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「シーイン」、英国でのIPOに仮承認 トランプ政権の対中関税で逆風も?

英国の金融行為規則機構(Financial Conduct Authority以下、FCA)は、ロンドン証券取引所でのIPO(新規上場)を申請していたグローバルSPAの「シーイン(SHEIN)」に対し仮承認を与えたとロイター(REUTERS)が報じた。

「シーイン」は2012年に中国・南京で設立し、22年に本社をシンガポールに移転。23年11月には、米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission)に非公開でIPOの申請をしたものの、承認は難航。このため、24年6月にFCAへの申請を行っていた。なお、今回の仮承認はIPOの実現に向けた大きな一歩だが、同社は現在、中国証券監督委員会(China Securities Regulatory Commission以下、CSRC)など中国の関連当局の承認を待っている状態だという。本件について、「シーイン」およびCSRCからのコメントは得られなかった。

企業イメージの改善に関する取り組み

「シーイン」は、豊富な商品ラインアップを圧倒的な低価格で販売し若年層を中心に人気を集める一方で、著作権侵害などによる訴訟トラブルをいくつも抱え、サプライチェーンにおける劣悪な労働環境への懸念が絶えない。こうした企業イメージを改善する意味もあり、同社は24年7月、英国とEUにおけるアパレル事業の循環性の実現を支援する2億ユーロ(約324億円)規模の基金を設立。また、より幅広いESG(環境・社会・ガバナンスを考慮した持続的な成長)の推進に向けて5000万ユーロ(約81億円)を投資すると発表した。

なお、EC向けのメールマーケティング会社オムニセンド(OMNISEND)によれば、不安定な世界情勢や全体的な景気の減速を背景に、英国の消費者は“お得感”により敏感になっており、調査対象の60%近くが過去1年の間に「シーイン」や「ティームー(TEMU)」など中国の越境ECを利用したことがあると回答。一方で、これらのプラットフォームを信頼していると回答したのは4%程度だったという。

トランプ政権の対中関税政策が「シーイン」にも影響か

ロイターの調査によれば、米国は「シーイン」にとって最大の市場であり、売り上げの28%以上を占めているという。その理由の一つとして、米国では輸入申告額が800ドル(約11万円)以下の少額貨物に対して関税の支払いが免除される“デミニミス(非課税基準額)ルール”が設けられていることがある。ちなみに、24年に同ルールに基づいて米国に非課税で輸入された荷物数は約14億個に上り、その半数程度が中国からのものだ。しかし、中国との“関税闘争”を繰り広げているドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は4月2日、中国本土および香港からの輸入品に対し、5月2日付で同ルールを撤廃することを発表。これは「シーイン」にとって痛手となることは間違いなく、IPOを実施する際の企業価値の算定にも影響する可能性がある。

英国は中国との貿易拡大に合意など関係改善へ

米国が中国への締め付けを強化する一方、英国は関係を深めようとしているようだ。英中関係はこれまで、新疆ウイグル自治区での人権侵害や言論の自由に関する問題などにより冷え込んでいたが、経済成長を重要政策の一つに掲げるキア・スターマー(Keir Starmer)英首相は24年11月、ブラジルで開催された主要20カ国首脳会議(G20サミット)で中国の習近平国家主席と会談し、「両国の強固な関係の重要性」を確認。英首相と習主席が直接会談を行ったのは6年ぶりだった。

今年1月には、レイチェル・リーブス(Rachel Reeves)英財務大臣が訪中し、経済政策などを統括する何立峰 副首相と会談。両国間の貿易拡大や貿易障壁の撤廃、金融サービス分野での連携などに合意し、中国が今後5年にわたって英国に6億ポンド(約1122億円)を投資する約束を取り付けている。

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