2024-25年秋冬コレクション・サーキットがメンズ・コレクションからスタートしました。イタリア・フィレンツェからミラノ、パリへと続く13日間を「WWDJAPAN」が連日ほぼ丸一日をかけて総力リポートします。担当は、「WWDJAPAN」の大塚千践・副編集長と藪野淳・欧州通信員、パリ在住のライター井上エリという大阪人トリオ。ラグジュアリーメゾンから無名の新人まで、全方位をカバーするリポートは「WWDJAPAN」だけ。3人が感じた喜怒哀楽と共に、現地のリアルな空気感をお伝えします。
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10:00 「ターク」
いよいよパリ・メンズの最終日です。大阪トリオと日本チームでやりとげた達成感のような、もう終わってしまうのかという寂しさのような、さまざまな感情が込み上げてきます。まずは、森川拓野デザイナーの「ターク（TAAKK）」からスタート。公式スケジュールでの発表は4回目で、この時間帯での発表は初めて。最終日の朝一は集客面において鬼門と言われているものの、逆境にはすこぶる強く、むしろパワーに変える「ターク」のことですから心配は無用です。
会場はコンサートホールのル・トリアノンで、アリーナ部分にシートを設置してゲストの至近距離をモデルが歩きます。今シーズンは、前シーズンの“神は細部に宿る”というテーマを進化させ、“成長と創造のサイクルの中で、神は細部に宿る”という解釈に拡張させます。デザインのためのデザインでなく、「ターク」の強みであるテキスタイルが雄弁に語るような強い服作りに挑みました。
ゆえに、アイテム自体はクラシックなメンズウエアであり、シンプルです。ただ、“シンプル”というのは「ターク」基準の“シンプル”であり、普通の感覚でいうとぶっ飛んでる“普通”なのです。アウターは安易なオーバーサイズに逃げることなく、きれいな仕立てにこだわったのだと想像します。突飛なフォームや奇抜なカラーリングを一切排除した分、個性豊かなテキスタイルの存在感が一層強まりました。シャツが徐々にジャケットに変化するスーツやMA-1には、ボタニカルモチーフがカットジャカードで浮き上がります。オパール加工で表現したランダムなピッチの格子柄や、エレガンスとアブストラクトが共存するデニム調のセットアップなど、素材への探究心とチャレンジはじわりじわりと進化。経年変化をジャカードで表現した定番のデニムシリーズをルックから外したのは、前進する決意だったのでしょうか。森川デザイナーは日本人デザイナーでも随一の勉強家であり、おそらく“クワイエット・ラグジュアリー”というトレンドに対して語り出すと、平気で1時間は話し続けそうな熱い性格です。そんなトレンドへのアンチテーゼとして、シンプルで“布が喋りまくる”スタイルを打ち出したのかもしれません。
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