ファッション

日本でどうなる合成ダイヤモンド市場  「スタージュエリー」と「ネクスト ダイヤモンド ニューヨーク」とに聞くラボグロウンの未来

デビアスによるラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド、以下、ラボグロウン)ジュエリー「ライトボックス(LIGHTBOX)」が終了する。同ブランドは、2018年に創業。ここ数年でラボグロウンの製造企業が増えて市場価格が急落し、ブランド終了になった。日本での展開はないが、ここ数年日本でもラボグロウンを使用したジュエリーが増えている。ラボグロウンを使用したジュエリー「エスジェイエックス ダブリュー(SJX W)」を展開するスタージュエリーとラボグロウン中心のジュエリーを展開する「ネクスト ダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK)」(以下、ネクストダイヤモンド)に話を聞いた。

ブライダルかアクセサリーの2極化を予測

スタージュエリー(STAR JEWELRY)」では、ラボグロウンを使用したジュエリーの展開はない。しかし、実験的なジュエリーを提供するサブブランドの「SJX W」では20年のブランド誕生時からラボグロウンジュエリーを提案している。同ブランドは、多くのアスリートやセレブから支持されている「SJX」から派生。ジェンダーレスなデザインのジュエリーを「高感度な大人の女性にも楽んでほしい」とスタートした。渡辺美穂スタージュエリー執行役員マーケティング本部 本部長は、「サステナブルがテーマの1つだったのでラボグロウンを採用。デビューから1年後にカスタマイズできるシリーズに拡大した」と話す。コロナ禍やウクライナ戦争の影響により、ラボグロウンの安定供給が難しかった時期もあった。技術革新と製造業社の増加と競争激化により、ラボグロウン価格が下落している今、「ここ最近になって、価格が想定内に収まっている印象だ」と渡辺部長。しかし、基幹である「スタージュエリー」ブランドでは、今後もラボグロウンの展開予定はないという。同部長は、「今後日本でも、さらにラボグロウンが浸透すると思われるが、量産されるアクセサリーか、ブライダルを含む中高価格帯の二極化が進むと思う」と話す。さらに、ラボグロウンジュエリーを販売するにあたり必要になる付加価値があるという。「サステナビリティの観点から、ラボグロウン製造における再生可能エネルギーの使用率をはじめ、あらゆる面から新たな認証システムが必要になるはずだ」。

“敢えて選ばれる”存在になるために必要な信頼性

「ネクスト ダイヤモンド」はニューヨークが拠点のブランドで2021年に日本に上陸した。松屋に常設店があり、日本各地でポップアップを開催。米市場に詳しい二宮美生ネクストダイヤモンド社長は、「アメリカにおけるラボグロウン市場は、成熟期にあり、安価だから選ばれるものではなく敢えて選ばれる存在へと進化した。『ライトボックス』の撤退は、ラボグロウンを“天然より安い代替品”と位置付けるビジネスモデルの限界を象徴している」と話す。現在のラボグロウン市場における課題については「品質のばらつきと宝石に関する知見のないブランドの乱立だ」と二宮社長。最近では、“安くジュエリーを作れる”という点だけに注目してラボグロウン市場に参入するブランドも多いそうだ。宝石やダイヤモンドに対する知識が十分にないため、誤解やトラブルが発生するケースもあるという。同社長は、「日本は発展途上だからこそ、お客さまのラボグロウンに対する目は厳しく、信頼性と品質が需要視される。確かな専門性のあるブランドが取り扱えば、市場は広がるだろう」と話す。「ネクストダイヤモンド」は、百貨店内に店舗を構え、信頼できる品質、透明性のある価格でラボグロウンジュエリーを提供し、顧客から支持を得ている。「ジュエリーの本質的な価値と向き合い、“ラボグロウン”の“敢えて選ぶ価値”を素材の背景やストーリーも含めて伝えていくのが重要だ」。

正しい知識と付加価値の創造が市場成長の鍵に

エシカルな観点とコスパから今後、ラボグロウンを選ぶ消費者は増えると思われる。
アクセサリー感覚でラボグロウンを楽しみたい人はデザインと価格重視、一方で、ブライダルで選ぶ人にとっては、確かな品質保証と共感するブランドストーリーが必要になってくるだろう。天然ダイヤモンドの代替品ではなく、新たな選択肢として広がりつつあるラボグロウン。発展途上の日本市場においては、まず、ブランドも消費者もラボグロウンについての正しい知識を持つべきだ。ラボグロウンは天然と違って希少性はないが、素性は全く同じだ。天然が、ブランド品だとしたら、ラボグロウンは全く同じ商品のノンブランド。同じものだったら。ノンブランドを選ぶ人もいるだろう。だが、ラボグロウン市場が成長するためには、そこにデザイン性やブランドストーリーといった付加価値をどれだけ付けられるかが鍵になってくる。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

Is AI GOOD?AIがもたらす「ゲームチェンジ」

「WWDJAPAN」12月1日号は、ファッション&ビューティ業界でいよいよ本格化する“AIゲームチェンジ“を総力特集しました。11月19日のグーグル「ジェミニ3.0」発表を契機に、生成AIは「便利なツール」から「産業の前提インフラ」へ変貌しつつあります。ファッション&ビューティ業界で浸透する生成AI及びAIの活用法とゲームチェンジに向けた取り組みを紹介しています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。