美容室チェーンを約350店舗展開するアルテジェネシスのグループ会社であるアッシュは、2025年の新卒入社数が238人に達し、同社設立以来過去最高となった。
美容師の人手不足・採用難は業界でも深刻な状況にあり、アッシュにおいても21年のコロナ禍を境に、新卒の採用人数は200人に届いておらず、特にこの2年は150人以下と激減し、非常に危機感を持っていた。そこで採用体制の見直しや、K-POPアーティストのヘアメイク機会提供、外部コンテストへの積極参加など、キャリア拡大支援の取り組みを実施してきた。
それにより美容学生の美容室「アッシュ(Ash)」への認知や興味関心が高まり、25年内定者数は前年の同時期の内定者数に対して179.4%と過去最高に。新卒入社人数も238人と過去最多になった。また、24年新入社員の入社後半年以内の退職率は、前年の同時期と比較すると8.5%減と改善した。
アルテグループでは、K-POPアーティストが多数所属するEVA.ENTERTAINMENTのスポンサー支援を23年11月より開始。所属美容師がエンターテインメントの分野でクリエイティブ性の高いヘアメイクに挑戦できる機会を作ることで、美容師として幅広い経験を積み、今後のキャリア形成に生かしてもらいたいというのがスポンサードを決めた理由。この1年で合計17回のイベントや撮影会で「アッシュ」の美容師がヘアメイクを担当し、延べ216人のスタッフがサロンワークとは違った現場でさまざまなインプットを得た。
美容師として幅広い経験ができる環境作りでキャリア形成を支援したいという思いで始めたK-POPのスポンサードだが、この支援の一番の目的は、美容室業界の採用難と人手不足を解消すること。美容学生のK-POPへの高い関心を生かし、美容師や店舗のSNSやプレスリリースなどを活用したイベント活動の発信は、美容学生への新たなアプローチに繋がり採用機会を生み出している。
また、スポンサー支援を社内外に積極的に発信することで、新卒採用の促進に加え、既存スタッフからもヘアメイクの担当希望が増加。定期的に社内オーディションが実施されるなど、スタッフの技術力やモチベーションアップに繋がっている。美容師の組織への所属意識の高まりが定着率にも表れており、エンゲージメント向上にも貢献している。給与等のハード面以外を重視するなど、多様な価値観を持つ若手世代に響く打ち手として“ヘアメイク×エンターテインメント”が顕著な成果をあげていることから、今後も同施策は継続・強化していくという。
さらに同社では、新卒採用に際して美容学校に向けて本社主体で採用活動を行い、一括採用を行っていたが、23年より現場主体の美容学生とのマッチングへと採用手法を改革した。従来の採用活動は、学生個人に向けてというより“対美容学校”となっていた。本部の採用担当者が美容学校へ訪問し、会社説明会を開催、そして店舗見学の同行などを行ってきた。美容学生と本部の採用担当者との繋がりは生まれるものの、各店舗の状況や人員配置のバランスを見て、本部で配属サロンを決定していたことから、入社後のミスマッチが生まれ、早期退社が増加する流れとなってしまっていた。
そのミスマッチの解消のための施策が、現場主体の店舗採用への切り替え。学生側は知りたい情報を事前にチェックしてから店舗見学に行くことができ、なりたい美容師のビジョンが明確になり、働き方のイメージがしやすくなった。また、サロン側も人材獲得のためにさまざまなアピールを行い、従来よりも採用活動に対して真剣に取り組むようになった。
こうした一連の取り組みが功を奏した結果、採用人数は上昇し、店舗格差も生じることなく推移。入社後のギャップも減少し、退職率も低下した。