米国では、Kビューティがすでに広く浸透している。「セフォラ(SEPHORA)」では、「ビューティー オブ ジョソン(BEAUTY OF JOSEON)」や「エストラ(AESTURA)」といった韓国ブランドが、「ロード(RHODE)」や「クラランス(CLARINS)」などと並ぶ。韓国のビューティ専門店「オリーブヤング(OLIVE YOUNG)」も5月、ロサンゼルスに米国1号店をオープンした。
Kビューティについては多くの人がすでに知るところだが、“Kフレグランス”となると、まだなじみが薄いかもしれない。しかし、ソウル発「タンバリンズ(TAMBURINS)」がSNSで話題を集め、「ノンフィクション(NONFICTION)」がニューヨークに進出するなど、韓国発のフレグランスの存在感が高まりつつある。
SNSで拡散する新しい香水体験
従来の香水ブランドとはひと味違う見せ方や体験設計が、Kフレグランスの特徴だ。SNSでは、ソウルを訪れた外国人旅行者が、人気アイウエアブランド「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」から派生したフレグランスブランド「タンバリンズ」の店舗を訪れ、アートインスタレーションに驚く様子が拡散されている。
また、ヘヨン・チャ(Haeyoung Cha)が設立したソウル発のフレグランス&ボディーケアブランド「ノンフィクション」は、このほどニューヨークに進出した。開業前から、期待に胸を膨らませた客がドア越しに店内をのぞき込む姿が見られるなど注目を集めた。しかし、Kフレグランスと一言でいっても、ブランドによってその成り立ちや考え方、香りへのアプローチはさまざまだ。
韓国の伝統とグローバルな感性を
融合する「エロリア」
ウォニー・リー(Wonny Lee)とス・ミン・パク(Su Min Park)が設立した「エロリア(ELOREA)」は、Kフレグランスの多様性を表す一例だ。「私たちのブランドはニューヨークで生まれました。ルーツやインスピレーションは深く韓国に根差していますが、フレグランスについては当初からグローバルな視点でアプローチしてきました」とリーは語る。同ブランドでは、韓国のスズランやしょうゆといったユニークな香りの要素に加え、オレンジフラワーウォーター、サンダルウッド、アンバー、ムスクなど、よりなじみ深い香料も取り入れている。
「私たちが大切にしているのはバランスであり、相反するものをうまく組み合わせることにこだわっています。モダンと伝統、身につけやすさとオリジナリティーといった具合です。ユニークな香料を探し出すことにも多くの時間を費やしています。そして、それらを軸に、洗練されていながらも親しみやすいと感じられるようなストーリーを構築しています」。
同ブランドの香水には、韓国の伝統家屋を意味する“ハノク(HANOK)”、韓国の伝統衣装ハンボクの襟を指す“ギッ(GIT)”、済州島の海女に着想を得た“ヘニョ(HAENYEO)”などの名前が付けられている。それぞれが、西洋と創業者たちの韓国のルーツをつなぐ架け橋となっている。
日常に溶け込む香りを志向する
「ノンフィクション」
一方、チャ創業者が手掛ける「ノンフィクション」のアプローチには、確立されたフレグランスの伝統をソウル発のブランドがどのように取り入れ、現地の消費者に合わせて解釈しているのかが、より色濃く表れている。「欧米市場では、個性や大胆な自己表現がより重視される傾向があります。一方、アジアでは、より自然で控えめに感じられる美しさを好む人が多い。香水にもそうした感覚が反映されています。強く何かを主張するというよりも、調和が取れていて、日常生活の一部として自然になじむ香りを好む人が多いです」とチャ創業者は説明する。
「ノンフィクション」はこうした考えを貫きながら、そのアプローチを世界へと広げている。そして、それは海外の消費者にも響いているようだ。イチジク、ホワイトティー、スエードのノートを組み合わせた“ジェントルナイト”は、ニューヨークとアジアの双方で売れ筋となっている。
もちろん、地域による違いがないわけではない。「ニューヨークでは、より深みのあるベースノートや、はっきりとした個性を持つフレグランスへの反応が明らかに強いですね。この街そのものが非常に強いエネルギーと個性を持っているので、単に“いい香りがする”というよりも、香りを自己表現の一つとして捉える傾向が強いように感じます」。そのためニューヨークでは、ヒノキとターキッシュローズを特徴とする“フォー レスト”などが人気を集めている一方、ソウルでは、よりクリーンな印象の香りが好まれている。
欧州中心だった香水市場に新たな視点
地域によって香りの好みに違いはあるものの、両ブランドとも、韓国発のフレグランスへの関心が高まりつつある現状に期待を寄せる。「長い間、香水の世界は欧州の歴史あるメゾンを中心に形成されてきました。しかし今の消費者は、新しい視点や香料、ストーリーを発見することに対して、以前よりずっとオープンになっています。そうした流れの中で、韓国文化も重要な存在になっています」と「エロリア」のリー共同創業者は話す。
一方、「ノンフィクション」のチャ創業者は、同ブランドが単なる商品として受け入れられるだけではなく、人々のライフスタイルの一部になっていくことに期待を寄せる。同時に、この動きがより大きな世界的潮流の一部であることも認識している。「人々はKビューティだけでなく、ファッション、デザイン、空間、ライフスタイルなど、韓国文化そのものに対する好奇心をますます強めています」。
Kフレグランスは、まだ広がり始めたばかりだ。しかし、Kビューティが世界で支持を広げてきたように、韓国発の香りも今後さらに注目を集めていきそうだ。