
アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。西武渋谷店の閉店(9月末予定)は、都市再開発の加速を象徴する出来事だ。渋谷・原宿などの都市部では出店と退店が繰り返され、街の景色は短期間で塗り替えられていく。少し足が遠のけば、まるで浦島太郎になったかのような感覚に陥ることもある。今回は、こうした変化の背景にある不動産に焦点を当て、家賃高騰による参入障壁、相続を起点とした土地流通の実態から都市型リテールの構造をひもとく。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月30日号からの抜粋です)
本明秀文(以下、本明):商売は一にも二にも不動産。アパレルも飲食も、BtoCの商売は全て不動産で決まると言っても過言じゃない。だけど都内は家賃が高騰し過ぎて、原宿では今、坪単価で15万から20万円。そんな感じだから、若者がチャレンジできる環境にない。下北沢も高くて、古着の利益率では採算が取れなくなっている。僕は毎日、街中で30分くらい立ち止まって人の足元を観察するんだけど、今ショッピングバッグを持っているのはインバウンドばかりだね。だからインバウンドが来るところで商売しないと絶対にダメ。大手スポーツチェーンの地方店は、当然日本人ターゲットになるから軒並み苦戦している。一方で新宿の「Alpen TOKYO」は、インバウンド需要もあって年間100億円規模を売り上げているという。今は、大型店でインバウンドに分かりやすく見せる戦略じゃないと売れない。
──「ヒューマンメイド(HUMAN MADE)」も原宿の「タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)」跡地に、約600㎡の大型旗艦店を出店しますね。
本明:今っぽいね。でももう原宿なんかは、ほとんどいい場所が出てこないから、やっぱり地道に不動産屋に会うことが大事。地場に根付いた不動産屋が一番物件に近い存在だから。街の不動産屋は、地域の動きを把握するために公園とかにある野立て看板までチェックして、葬儀にも顔を出すんだよね。
──その土地を売ってもらうためですか?
本明:そう。だから相続が起これば起こるほど、不動産屋は食うのに困らない。例えば、神宮前1〜6丁目だけでも、今後、相続が120件ほど発生するといわれている。相続税は最大税率が高いから負担が大きい。
──具体的にはどのくらいになるんでしょう?
本明:国が定める相続税評価額は、市場価格のおよそ3分の1。例えば市場価格3億円の土地だとすると、評価額は約1億円。そこから基礎控除の4800万円を差し引いた5200万円に対して課税されるから、税率は段階的だけど、数千万円規模になることもざらにある。しかも現金で払わないといけない。相続人が1人なら自分で決められるけど、兄弟で「土地を守りたい人」と「現金化したい人」でもめることも多い。相続争いも、最後は話がまとまらず「じゃあ売ろう」となるケースがほとんど。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。
