変えていくことが必要よ。

(人工クモの糸と呼ばれる合成タンパク質繊維の)ボルトスレッズもお気に入りの企業で、アメリカの研究所を何度も訪ねている。動物を殺さずにDNAを設計してラボで服を育てるような技術で、本当に素晴らしいと思う。ジェームズ・ボンドの映画に出てきそうよね。ファッションというよりは化学という点も好き。

ほかには(6月24日に発売されたテニスコレクションでも使用した)“ドープダイ・テクノロジー”。糸にする前のペレットの段階で染色することで節水できるの。(海洋環境保護団体の)パーレー・フォー・ジ・オーシャンズ(Parlay For The Oceans)と組んで、海に流入する前のプラスチック廃棄物を海岸や海沿いの地域で回収し、それをアップサイクルして生まれた糸を使った商品も気に入っているわ。50年には海洋生物よりもプラスチックが多くなるといわれているから、今重視しなければいけないのは海。実は、海は熱帯雨林より酸素を放出しているといわれていて、地球上の酸素の多くは海藻や海洋生物から生み出されているのよ。だからこそ何とかしなければいけない。

WWD:あなたが考える究極のサステイナブルな世界とは?

ステラ:第一に動物を殺さず、飼育せずにすみ、彼らを尊重できる世界。必要なら食べるけど、実はそんな必要はないのよ。食用の肉もラボで作られる時代も来るしね。感情的にもモラル的にもサステイナブルな視点でも、それが理想的。私たちの周りにいるすべての生き物、植物、もちろん人間も含めて調和して生きていけることに気付ければ素晴らしいと思う。なんだか私、ヒッピーみたいね。

というか、日本が再開した捕鯨をやめさせなきゃ!日本人はどう思っているの?まだそんなことをやっていると聞いて悲しい。その文化や慣習が古いことだと気付けたら、新しい方向に進めると気付けたら、動物に害を与えなくてすむと気付けたら、よりよいところにたどり着けるわ。環境はもちろん、心にもいい影響を及ぼしていいハーモニーが生まれる。クジラを殺すなんて本当に心が痛むし、気が滅入るわ。

私たちは歴史からまだ学んでいないのかもしれない。私たちは今、ヘンリー8世が何人もの妻の首を切って死刑にしたような、人間を残酷な方法で殺すことは間違いだと認識している。300~500年前の話よ。それが間違っていたと気付き、考え方が進歩するには時間がかかる。動物を殺す必要がないと気付ければ、動物だけでなく私たちにも有益だと思う。

食肉処理場を見る機会がないままに、どこかで何億頭もの動物を殺している事実を私たちは理解していないのよ。ファッション、ハンドバッグ、食のためにどれだけの動物が殺されているのか――私はこれが戦闘機や兵器なんかと同じ、とてつもなく大きな力を持つ闇産業だと思っているわ。ヒッピーの言葉のように聞こえるかもしれないけど、これは科学の話。(家畜の多くは抗菌物質や添加物、農薬、ホルモン剤などを与えられているため、生殖機能を乱すといわれているので、肉を食べるのをやめれば)私たちのホルモンやフェロモンはさらに機能を発揮するはずだから、私たちにとってもいいことだと思うわ。

「パーフェクトを目指さなくてもいい。みんなで少しずつ力を合わせたら大きな変化をもたらすことができる」

WWD:サステイナブルな世界を実現するために今日から私たちができるアクションは?

ステラ:10年前に父や姉と始めた(月曜は肉を食べるのをよそうという活動)“ミート・フリー・マンデー(Meat-free Mondays)”はとてもよいと思うわ。あと、服は全て「ステラ」か“アディダス バイ ステラ”を買って、それから靴はビーガン“スタンスミス”。(接着剤も)“ヴィ―ガンノリ”を使っているからこの“スタンスミス”は完全にビーガンよ。ていうか、靴に使用されている接着剤は動物や魚の骨を煮詰めて作られているのよ、知ってた?気持ち悪い!みんなの靴に用いられているのよ。

普通のスーパーマーケットに行くと、まずグルテンフリー、ビーガン、オーガニックのエリアを見つけなきゃいけない。これって結構努力が必要よ。プラネット・オーガニック(Planet Organic)やホールフーズ(Wholefoods)に行けば安心して買い物ができるように、「ステラ マッカートニー」に行けば全てが動物虐待フリーでサステイナブルないい商品が買える。友達が言ってくれたことがあるの。「ステラのいいところは信頼できるところで、リサーチの大半をしてくれるところ」だってね。

