ファッション

ロゴのない「MSGM」、デザイナーがブランドの変化を語る

「MSGM」が変化している。2024年春夏コレクションには、以前のように大きなブランドロゴはなく、抽象的な花柄やさまざまなチェック柄が主役だ。イエローやライラックなど、カラフルな色使いは変わらないが落ち着いた色調で洗練度を増した。ロゴブームが終焉し、“クワイエット・ラグジュアリー”のトレンドが盛り上がるなか、「MSGM」はどう生き残るのか。このほど来日したマッシモ・ジョルジェッティ(Massimo Giorgetti)デザイナーは楽観的だ。むしろ、削ぎ落とされたクリエーションのなかで見えてきた強いブランドアイデンティティーについて語ってくれた。

WWD:2024年春夏コレクションは、抽象的で大人っぽくなった印象だった。

マッシモ・ジョルジェッティ(以下、ジョルジェッティ):「MSGM」は今進化する時期だと思う。モノトーンの色調や抽象的なプリントを多用したアプローチは、6月のメンズコレクションから続けている。以前のようなアシッドカラーと大きなロゴは控えめで、フェミニンかつクールな印象だったと思う。ブランドを始めた時は30代前半だったが、今は46歳。チームのみんなも大人になっているのだから自然な変化だと思う。東京の店舗では、カシミアのメランジェニットやロゴを小さく配したスエット、カーゴパンツが売れ筋だという。顧客の求めるものも変化している。もちろん、今回のコレクションもとても気に入っている。ただ、直前にショー会場を悪天候で変更せざるを得なかったのがとても残念だった。当初はミラノ工科大学近くの屋外の素晴らしいロケーションで計画していたんだ。9月は屋外を選ばないことは今回学んだ教訓の1つだね(笑)

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カルチャー全体を体現するブランド

WWD:変化の最中、あらためてブランドのアイデンティティーを何と定義する?

ジョルジェッティ:若さ、フレッシュさ、常識にとらわれない若さゆえの勢い、大胆さ、そして音楽と深いつながりを持ち、カルチャー全体を体現するブランドであることは変わらない。たとえば今回ショーで選んだ音楽は、ベルリン発のエレクトログループ、チックス・オン・スピード(Chicks on Speed)。僕が1990年代から夢中になっているバンドだ。以前は、「イタリア発のストリートウエアブランド」と呼ばれることが多かったけど、それは僕の認識とは違う。確かに若さというマインドは共通しているけど、「MSGM」は最初からメードインイタリーにこだわるテーラリングを核に持つブランドだ。それが支持されているからイタリアでも日本でも50〜60代の女性も着てくれているのだと思う。「シュプリーム(SUPREME)」や「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」「ナイキ(NIKE)」「アディダス(ADIDAS)」といった本物のストリートウエアブランドは今も大好きだしこの先も生き続けるだろうけど、ファッションブランド生まれのストリートウエアのブームは終わったと思う。

「今のカルチャーはスクリーンショットで消費される時代」

WWD:市場で盛り上がる“クワイエット・ラグジュアリー”の流れはどう見ている?

ジョルジェッティ:正直あんまり好きじゃない。僕にとって、“クワイエット”と“ラグジュアリー”は相反するものなんだ。“ラグジュアリー”とは、ジャクリーン・ケネディ(Jacqueline Kennedy)やジャンニ・アニェッリ(Giovanni Agnelli、※イタリアの実業家)のような昔の本当にリッチな人々が過ごしたライフスタイルのことで、そういう華やかさが好きなんだ。前回のショーの後には、「クワイエットでないショーがやっと見れたよ」と言われたよ。色使いは落ち着いても、「MSGM」らしいフレッシュな部分は失っていないから。コロナの直後はみんなで再びパーティーしようという華やかなムードが高まったけど、今はみんなグレーやキャメルばかり着ている。パーティーは終わってしまったね。ミラノの人々もブルージーンズにTシャツに、テーラリングジャケットといったすごくコンサバティブなファッションになった。今はライフスタイル全般のクオリティーに投資する時期なのだと思う。

WWD:私たちが直面している気候危機も過度な消費を避ける消費者のマインド変化に影響していると思う。この課題に対して思うことは?

ジョルジェッティ:オーガニックコットンやリサイクル認証素材を使ったカプセルコレクションにトライした。パッケージやハンガーなどの資材もプラスチックフリーに変えた。だけど難しさを感じるのが正直なところだ。それでもブランドとしてもっと挑戦していきたいし、可能性を探りたい。「プラダ(PRADA)」はブランドとして尊敬しているだけでなく、この課題に対して力強くアクションしていてすごくインスピレーションを受けている。

WWD:カルチャーを体現するブランドとして、今のカルチャーシーンをどう見ている?

ジョルジェッティ:全てが一瞬で消費されるスクリーンショットの時代だ。音楽で言えば、昔はアルバムで聴くことが多かったけど、今はSpotifyで1つの曲だけ聞くことができる。1曲、1作品、1エピソード。ファッションも同じように、何か強い1つの商品やコンテンツが求められる。「MSGM」はそうした流れの中でも、ハッピーなモーメントを共有するブランドでありたい。

WWD:具体的にどうブランドコミュニティーを広げる?

ジョルジェッティ:「MSGM」は“服”というよりも、“人”のブランドでありたい。今はみんなKOLに夢中だけど、僕は2秒後には違うブランドの服を着ている人よりも、たとえフォロワーが少なくても「MSGM」を本当に愛してくれるリアルなファンとコミュニティーを築きたい。新しい才能を発掘することにも注力したい。若きアーティストや建築家、シンガー、俳優、いろんなジャンルから真につながれる人たちと一緒にブランドを成長させていくのが僕の目標だ。

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