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「ヴォーグ イタリア」の若手支援プロジェクトが10周年 これまで「MSGM」や「ジェイ ダブリュー アンダーソン」「ジャックムス」などをサポート

 「ヴォーグ イタリア(VOGUE ITALIA)」が主催する若手支援プロジェクト「ヴォーグ タレント(VOGUE TALENT)」が10周年を迎え、ミラノ・ファッション・ウイーク期間中に歴代の選出ブランドのアイテムを集めた展覧会が開かれた。同プロジェクトは2009年9月、今は亡きフランカ・ソッツァーニ(Franca Sozzani)前編集長の下、発足。世界中から新世代の才能を発掘し、エディトリアルやイベントを通して、彼らにスポットライトを当ててきた。

 同プロジェクトを率いるのは、「リサーチへの情熱は『ヴォーグ タレント』のDNAの一つ」と語るサラ・ソッツァーニ・マイノ(Sara Sozzani Maino)=シニアエディターだ。「このプロジェクトがスタートした頃は、若手デザイナーのためのコンテストや支援プラットフォームは少なく、彼らが脚光を浴びる機会もあまりなかった」と彼女は振り返る。現在はチームのメンバーも増え、欧米やアジアに加え、南米、アフリカ、中東のファッション・ウイークにも発掘に出向くようになっているという。「一度行ってみないことには、どんな光る才能がいるかも分からない。だから、現地に足を運ぶことが大切なの」。

 そして、展覧会の会場となったブレラ地区のパラッツォ・クザーニ(Palazzo Cusani)には、これまでに選ばれてきたブランドの中から特に際立った76組のウエアやバッグ、シューズを展示。「世界の新たな才能やクリエイティビティーを称えるもの」という言葉通り、ミラノで発表している「MSGM」や「マルコ デ ヴィンチェンツォ(MARCO DE VINCENZO)」「ジャンニコ(GIANNICO)」「ステラ ジャン(STELLA JEAN)」「ジ アティコ(THE ATTICO)」といったイタリア勢をはじめ、フランスを拠点にする「ジャックムス(JACQUEMUS)」「コーシェ(KOCHE)」「マリーン セル(MARINE SERRE)」「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」、英国の「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」「シモーネ ロシャ(SIMONE ROCHA)」「リチャード クイン(RICHARD QUINN)」、アメリカの「ボーディ(BODE)」、デンマークの「セシリエ バンセン(CECILIE BAHNSEN)」、ジョージアの「シチュエーショニスト(SITUATIONIST)」、南アフリカの「テベ マググ(THEBE MAGUGU)」、アルゼンチンの「ヌー エトゥディオンズ(NOUS ETUDIONS)」まで、国際色豊かでバラエティーに富んだブランドが並ぶ。また日本からは、ニューヨーク・ファッション・ウイークでのインスタレーションも記憶に新しい「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の新作などが展示された。

 同プロジェクトの選出のポイントについて尋ねると、「私たちの目的は、才能あふれる若きデザイナーにスポットライトを当てること。そのためには、ブランドにとって適切なタイミングに選出することが重要。中には、まだ大きな注目を浴びる準備ができていないブランドもあるから」とマイノ=シニアエディター。一度に複数のブランドが選ばれるということもあるが、実際、「ジェイ ダブリュー アンダーソン」や「シモーネ ロシャ」は2011年、先日「LVMHプライズ」でグランプリを受賞した「テベ マググ」も18年といったように、その多くが国際的なコンテストやコラボレーションなどで大きな注目を集める少し前に選ばれており、その目利きは確かだ。若手デザイナーにとっては、これが世界へ踏み出すきっかけになることもある。今年「ロートル ショーズ(L’AUTRE CHOSE)」のクリエイティブ・ディレクターにも抜擢されたシューズブランド「ジャンニコ」を手掛けるニコロ・ベレッタ(Nicolo Beretta)=デザイナーは、「『ヴォーグ タレント』は僕のブランドの成長の過程を常にサポートしてくれて、より多くのファッション業界関係者やセレブリティーの前でコレクションを披露する機会を与えてくれた。今の自分があるのは、このプロジェクトに選ばれたことが大きい」と話す。

 また、この10年の間に新進ブランドへの注目が高まるとともに、ファッションに対する価値観や考え方も大きく変化してきた。その上でマイノ=シニアエディターは、「今後も才能を支援することは変わらない。しかし、これからはレスポンシビリティー(責任)が重要だと考えている。世界には、すでにブランドがあふれている。だからこそ、今ブランドを立ち上げるのであれば、コレクションが社会や地球の環境に対して責任あるものであることは必須。他に選択肢はない」と、この先の10年を見据える。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める