米ビューティ業界では、化粧品小売業者によるプライベートブランド(以下、PB)がひそかに活況を迎えている。小売大手セフォラ(SEPHORA)の「セフォラ コレクション(SEPHORA COLLECTION)」や、アルタ ビューティ(ULTA BEAUTY)の「アルタ ビューティ コレクション(ULTA BEAUTY COLLECTION)」、ターゲット(TARGET)の「アップ アンド アップ(UP&UP)」などの既存ブランドに加え、近年新規参入が急増し、同カテゴリーのさらなる成長が見込まれている。
背景に次世代富裕層からの支持と経済不安
調査会社ニールセンIQ(NIELSENIQ)のデータによれば、Z世代とミレニアル世代のうち67%がPB製品を「ナショナルブランドの製品と同様に良い」と好意的に捉えている。さらに、年収10万ドル(約1420万円)以上の高所得層の72%も同意見で、PB製品を支持する傾向が高まっている。従来PBはベビーブーマー世代や成熟した消費者が主要な顧客層だったが、最近は若い富裕層を中心に支持を得ており、2021年以降これらの肯定的な意見が顕著に増加している。
PB成長の背景には経済の不確実性の高まりも挙げられる。ジャクリーン・フラム・ストークス(Jacqueline Flam Stokes)=ニールセンIQ 美容、医薬品、OTC医薬品 小売り担当シニアバイスプレジデントは、「不安定な経済に対して消費者が節約志向を強めるのと同時に、小売業者はPBに注力し始める傾向にある」と指摘。一方で現在の状況は「少し特殊」だともいう。「昨今のPBへの関心の高まりは、経済的事情によるものだけではない。現代の消費者は自分にとって重要な製品、特性、成分をより深く理解するようになったことで、PBへの理解も深まっている」。化粧品を購入する消費者の年齢はかつてないほど若くなっており、嗜好は多様化。価格よりも価値を優先する傾向にあるが、PB製品はこうした消費者の変化にうまく適合しているようだ。
市場拡大で小売各社がPBを強化
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調査会社サカーナ(CIRCANA)によれば、PBカテゴリーの美容製品市場は23年には10.4%増加し39億ドル(約5538億円)となり、食品および非食品のPBカテゴリーを上回った。現在ヘルスケアと美容の売り上げ全体の約9.5%はPBによるもので、ドラッグストア、量販店、食料品店などのチャネルでの売り上げが最も多い。一方で、PBの売り上げ全体の5%に満たない化粧品専門店には「PBを活用することでさらに飛躍できるチャンスがある」とフラム・ストークス=美容、医薬品、OTC医薬品 小売り担当シニアバイスプレジデントはいう。
米薬局チェーンのウォルグリーン(WALGREENS)も昨年、人気ブランドの代替品である“デュープ”トレンドを全面に押し出したプレミアムスキンケアシリーズを発売した。シリーズには「ソル デ ジャネイロ(SOL DE JANEIRO)」のスター製品“ブラジリアン バムバム クリーム”(240mL、48ドル=約6800円)を模倣した“ボディ バター ファーミング クリーム”(約180mL、22.99ドル=約3200円)や、「ラネージュ(LANEIGE)」のヒット製品“リップスリーピングマスク”(20g、2365円※編集部調べ)の半額の保湿リップマスクなどをラインアップ。同社は25年度第1四半期の決算で、PBの浸透率が前年同期比0.75%増加し17.8%に達したと報告しており、60種類以上展開するPB製品を今年中に300種類まで拡張することを目標に掲げている。
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