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OTB傘下でグローバルブランドへ パウラ・カデマルトリが語る夢

 2010年に設立された「パウラ カデマルトリ(PAULA CADEMARTORI)」は、ブラジルで生まれ育ったデザイナーの独特な色彩感覚とセンスを生かしたバッグで、一躍セレブリティーやファッション業界人から支持を集める若手ブランドとして注目を集めた。ただ、趣向を凝らしたデザインであるために価格がネックだったのも事実だ。そんなブランドの大きな転機となったのは、16年に「ディーゼル(DIESEL)」や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」などを擁するOTB傘下に入ったこと。これにより、商品バリエーションの拡大と世界展開の基盤が整い、18年3月には公式オンラインストアもオープンした他、現在はヨーロッパを中心に世界約50店舗で取り扱われている。また、初期からカフェを会場にするなどコレクションの見せ方にもこだわってきたが、19年春夏は歴史あるアパートメントの一室を使い、コレクションのテーマにリンクするおとぎ話の世界を表現。その完成度の高さは、グローバルなブランドへの着実なステップアップを感じさせた。クリエイションもビジネスも成熟しつつあるパウラ・カデマルトリ(Paula Cademartori)=デザイナーが今、考えていることとは?

——もともとはバッグブランドとしてスタートした。2015年にシューズをローンチしたが、その理由は?

パウラ・カデマルトリ「パウラ カデマルトリ」デザイナー(以下、カデマルトリ):実は子供のころから常にシューズデザイナーになりたいという気持ちはあった。だから、むしろバッグデザイナーになる前からの夢だったの。2015年のタイミングでシューズコレクションをローンチしたのは、コレクションとビジネス戦略の両方における自然な進化の結果。ちょうど世界規模でビジネスが広がり始めていた時期だったから。バッグのスタイルからインスピレーションを得て、同様の素材や色彩、ディテールを取り入れたシューズは、贅沢さとイタリアの職人技を現代女性の魅惑的でフェミニンなイメージと掛け合わせた提案と言えるわ。

——他と差別化するブランドの強みとは?

カデマルトリ:個人的には「パウラ カデマルトリ」は非常に強いアイデンティティーを持っているブランドだと思う。ニッチなブランドだし、規模が大きすぎないからこそ、徹底して品質にこだわることができている。私は、イタリアの卓越した生産技術によってアイテムに“違い”を生み出すことができると信じているし、今の時代はこれまで以上にそういった高品質で長く使うことができるモノが求められている。真のラグジュアリーというのはディテールや金具、質感と色へのこだわりに宿ると考えていて、常にそれらの要素を融合したユニークなアイテムを作ろうとしている。そして、可能な限り高品質なものを提案することに加えて、シグネチャーのメタルバックルが、私のブランドを間違いなく見分けられる特徴になっている。このバックルは、ブラジルのジュエリー企業で働いていた時に個人的にデザインしたもの。私のルーツと歴史を物語る大切なシンボルなの。

——OTB傘下に入ってから、ブランドとしてどのような変化があったか?

カデマルトリ:うれしいことに今でもクリエイションやスタイルに対する私のビジョンを完全に自由に表現できている。けれど、OTBグループに入ったことで、より多くのリソースや構造的なサポートを得ることができた。それが、世界規模のディストリビューションと認知度の向上につながっている。

——レンツォ・ロッソ(Renzo Rosso)OTB会長とは、どんな人物か?

カデマルトリ:私にとって、レンツォは素晴らしい実業家であるだけでなく、刺激を与えてくれる存在。自身の力で会社を立ち上げた彼のサクセスストーリーは見習うべきだし、そこにインスパイアされている。それに彼の勇敢さや決断力、ビジネスにおける洞察力といった価値観や哲学を理解し分かち合っているから、私たちのパートナーシップは“結婚”のようなものだと考えているわ。

——現在の売上高は?また、バッグとシューズの売上比率は?

カデマルトリ:具体的な数字を公開することはできないけれど、一つ言えるのはビジネスの状態がヘルシーであるということ。売り上げのシェアについては、現在はバッグとシューズが半々くらい。

——ブランドにとって最大の市場は?

カデマルトリ:最大の市場は、今でもイタリアをはじめとするヨーロッパ。ただ現在はアジア市場、特に日本、中国、韓国の開拓に注力している。世界中に発送しているオンラインストアの売り上げを見ると、アジアとアメリカの割合は大きく、今後数年間で存在感をより高めていきたい。

——日本市場と日本の消費者をどのように見ているか?

カデマルトリ:日本は世界で2番目に大きなラグジュアリー市場であり、今なお成長を続けていると思う。より若い世代は、世界の人気ブランドに惹かれるだけでなく、新進ブランドにもオープンな姿勢を持っていて、自分らしいスタイルを表現するためにそれらを自由にミックスしている。そして、日本の消費者は、素材においても芸術性においても品質の高さを理解してくれていて、信頼できて長く愛用できるものを探している。だから、私たちが提案するサヴォアフェールやメード・イン・イタリーの価値を評価してもらえるのでしょう。

——ここ数年でアイテムの価格帯を広げているようだが、価格帯についての考えは?

カデマルトリ:エントリー価格のラインを導入することで、あらゆる顧客にアプローチするとともに、潜在的な顧客を開拓しようと試みている。最近では、新しい価格帯のオンライン限定カプセルコレクションをローンチしたわ。ブランドにとって新たなスタイルであるスニーカーに関しても、競合ブランドと戦える価格帯で打ち出している。「パウラ カデマルトリ」はミレニアル世代やさらに若い世代から高い支持を得ているけれど、必ずしも手が届くわけではなく、まだ憧れのブランドなのかもしれない。より低価格で魅力的な商品を提案することで、そんな若い世代にも実際に使ってもらいたい。

——今後のビジョンは?

カデマルトリ:今後数年間の目標として、最優先は初のブティックをオープンすること。場所は、私にとって全てが始まったミラノにしようと考えている。これからもコアビジネスがアクセサリー(バッグ&シューズ)であることは変わらないけれど、他のアイテムカテゴリーにもブランドを広げていきたい。まだ詳細は明かせないけれど、すでに新しいカテゴリーの準備を進めているし、将来的にはビーチウエアも作ろうと考えているわ。期待していて!

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。