アパレル、飲食、観光事業を手掛ける石見銀山群言堂グループは、拠点とする島根県大田市大森町の地域づくりに取り組む。ビジネスの中核は衣料品の製造販売だが、保育園留学の受け入れや滞在型シェアオフィス、中長期滞在者向けの宿泊施設の運営に本腰を入れ、町の関係人口が増える事業を行う。そもそも「石見銀山 群言堂」創業者で大森町出身の松場大吉と三重県出身の登美夫妻が、過疎化が進む大森町に戻ったのはバブル全盛期。パッチワークの布小物の販売から始め、1994年に土地に根差したブランドとして「群言堂」を立ち上げ、現在全国に31店舗を展開する。「群言堂」を手掛ける石見銀山生活文化研究所は2019年、事業を統合した石見銀山群言堂グループを設立し、創業者夫妻は経営を娘婿や娘に受け渡した。大森町の人口は380人(2025年3月31日現在)。そのうち小学校児童は24人、保育園児は28人と子どもの数が多い。本社で働く社員は6人がUターン、25人が14の地域からのIターンと若い世代が移住。目指すのは人口500人だ。そのための施策とポイントを松場忠・群言堂グループ社長と峰山由紀子生活文化研究所所長に聞く。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月26日号からの抜粋です)
会社概要
設立年:2019年(石見銀山生活文化研究所は1998年、前身「ブラハウス(BURAHOUSE)」を手掛けていた有限会社松田屋は88年設立)/従業員数:235人/売上高:25億5000万円(2025年6月期見込)/店舗数:31店舗/事業内容:衣料品や生活雑貨の製造・販売、宿泊施設の運営
PROFILE: (右)松場忠/石見銀山群言堂グループ社長(左)峰山由紀子/石見銀山生活文化研究所所長

大森町はどんなところ?
大森町は日本最大の銀山である石見銀山のお膝元。ピーク時には約20万人が住んでいたというが、1923年の閉山後は“取り残された町”となり過疎化が進んだ。開発されなかったことで街並みが残り87年に伝統的建造物群保存地区に指定され、2007年に石見銀山が世界遺産に登録された。
POINT 1:
「地域一体型経営」を目指す
群言堂グループは地域を一つの会社のように捉えて、地域内の事業者が連携して収益を最大化し、地域全体の発展につなげる経営モデルづくりに行政や異業種、町民たちと取り組む。大森町の観光資源を有効活用し、地域全体の魅力を高めて町の存続を目指している。ベーカリー店などの誘致や町家を改装した宿泊施設を充実させるだけではなく、よりよい経営を目指して市営施設の運営を地域で担うことを目標に大田市と取り組んでいる。大森町は大田市の地域再興のモデルケースになりつつある。
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