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連載 小島健輔リポート

ギャップとジーンズカジュアルの「復活」は本物か【小島健輔リポート】

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ファッション業界の御意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「ギャップ(GAP)」「オールドネイビー(OLD NAVY)」「バナナ・リパブリック(BANANA REPUBLIC)」などを運営する米ギャップの2025年1月期決算が発表された。近年は販売不振が続いていた同社だが、久しぶりの回復傾向。決算内容を詳しく分析し、ギャップの現状と今後を考察すると、日本のジーンズカジュアル市場を共通する課題が見えてくる。

アバクロに続いてギャップの復活も注目されているが、復活の勢いも手法も全く異なり、高収益で知られるバックルも頭打ちを脱せないでいる。収まらぬインフレ下でのトレーディングダウン(格下げ消費)で米国カジュアルチェーンには総じて追い風が吹いているがジーンズカジュアルの復活とは言えず、わが国ジーンズカジュアルチェーンの先行きも不透明なままだ。

復活劇は本当に始まったのか

各四半期や業態、地域で跛行(はこう)が見られるもののギャップの25年1月期は全四半期の既存店売上高が前年実績を上回り(売上高の前年超えは第1〜第3四半期)、売上高は150億8600万ドル(2兆3020億円※1)と前年を1.3%上回ったが、コロナ前20年1月期の163億8300万ドルには92.1%と届かなかった。「ザラ」を運営するインディテックスの25年1月期売上高が20年1月期を36.6%、「ユニクロ」のファーストリテイリングの24年8月期売上高が19年8月期を35.5%、アバクロの25年1月期売上高が20年1月期を36.6%上回ったのと比べれば勢いを欠き、「復活」と言うより「浮上」と言うのが実態ではないか。

粗利益率※2.は47.2%と前期から2.9ポイント上向いてもコロナ前20年1月期の48.7ポイントには1.5ポイント届かなかったが、販管費率が39.8%と前期から0.8ポイント低下し(コロナ前の37%台には遠いが)、営業利益率は7.4%と19年1月期の8.2%に迫った。営業利益額も11億1200万ドルと前期から倍増したが19年1月期の13億6200万ドルには8掛け強と届かず、収益面でも「回復」の域を出ていない。

在庫回転も3.92回と前期から0.14ポイント上向いて3期連続で改善し20年1月期の水準を回復したが、19年1月期までの4.34〜5.00回には遠く、これも「回復」の域を出ていない。CCC(Cash Conversion Cycle)は33.9日と前期(33.8日)から横ばいだったが20年1月期の49.7日からは2週以上(15.8日)短縮されており、純資産に対する運転資金率も42.8%と前期から10.3ポイント、20年1月期の67.3%からは24.5ポイントも改善されたから、商品財務は「回復」以上と評価される。

期末店舗数は3569店と前期末から9店増えたが、FC店は1063店(全店舗の29.8%)と65店増えても直営店は2506店と56店減少している。コロナ前20年1月期末と比べると直営店が839店減少した一方でFC店は489店も増えているから、前経営陣から続くFC店シフトが継続されている。

期末総店舗面積も3010万sqf(平方フィート)と前期末から1.6%(50万sqf)、20年1月期末からは18.6%(690万sqf)も減少しているが、コロナ下から前期末までの4期間で17.3%(640万sqf)も減少しており、販売不振による不採算店舗の撤退であって、23年下期から交代した新経営陣の政策ではない。当期は168店を閉めて177店を出店したが、前期末までの4期間に1149店(平均287店)を閉めて895店(平均224店)を出店しており、店舗網の再配置が加速しているわけでもない。

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