アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。中国市場の不振やブランド力低下などが懸念され、ナイキ株は年初来で約30%と大きく下落している。そんな中、アップル(APPLE)のCEOでありナイキの取締役でもあるティム・クック(Tim Cook)と、ナイキ(NIKE)のCEOであるエリオット・ヒル(Eliott Hill)が、相次いでナイキ株を100万ドル(約1億5000万円)規模で買い増した。株価はこれを受けて2〜3%上昇。経営トップによる投資は、ポジティブシグナルなのか。今回は、ナイキの現状をめぐる話。(この記事は「WWDJAPAN」2026年4月20日号からの抜粋です)
本明秀文(以下、本明):ナイキの調子が本当に悪いね。僕がアトモスを売却した2021年の株価が1株約165ドルで、今は42ドル(4月13日時点)。4分の1まで下がっている。新しいイノベーションも試してはいるんだろうけど、OGをフォーカスし過ぎて、全く目立ってこない。“エア マックス 95”の復刻も盛り上がっているのは“おじさん”ばかり。おじさんは2万〜3万円のプレ値なら二次流通でも買うから、若者が平日から並ぶ。でも実態は、若者がおじさんを二次流通でカモにしているだけなんだよね。
──データ上は若者に人気あるように見えますよね。
本明:そうそう。データ上でしか商売してないから、翌年もその翌年も同じことを繰り返して、いつまでたっても脱却できない。ラブブもある日突然終わった。店は入店待ちで行列ができていたし、買えない人が多かったから、すごく盛り上がっているように見えた。でも実態は、転売ヤーが根こぞぎ買って在庫で抱えていただけ。それを海外に出したり寝かしたりして、市場に出回る量を絞っていたから人気があった。それなのに、「まだまだイケる!」と判断して、出店も量も増やしてしまった。そうすると、転売ヤーは在庫を大量に抱えているから、これ以上は無理だと、損切りしてでも市場に放出する。定価1万6000円ほどの6個入りのアソートボックスが、今は二次流通で1万円でも売れないらしい。出店し過ぎた「ポップマート」も、これから閉店を進めていくと言われている。
──一時的に売れてるように見えてもそれは転売の影響で、100あるもののうち50しか市場に出ていなかった。それが残りの50も表に出てきて、一気に150になったと。
本明:そう。今のナイキと一緒だよね。若者はすげぇ量を持ってるよ。もう寝かせておくのも限界にきている。会社が大きくなったからか、クオリティーもかなり悪くなっている。昔は数あるスポーツメーカーの中でも一番良かったのに。
──さっきおろした“エア フォース 1(AIR FORCE 1)”もレザーの裏地が2cmくらい飛び出てるんですよね。まぁ「仕方ないか」と思って履いていますけど。バランスが崩れたときに急に売れなくなっちゃうってことですね。「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」や「ロレックス(ROLEX)」みたいに、特定の商品を“限られた顧客にだけ売る”とかできないんですか?
本明:スニーカーは単価が低いから、どうしても量を売らないといけない。「クロムハーツ」が好きな知り合いに「そのジャケットいくら?」と聞いたら、「600万円くらい」と返ってきた。1回の買い物が1000万円クラスになる世界だもんね。
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