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服が売れない時代の“キラーチューン”

 “服が売れない”と言われて久しいが、売り方一つで行列ができ、売り場から一瞬で商品が無くなることがある。ファッションビジネスにおいて、その一翼を担っているのが、「WWDジャパン」6月12日号で取り上げる“音楽の力”だ。

 特にメンズの世界では、これまでもニルヴァーナ(NIRVANA)のカート・コバーン(Kurt Cobain)やセックス ピストルズ(SEX PISTOLS)のジョニー・ロットン(Johnny Rotten)といった“強い”アイコンがいて、グランジやパンクファッションなどのムーブメントを作ってきた。しかし、インターネットやSNSで簡単に情報を入手できる今は、選択肢も多く、自分好みのスタイルを選べる時代だ。トレンドの前線を行く敏感な人たち“ファッションヘッズ”の情報網は広くてとても早く、例えばラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)やエイサップ・ロッキー(A$AP Rocky)が新しいブランドのパーカを着た写真をSNSにアップしようものなら、世界中の“ファッションヘッズ”がインターネットで検索。無名ブランドでも一瞬でスターダムにのし上がり、気付くと定価を超えるプレミア価格で取り引きされるようになる。もちろん、自然発生的に起こり得ることも多々あるが、本特集では、それらを仕掛けている裏方に迫り、改めて、ファッションと音楽が生むビジネスを探っていく。

 この特集は弊紙「ファッションアイコン」特集(2016年12月26日&2017年1月2日号)での街頭アンケートで、ラフォーレ原宿で出会った中高生の集団がきっかけで生まれた。1人のカリスマより、コミュニティーで愛され共感を呼ぶアイコンが多数存在するという仮説を立て、ラフォーレ原宿や渋谷109、「シュプリーム(SUPREME)」の行列、TSUTAYAオーウェストでのライブ終了後など、各コミュニティーにいる人をターゲットに街頭インタビューを行い、2017人の回答を集めた。だが必ずしも全員にアイコンがいるわけではない。「いない」という回答も多く、実際、声をかけた人数は5倍以上、約1万人に及んだ。その中で分かったことは、アイコンはファッション感度のある程度高い人の中にしか存在しないということ。さらに今の時代は、ファッションに興味のない人が本当に多いという結論に、何ともいたたまれない気持ちになった。そんな中、ラフォーレ原宿で頭の先からツマ先まで、おしゃれに身を包んだ5〜6人の中高生に出会った。彼らのファッションアイコンは、タイラー・ザ・クリエーター(Tyler, the Creator)やリル・ヨッティー(Lil Yachty)、ニッキー・ミナージュ(Nicki Minaj)といったラッパーやミュージシャン。聞けば、ダンスやヒップホップをやっていると言う。憧れのミュージシャンのようになりたくて、そのスタイルを真似ようとファッションを好きになった。彼らは、街頭で声を掛けた1万人以上の中で最もオシャレに気を遣っており、間違いなくファッショニスタだった。若者のファッション離れが危惧されるというのなら、音楽の力を借りて興味を持ってもらうのもいい。そんな役割を担えたらという思いから、企業やブランドの音楽との事例を取り上げた。