ビジネス

絶好調セレクト店アデライデの2代目が語る 「とにかくお客さまに尽くしなさい」という両親の教え

 服がなかなか売れない時代の中でも、東京・南青山のセレクトショップ、アデライデ(ADELAIDE)と姉妹店のアディッション アデライデ(ADDITION ADELAIDE)は好調が続いている。同店の尖った雰囲気や顧客をじっくり育てる姿勢に共感し、たとえ直営店がすぐ近くにあっても「商品を置いてほしい」と同店にラブコールを送る有力ブランドは少なくない。同店でマネジング・ディレクター兼バイヤーを務めているのが、創業者の長谷川順啓・眞美子夫妻の娘である長谷川左希子だ。近年、後継者難から事業を畳むファッション関連企業や店は後を絶たないが、アデライデはそんな問題とは無縁。長谷川ディレクターに、両親から学んだことや自身が目指す姿を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):まずは2018年を振り返ると?

長谷川左希子マネジング・ディレクター(以下、長谷川):16年はアデライデのオープン25周年、17年はアディッション アデライデの15周年でした。そうしたイベントを通してスタッフが一致団結し、皆が同じビジョンで物事を見ることができるようになっています。18年はそんな手応えを深めた年でした。取り扱いブランドの「ヴェトモン(VETEMENTS)」が公式SNSでうちの店をタグ付けしたことをきっかけに、ここ数年で世界中から注目されるようになっています。それに応えるため、モデルやスタイリストを起用してオリジナルビジュアルを撮影するなど、世界に通用するイメージ作りも強化してきました。撮影を重ねる中でスタッフの感性もどんどん磨かれて、お店としての基盤が固まってきたという実感があります。

WWD:簡単には服が売れない時代だが、自店の何が顧客を惹き付けていると思う?

長谷川:うちの店はお客さまのライフスタイルの一部になっています。“ライフスタイルショップ”って今はよく使われる言葉ですが、私が言いたいのは服以外に雑貨もそろう店とかの意味ではなくて、サービスが付いてくる、ということ。例えば、お客さまの要望は何でも叶えるように努力しています。ドレスが必要と言われたらもちろん探すし、買った服を着て出かけたいと言われたら一緒に出掛けます。相手が何を求めているかを察することができない人に、販売員は務まらないと思う。準備をしてお客さまをお迎えして、それに対して相手が何を求めているかをさらに考える。「テクノロジーが進化して販売員という職業は将来的になくなる」といった議論がありますが、それって考え方が真逆なんじゃないですか?お客さまから「やっぱりアデライデのサービスは違う」と言っていただくことも多いので、今後もサービスの質を上げていきたい。

WWD:創業者である両親からは何を学んだ?

長谷川:入社して10年間、「変な自信を持つな」と言われ続けて、下積みをしてきました。私が調子に乗って何か勘違いでもしようものなら、「あなたまだまだだから」と母親に打ちのめされる感じ。「とにかくお客さまに尽くしなさい」とも言われてきました。そういう経験があるからこそ、お客さまの信頼を得られているんだと思う。30代になって責任は増していますが、この数年は売り上げも右肩上がりで、自分のやってきたことに自信が付いた。今、IT関連などの異業種で働く同世代の友達と話すのがすごく楽しいんです。みんな社会人10年目ぐらいで、諦めずに下積みを続けてきたから今がある。同世代なので見てきたものも一緒。そういう人たちと組んで、両親が築いてきた店をサポートするような新しい事業を19年に始めたいと思っています。いいスタッフに恵まれて、店の基盤が固まっている今だからこそ新しいことがやれるはず。18年は三代目J Soul Brothersの登坂広臣さん主催のイベントのPRを担当するなど、初めて同世代と仕事で組んだ年でもありました。そういうビジネスチャンスがこれからもきっとあると思う。 

WWD:今後、店や自分自身が目指す姿は?

長谷川:店舗数を増やすことはないと思いますが、より多くのお客さまにリーチすることで店を大きくしていきたい。今後もこの店で、この店のスタイルで、一緒に学んで成長してきた仲間とやっていきます。今のスタッフがいればきっと大丈夫だし、両親も大丈夫だと思っているはず。あとは、私の経験を若い人に伝えていきたい。10年間下積みをして自分の基盤を作ってきたからこそ、「働くことは人生を豊かにする」といったことに気付くことができました。ファッション業界がやや元気がない今だからこそ、私の経験をちゃんと若い人に伝えて、業界を変えていきたいと思っています。