アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。ここ数年で、ランニングは競技の枠を超え、カルチャーとしても定着してきた。コロナ禍に比べてランニング人口自体は減少したものの、健康志向の高まりやマッチングアプリの広がりなどとも結びつき、イベントやコミュニティーは活発化している。インディペンデント系のランニングショップやブランドが急増するなど、世はまさに“空前”のランニングブーム。そんな中で、商売としての可能性と限界を本明さんが語る。(この記事は「WWDJAPAN」2026年5月25日号からの抜粋です)
本明秀文(以下、本明):今はランニングがファッションやコミュニティーの間で盛り上がっているよね。スポーツメーカーもランニングカテゴリーに力を入れているし、もちろん商品自体は売れているとは思うんだけど、先日、ニューヨークで「バンディット ランニング(BANDIT RUNNING)」(2020年に誕生したランニングブランド)のブランドマネジャーと話したら、ナイロン素材の速乾Tシャツみたいなランニング向け機能ウエアよりも、ファッションとして普段も着られるコットンTシャツの方が売れると。ランシューも、メッシュ素材の軽いシューズは雨がすぐに染み込んでしまうから売れない。多少重くても、水をはじくシューズの方が売れると言っていた。本格的なランニングウエアやランシューで走っているのは一部のシリアスランナー。ほとんどはファンランナーで、その人たちはコットンTシャツだし、スエットパンツで走っている人までいるよね。
──分かります。ランニングコースを走っていると、バルカナイズド(アッパーとゴム製ソールを熱圧着したローテクスニーカーなどに用いられる製法)のシューズで走っている人もいますね。
本明:そうそう。ランニングは40代以降で始める人も多い。特に普段革靴を履いている人はクッショニングの高いシューズに慣れていないから、ぺったんこの方が走りやすかったりする。メーカーとしては、そういう人にもランシューを履いてもらいたいんだろうけど……。あとは結局、ランニングは孤独との戦い。一生懸命走れば走るほど、他の人と交流がなくなる。
──ファッションという観点で見ると、孤独だからこそ着るものはなんでもよかったりします。おしゃれして走っても、他者がいないと自己満足で終わってしまう。
本明:そうなんだよね。「棺桶まで歩こう」(幻冬舎新書)という本を知っている?「歩けるうちは、人は死なない」というキャッチフレーズで打ち出している本で、今話題のベストセラー。この本が売れているから、似たテーマの本がたくさん出てきていて、本屋に行くと平積みでコーナーができている。前にも話したけど、本屋に行くと世の中の流れが分かる。歩くとか走るとか、そういう健康法が今のブームなんだよね。
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