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「イケア」社長が消費者とつくる市場主導型ビジネスを語る オムニリテーラーの存在感を発揮

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スウェーデン発「イケア(IKEA)」は今年、創業80周年を迎えた。“より快適な毎日を、より多くの方々に”というビジョンを掲げ、現在62カ国で460店舗を展開している。日本では、2017年に自社ECをスタート、コロナ禍には東京都心に3店舗をオープンし、“おうち時間”を追い風に業績を伸ばしてきた。ペトラ・ファーレ=イケア・ジャパン社長兼チーフ・サステナビリティ・オフィサー(CSO)に商況や戦略について聞いた。

WWD:創業80周年を迎えたが、創業以来変わらない企業哲学とは?

ペトラ・ファーレ社長兼CSO(以下、ファーレ):ビジネスアイデアを生活に見出し、ソリューションを提供するというビジョンは変わらない。これからも誇りを持って、優れたデザイン、品質、機能性、低価格、サステナブルという5つの要素で構成するデモクラティックデザインを提供し続ける。

WWD:ECをスタートしたり、都心出店を加速したりしているが、現在の日本市場の課題は?

ファーレ:消費者の働く場所やショッピングする場所の拡大に応じて、われわれがどれだけ身近でいられるかという点。消費者が、家での暮らしをより良くするために、どのようにショッピングをするかを知り、ソリューションを提供することが大切だ。物価上昇で財布の紐が硬くなっている中、どれだけ“お得”に、“お手頃”により良い暮らしの実現をサポートできるかがチャレンジだ。

WWD:コロナ前後の商況は?コロナがビジネスに与えた影響は?

ファーレ:われわれのビジネスアイデアは、人々の暮らし。だから、家で起こる全ての変化がわれわれのビジネスにポジティブに働く。コロナ前にはオムニチャネル化が加速した。コロナ禍では、在宅勤務でECが高伸長。コロナが落ち着いてからは、家の大切さを重視する消費者が増加した。消費者にとって良いことは、私たちにとっても良いこと。コロナはわれわれのビジネスに素晴らしい影響を与えた。

都市型店舗開発をリードする日本

WWD:原宿、渋谷、新宿と至近距離で都市型店舗を出店したが、それらの差別化は?

ファーレ:原宿店は2階、新宿店は4階、渋谷店は7階とわれわれにとっては、それぞれ違う店舗。消費者の声を参考に、空間のレイアウトやフードを含む商品展開など、組み替えが必要か探求していく。グローバルに変わり日本法人が都心出店を担ってきたのを誇りに思っている。従来の「イケア」のやり方ではない都心出店を東京でできることを嬉しく思う。

WWD:都心型店舗は、日本以外にもあるか?

ファーレ:スウェーデンのストックホルムやフランス・パリ、スペイン・バルセロナ、香港などに都市型店舗があるが、店舗が至近距離にあるのは東京だけ。本社から見込まれて、日本が都市型店舗開発を世界的にリードしている。日本は、トレンドが生まれ、ポテンシャルが高い市場。コロナで消費行動が変化して、本社主導ではなく、各市場が消費者と一緒に店舗をつくりあげる時代だと考える。

WWD:都市型各店舗の商況及び客層は?

ファーレ:3店舗ともコロナ禍にオープンしたが、ビジネスは好調だ。コロナ禍では店頭は静かだったが、今は混み合っている。原宿は竹下通りで見られる若い客層や家族が多く、新宿は近くに大学があるので、学生や働いている人、周辺の住民など。渋谷は、あらゆるタイプの消費者が来店する。

消費者と作りあげるオムニチャネルビジネス

WWD:今後の日本における戦略は?

ファーレ:オムニチャネルを強みとするリテーラーとして、人々の家の暮らしのパートナーであり続ける。より手頃に、より快適な家をつくることは良い人生につながるはずだ。イケアの企業文化はボトムアップ。都心店の出店も本社ではなく日本主導で進めたし、福岡・天神のポップアップショップも、現地スタッフから働きかけがあった。また、われわれのビジネスは市場主導なので、消費者のニーズに合わせて、ビジネス展開を考える。日本のポップアップ文化はユニークで素晴らしく、それから学ぶことは多い。10月に、京都で6カ月間のポップアップをスタートする。商品に関しては、「イケア」のロゴバッグやTシャツなどは、日本でスタートしたものだ。小売ビジネスは、郊外店、都心店、ポップアップショップ、ECなどあらゆるチャネルを通して、消費者とつくるものだと考える。

WWD:郊外店、都心店、ECの売り上げ比率は?

ファーレ:コロナ禍3年で消費行動が変わり、EC比率が飛躍的に伸びた。グローバルのEC比率は25%で、日本もほぼ同じだ。各チャネルの売り上げの比率というよりは、われわれのビジネスがオムニであり消費者にとってシームレスなショッピング体験を提供することが重要だと考える。

WWD:競合企業は?それらとどのように戦うか?

ファーレ:あらゆる物価が上昇している状況だが、他のリテーラーと共に、家に投資することでより良い暮らしができることを強調していきたい。われわれが向き合わなければいけないのは、消費者の時間とお財布。さまざまな収納の提案など、消費者に積極的に働きかけることが大切だと考える。消費者に、「イケア」は投資する価値があるブランドだと思ってもらいたい。

人と環境に優しいデモクラティックな企業

WWD:サステナビリティの取り組みについては?

ファーレ:われわれは、人と地球のことを思いながら企業運営をしている。サステナビリティに関しては語ることが数多くあるが、3つに絞って説明する。第一に、二酸化炭素排出を減らすこと。2025年までには100%ゼロエミッション配送を達成するつもりだ。そのため、今秋には配送用にEVトラック17台を追加で導入し、年内に25%削減する。2つ目は、消費者のサステナブルな生活をサポートすること。節水をはじめ、ゴミの分類がしやすい商品の提案、LEDによる電気料の削減など。3つ目は、われわれの全商品にサステナビリティのストーリーがあること。また、日本はジェンダーギャップ指数が146中125位だが、公平でインクルーシブな社会を目指し、イケア・ジャパンでは、男女管理職の比率は50%ずつを実現している。

WWD:原材料アップで価格改定をせざる得ない状況だが?この状況下で、どのようにデモクラティックな企業であり続けるか?

ファーレ:われわれの軸となるデモクラティックデザインに含まれる低価格は大切な価値の一つ。だが、原材料アップの影響はあり、やむをえず値上げするものもある。このような状況下で、できる限り手頃な価格を実現するためのコスト削減に投資していく。

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