みんなが1週間のうち1日だけ肉を食べないだけで、大きなインパクトよ。パーフェクトを目指さなくてもいい。環境への効果は1週間の移動をやめるのと同じくらい大きな影響を与えられる。みんなで少しずつ力を合わせたら大きな変化をもたらすことができる。

私は自分がビーガンであるべきと思うけれど、実際にはビーガンじゃないから罪悪感がある。インタビューで認めたくないことだけどね。ビーガンだったらきっともっといい環境保護主義者になれるのに――今は週6日ビーガンで、1日だけチーズを食べるの。

「革を使わないこと、トレーサビリティーを確立すること」

WWD:ファッション企業が今日からできるアクションは?

ステラ:サステイナビリティー追求において最もインパクトが大きい革、そして(前述した)接着剤を使用しないこと。熱帯雨林の伐採を防ぐこと。革なめしなど化学物質を使用しないなどね。すぐにできて簡単なことは、革を使わないこと。もう一つは素材の調達方法を見直し、トレーサビリティーを確立すること。これもインパクトが大きいわよ。私たちの仕事の60%はトレーサビリティーの確立で、これは本当に難しい。スタートポイントとしては革や毛皮を使用しないことかしら。

それから一緒に働いている人と話をすること、パッケージのリサイクル、お店のプラスチック使用を減らす、よりよい素材を使用する、従業員に正しい賃金を支払う、風力で発電されたエネルギーを使用するなどね。

「人を怖がらせるのではなくて解決策を提供すること」

WWD:サステイナビリティーは消費者も巻き込んで成立するものでもあるけれど、どうコミュニケーションしている?

ステラ:デリケートな作業ね。私たちのコミュニケーションはかなり微妙なところがあって、例えば顧客の90%は、買っている服がビーガンだと気付かないことが好ましいの。それが、モダンでアクティビスト的な方法だと思う。みんなが欲しいと思える物をデザインして、それがオーガニックコットンだと気付かなかったという声はよく聞く。どうセクシーに見せるかがポイントね。

(ロンドンの)ボンドストリートや東京の店は、とてもサステイナブルな方法で作られているけれど、それを売り物にはしない。「もっと知りたい」という声も聞くけど、そのバランスをまだ探しているところね。ユーモアを交えて話すことも大切ね。人を怖がらせるのではなくて解決策を提供すること。

ある人はコミュニケーション不足だと言うけれど、私は人にお説教するつもりはないの。パーフェクトな人なんていないしね。パーフェクトぶっている人はいるけど、そういう人は嫌いだし、私はそうはなりたくない。

「なぜファッション業界は、変らなければいけない事実にそこまで驚くのか」

WWD:今、注目している技術は?

ステラ:どれも非常に興味があるけれどバイオテクノロジーね。早く見たいのは、ラボで作った肉や革。時間がかかっているみたいね。動物を傷つけないハンバーガーは世界を変えると思うわ。

私は農家と共に土壌の保護にも努めている。重視するのは、土壌の深さとその二酸化炭素ガス濃度など。農業は、私たちがどういう風に農家と関わるかが重要。

海洋プラスチック問題と、循環型の考え方は非常に重要ね。ゴミになったものをどうやってプロダクトに再導入するか――全てにおいて新しいアプローチが必要。面白いことに、私たちの世界自体がスピードはともかく変わってきていて、例えば自動車産業は電気を重視しているけど、それって産業を一から変えなければならないことでしょう?バッテリーが重要になっていて、世界の億万長者は今バッテリーに投資をしている。新しい技術だけど彼らは恐れていない。長い目で見れば利益になると知っているから。建設業界でも、例えば空気の循環システムなどがそう。

なぜファッション業界は、変らなければいけない事実にそこまで驚くのか――私たちがこれまでの200年間で使用した生地はたった10種類。世界で一番オールドファッションな産業よ。ファッションは未来を見ているはずなのに。私は今、1年半先の「アディダス」の仕事をしているけど、今変えないでどうするの?一晩で変われるものなんてないのだから、今行動を起こさなきゃ。もちろん難しいしお金もかかる。私は小さな会社で、一人で業界全体の荷物を背負っている気分だけど、力のある人についてきてもらわないといけないわ。だから、変わらなければいけないことを気付かせ、利益につながる生産性のあるビジネスだということを伝えなければいけないわ。