ジョー・マローン(Jo Malone)調香師の弁護団は先週、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES以下、ELC)が英国高等法院に提起した訴訟に対する答弁書を提出し、商標権侵害やパッシングオフ(ブランド混同を招く不正競争行為)、契約違反の主張に反論した。ELCは3月、「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」創業者のジョー・マローン氏本人と、同氏のフレグランス会社ジョー ラブズ(JO LOVES)、ジョー ラブズ ホールセール、ITX UK(旧ザラUK)を提訴。「ジョー・マローン」の名前が「ジョー マローン ロンドン」とは無関係の製品に使用されていると主張している。
「自身の名前を使う権利がある」と反論
マローン氏側は今回提出された法廷文書で、ELCの主張は「法的根拠に乏しい」と反論。「ジョー・マローン」という名前を自身の身元表示や製品説明のために使用することは、「ジョー マローン ロンドン」との混同を招かず、契約違反にも当たらないとした。またマローン氏側は、“ジョー・マローン”の名称を個人的立場で使用する絶対的権利を有していると説明。「『ジョー マローン(ロンドン)』商標の機能を損なうリスクはなく、重大な混同の可能性も存在しない」と主張している。さらに、マローン氏側の法律事務所であるアドルショー・ゴッダード(ADDLESHAW GODDARD)とザ・イーブリー・パートナーシップ(THE EBURY PARTNERSHIP)は、パッシングオフについても「虚偽表示や営業上の信用毀損リスクが存在しないため成立しない」と反論した。
答弁書では、ELCが提訴に踏み切った時期にも疑問を呈している。マローン氏側は、「ジョー ラブズ設立時や『ザラ(ZARA)』との協業開始時には異議を唱えなかった」と指摘。「マローン氏は14年以上、自身の名前をジョー ラブズ関連のプロモーションに使用してきたが、原告側が異議を申し立てたのは2024年3月が初めてだった」と主張した。また、「原告側は少なくとも19年11月時点で『ザラ』との協業を認識していたにもかかわらず、25年4月まで苦情を申し立てなかった」としている。
文書ではさらに、「ジョー・マローン」という人物そのものが英国で広く知られた存在であり、その評価は『ジョー マローン ロンドン』とは独立したものだと強調。「マローン氏は“ジョー・マローン”の名で高い知名度を築いてきた」としている。
マローン氏はこれまで『ザラ』と幅広く協業し、異なる価格帯の香水コレクションを展開。一部パッケージには「ジョー ラブズ創業者、ジョー・マローンCBEによるコレクション」と署名入りで表記されている。なお「CBE」は、マローン氏が18年にチャールズ国王(当時ウェールズ皇太子)から授与された大英帝国勲章コマンダーを指す。フレグランス業界への貢献に加え、起業家やメンターとしての活動が評価された。
エスティ ローダーは「ブランド価値を守る」と主張
ELCは3月の提訴時に、「マローン氏による“ジョー・マローン”の名称使用は両者間の法的合意を超えるものであり、『ジョー マローン ロンドン』のブランド価値を損なう」とコメント。「契約上の義務に違反があった場合、長年投資してきたブランドを守る」と述べていた。ELCはマローン氏の退社後、「ジョー マローン ロンドン」に積極投資を続け、現在は世界84市場で4200以上の販売拠点を展開。従業員数は4000人を超える。
マローン氏本人と弁護団は、今回の法的手続きについて追加コメントを控えた。4月には、マローン氏がインスタグラムに動画を投稿。「高等法院から自分の名前が記された訴えを受け取るとは思っていなかった。非常に驚き、悲しく思っている」と語った。さらに、「もし今それが問題なら、最初から問題だったはず。なぜ今なのか理解できない」と述べ、「私は会社を売却したのであって、自分自身を売ったわけではない」と主張した。
その後、米「WWD」に寄せた声明では、「全ての当事者が前向きに進める形で、この問題が敬意を持って解決されることを願っている。その一方で、高等法院での訴えには断固として反論していく」とコメントしている。
ELCは1999年にジョー・マローンの同名ブランドを買収。マローン氏は2006年に同社を離れ、その後5年間の競業避止義務期間を経て、11年にジョー ラブズを設立した。同社はロンドン・エリザベス ストリートに店舗を構え、マローン氏は現在もフレグランスコンサルタントとして活動している。19年からはインディテックス(INDITEX)傘下の「ザラ」と協業し、香水ラインを展開している。