ビジネス
連載 齊藤孝浩の儲けの秘訣 第8回

在庫が少ないほうが儲かる!?  驚きの“資金効率”改善ストーリー

WWDJAPAN.comは4月までマンガ版「ザ・ゴールシリーズ 在庫管理の魔術」を連載していました。在庫過剰に陥ると、つい値下げセールに頼ってしまう――。しかし、本当にそれしか方法はないのか? 利益を高め、最大化するための解決策を、アパレル在庫最適化コンサルで「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」等の著者である齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、同マンガを読みながら、解説して行きます。今回は、第8話を取り上げます。

今回のストーリーは、主人公の渋谷店の店長である徹が“たった20日分の在庫”で、年30回以上の回転を達成し、利益効率を劇的に改善させたという、リアルで実用的なエピソードです。

「在庫は少ない方が儲かる」──その理由を、マンガと一緒にやさしく解説していきます。

マンガ「在庫管理の魔術」の第8話は コチラ

今回のストーリーでは、在庫回転数 = 年間売上高 ÷ 平均在庫原価 という式で算出しています。

これは、「在庫を持つために使ったお金が、1年間で何倍の売り上げを生んだか」を示すもので、資金効率を測る指標です。

ここで、一般的に小売ビジネスで用いられる在庫回転数には、主に次の3つの計算方法があることを押さえておきましょう。

小売業で使われる「3つの在庫回転数」

資金回転数(資金回転率)
計算式:年間売上高 ÷ 平均在庫原価
→ 経営者や財務担当者が、資金効率やキャッシュフローの観点から注目する指標です。

在庫回転数(原価ベース)
計算式:売上原価 ÷ 平均在庫原価
→ 商品部の仕入担当者が、仕入れた在庫がどれくらいのペースで売れているかを確認する際によく使われます。会計・財務分析でも一般的です。

商品回転数(数量ベース)
計算式:販売数量 ÷ 平均在庫数量
→ 店頭で商品がどれくらいの頻度で入れ替わっているか、つまり“店頭鮮度”を測る指標で、店舗現場のスタッフが関心を寄せています。

今回のストーリーでは、店長の徹が、販売スタッフにも経営視点で考えてもらいたいと語りかけている場面が描かれています。

注目したいのは、マンガの3〜4ページにかけて登場する、以下のセリフです。

「以前の渋谷店は在庫が4カ月分で、利幅は100%くらいで、回転数は年6回転ぐらいだったけど、今は在庫が減ったのもあって年30回以上になるらしい」

一見分かりにくいですが、非常に重要なポイントですので、丁寧に読み解いてみましょう。

「在庫回転が年6回から年30回以上に」──その仕組みとは?

まず、「4カ月分の在庫」とは、120日分の在庫を常に持っていたことを意味します。これは1年(365日)を120日で割ると、年に約3回在庫が入れ替わっていた=3回転ということになります。

次に「利幅が100%」とは、仕入原価の2倍の価格で商品を販売していたという意味です。たとえば、1000円で仕入れた商品を2000円で売っていた場合、粗利率は50%になります。

つまり、3回転 × 2倍の利幅 = 年間で6倍の売り上げを生んでいた、これが徹が「年6回転ぐらいだった」という意味です。

しかし、その後、渋谷店では漏水トラブルをきっかけに、以前の6分の1の在庫量、わずか20日分の在庫で店舗運営を行うことになりました。これは、1カ月分にも満たない水準です。

では、この20日分の在庫が、年間で何回転できるかを考えてみましょう。

年間365日 ÷ 20日分の在庫 = 18.25回転

これを従来通り仕入原価の2倍で販売すれば、

18.25回転 × 2倍の利幅 = 約36.5倍の売り上げ

つまり、以前より在庫量を減らしながら、回転数を年30回以上に高めることができたのです。

これは、在庫が少なくても、「欠品を起こさない在庫構成」によって高い回転率を維持できたからこそ実現した結果です。

少ない在庫で、より多く稼ぐ

今回のストーリーが伝えているのは、在庫量が少なくても、欠品を防げば、何倍もの効率でお金を稼げるという重要な事実です。

「うちの店は在庫の回転が悪い……」「いつも在庫が多すぎる……」ーーそんな悩みを持つ方は、まず“在庫を減らしても売れる仕組み”を考えてみてください。

在庫を寝かせるのは、もっとも無駄な資金の使い方。欠品させずに回転する在庫こそが、利益体質をつくるカギなのです。

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