「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン(MARCELO BURLON COUNTY OF MILAN)」は、高級ECファーフェッチ(FARFETCH)とのライセンス契約を終了し、代わりに伊アパレル企業ダダト・ネクスト(DADDATO NEXT)と契約を締結した。今後、同社は「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」のグローバルでのデザイン、製造、販売を担う。
“ラグジュアリー・ストリート”ブームをけん引
同ブランドのマルセロ・ブロン(Marcelo Burlon)創業者は、アルゼンチン・パタゴニア地域生まれ。ティーンエイジャーの頃にイタリアに移り、1990年代後半にミラノのクラブでドアマンとして働き始めたことを機会に、ファッション関連の業界人と顔見知りになった。友人らのために制作したTシャツが話題を集めたことから、2012年に「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」を設立。ルーツである南米のカルチャーとテクノを融合した作風で人気を博し、“ラグジュアリー・ストリート”ブームをけん引した。15年には、人気セレクトショップのアントニオーリ(ANTONIOLI)を運営するクラウディオ・アントニオーリ(Claudio Antonioli)と、ミラノ発のカジュアルブランド「ヴィンテージ55(VINTAGE 55)」の創業者ダヴィデ・ドゥ・ジーリオ(Davide De Giglio)と共同で出資し、伊アパレル企業ニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP以下、NGG)を立ち上げた。
瓦解が進むNGG
NGGは「アンブッシュ(AMBUSH)」「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」「ヘロン・プレストン(HERON PRESTON)」「アラヌイ(ALANUI)」などのブランドを擁し、ブロン創業者が保有する「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」や故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)による「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」のライセンス生産を行っていたが、19年8月にファーフェッチがNGGを6億7500万ドル(約972億円)で買収。しかし、23年12月にはファーフェッチが経営破綻に陥っていることが明らかになり、韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)に買収された。
なお、NGGは「リーボック(REEBOK)」を保有する米ブランドマネジメント会社オーセンティック・ブランズ・グループ(AUTHENTIC BRANDS GROUP以下、ABG)と22年3月に提携し、23年5月には同ブランドの欧州における販売代理店業務などを手掛けるNGG++部門を立ち上げている。しかし、新たな契約条件で合意に至らなかったことから、ABGは24年11月初旬に同契約を終了。情報筋によれば、これに伴い、NGGはABGに対しておよそ3億ドル(約432億円)のロイヤルティーを支払う義務があるという。
それに加えて、24年4月には「マルセロ・ブロン カウンティ・オブ・ミラン」のクリエイティブ・ディレクターを務めていたブロン創業者がブランドを離脱。こうしたさまざまな要因が重なり、NGGは同年11月、日本の民事再生法にあたるイタリア倒産法(Composizione Negoziata della Crisi、CNC)の適用を申請した。25年2月には、米ブランド管理会社ブルースター・アライアンス(BLUESTAR ALLIANCE)が「パーム エンジェルス」を買収。また、3月には「アラヌイ」が、4月には「アンブッシュ」がNGGから過半数株式などを取得してブランドの所有権を取り戻している。
現在、NGGは「アンラベル プロジェクト(UNRAVEL PROJECT)」「ヘロン プレストン」「キリン ペギー グー(KIRIN PEGGY GOU)」などを擁しているが、瓦解が進んでいることは否めないだろう。