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【インタビュー前編】重松会長に聞くUA成功の秘けつ、「日本流の接客サービスを欧米で試したい」

 ユナイテッドアローズ(UA)の創業者である重松理・会長(64)が6月24日付で退任し、名誉会長になった。ビームス設立を企画し初代店長や常務を務めた後、UAを1000億円企業に育てた「ミスター・セレクトショップ」だ。接客サービスにも並々ならぬ想い入れを持ち、「顧客満足追求の権化」とも言える。そんな重松会長に、経営の根幹に掲げた販売や顧客満足に対するこだわりや後身に託す夢などを聞いた。

ーーなぜ今退任するのか?
 もともと55歳で引退したいと発表していた。ファッションビジネスは基本的には若い人対象のビジネス。30代で20代向け、40代で30代向け、50代で40代向けをやるぐらいがちょうどいい。54歳でバトンタッチし会長になったが、代表取締役を外れておらず、業績悪化の責任を取って社長に降格して建て直しを図ったため、後ろ倒しになった。社長復帰当日から次期後継者育成に着手した。アメリカのGEの後継者育成プランみたいに要件提示し、中堅管理職以上をふるいにかけた。最終的に今の竹田(光広)社長と藤澤(光徳)取締役の2人に絞り、翌年営業を二つに分けて2本部制で1年間執行させた。そこで竹田を副社長にして「次期社長にする」と社内外に公言し、結果も出ていたので、2012年に社長を託した。2年経ち順調なので、今後は名誉会長として「理念の浸透」「クリエイティブパワーの向上」「企業風土・文化のチェック」を行なう。また、個人資産を投じて本社8階に企画資料室を開設したが、日本服飾文化振興財団として財団法人化した。これまでも小売業がインキュベーション企業を持つべきだと考えて「店頭に商品が並ぶことが一番」と可能性を感じれば実績がなくても積極的に買い付けしてきた。今秋からは財団を通じて、服飾文化関連のセミナーや若手デザイナーへの助成などを行なっていく。ファッションビジネスを目指す人のアイデアやヒントが生まれる場になれば。

ーー改めて、UA 創業時に掲げた経営方針は?
 やはり、「お客様第一主義」「カスタマー・ファースト」という理念経営だ。25年前はインポートショップ的な存在感で、輸入モノを店頭で売っているだけで、サービスなんてとんでもなかった。「勝手に触るな」「オシャレじゃないヤツは来るな」という店もあり、偉そうな人も多かった。だからどんなことをしてもサービスを前に持ってきて、へりくだった店を作りたかった。お客様と直接接する店頭で最高の顧客満足を提供することにコミットメントし、モノ作りもバイイングも販促宣伝も店作りも広報IRも、すべてを顧客満足に集中してきた。

ーー76年に創業したビームスの初代店長でもあったが、重松流接客スタイルとは?
 アパレルの営業出身で、販売はまったくの素人。販売員としての教育も受けていなかった。そこで、自分がやられて嫌なことはしない、やってもらってすごいな、気持ちがいいなということをしようという2つを軸に指導体系を作った。士農工商と言われ販売職は低く見られる時代があったが、お客様の欲しいものを知り、お客様の手に届く時に付加価値を与える販売員は重要な存在だった。UAでは販売の価値を上げ、技術にまで高めたかった。それには社会性を高めることが必要で、だから創業当時から上場を目指した。今は「ここまでされたら感動する」ところまでやらないといけないし、販売スキルなんて言葉もあるけれど、販売員の使命はお客様の物欲を爆発させること。何か欲しいものはないかと店を訪れた人が、どうしても欲しいと思い、手に入れた達成感が高まり、ヒートアップして頭から湯気が出るみたいな状態で「ありがとう」「最高のものを買わせていただきました」とお礼を言って店を出ていく。最高だよね!

ーー自ら企画提案したビームスを辞めたのはなぜ?
 当時のオーナーで社長だった設楽(悦三)さんと方針が合わなくなっていた。ロンドンオフィスもあり、圧倒的な情報量でどこよりも早く面白いものを見つけるなど絶対的優位性があった。ただ、10周年を迎えた頃、私が目指した衣食住遊知全般のライフスタイル提案型ショップを実現するには外に出るしかないと思い、フィールドを変えた。

後編に続く。

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