ファッション

「グッチ」が初の富裕層顧客向けサロン型店舗をLAにオープン オーダーメードのコレクションやハイジュエリーを取り扱い

 「グッチ(GUCCI)」はこのほど、ラグジュアリーを追求するサロン型ショップコンセプトを採用した初の店舗「グッチ サロン(GUCCI SALON)」をアメリカ・ロサンゼルスにオープンした。場所は、数多くのファッションブランドが軒を連ねるメルローズ・プレイスとメルローズ・アベニューが交わる角の一等地。最高級の製品と技術を披露することを目的とし、約400平方メートルの空間にメンズとウィメンズのオーダーメード・コレクションをはじめ、アクセサリー、ラゲージ、インテリア、ハイジュエリーやウオッチなどをそろえる。また、「グッチ」の職人によって修復された希少なビンテージアイテムも扱う。なお、同店は予約制で、トップクラスの顧客のみが利用できる。

 蔦で覆われた外観が印象的な同店は、外側から覗かれることのないように加工された窓を配し、プライバシーに配慮した親密な空間になっている。内装を手掛けたのは、トム・フォード(Tom Ford)時代から長年「グッチ」のキャンペーンのセットを担当し、「アメリカン・サイコ(American Psycho)」や「バッファロー '66(Buffalo '66)」といった映画のセットデザインも手掛けてきたプロダクション・デザイナーのギデオン・ポンテ(Gideon Ponte)。映画界の業者から調達したものも含むアンティークとコンテンポラリーなピースで構成されたサロンは、鏡張りの柱や舞台風のカーテン、シャンデリア、赤と紫のベルベットを用いたストライプの壁とライト付きの鏡を備えた劇場風の楽屋など、古いハリウッド映画のセットを思わせるようなデザインが特徴だ。センターステージには、3月のアカデミー賞でジェシカ・チャステイン(Jessica Chastain)が着用したシルバーのクリスタルとスパンコール刺しゅうが美しいカスタムドレスなど、近年のレッドカーペットルックを展示する。

 一方、同店で扱うクチュールのような“サロン”コレクションは、1950年代の映画「サンセット大通り(Sunset Boulevard)」に登場したグロリア・スワンソン(Gloria Swanson)をイメージした着物ドレスや、クリスタルをあしらったツイードスーツ、ドラマチックなケープ、ベルベットのテーラリングなどをラインアップ。19世紀に中国で作られた漆塗りのたんすには、ダイヤモンドやエメラルド、サファイアが輝くチョーカーやカフスなどハイジュエリーがずらりと並び、オーダーメードを依頼することもできる。そのほか、エキゾチックスキンを用いた“ダイアナ”バッグやクリスタルを全面に施したテディベアバッグ、ロンドンのサヴォイホテルで働いた後にブランドを立ち上げた創業者のグッチオ・グッチ(Guccio Gucci)から着想を得たグリーンのレザー製ラゲージ一式もある。来店する顧客は、2〜4時間、もしくは終日でプライベート・アポイントメントを取ることが可能。レッドカーペット用のフィッティングを行うこともでき、近隣のロデオドライブにあるレストラン「グッチ オステリア(GUCCI OSTERIA)」の特別メニューも提供する。

 マルコ・ビッザーリ社長兼最高経営責任者(CEO)は、「『サロン』はフランス語だが、18世紀からはイタリア語の意味でも使われている。それは、メディチ家の宮廷に美への情熱を注ぐ興味深い人々が集まっていたルネサンス期のフィレンツェにさかのぼる発想。サロンは、芸術やファッションの美など、さまざまなものにおいてアイデアの実験場だった」と説明。そして、「サロンでは、コミュニティーや議論、美しいものへの共感、そして新たなトレンドやアイデアが生まれてきた。それゆえ『グッチ サロン』のコンセプトは、『グッチ』が誇るイタリアンクラフトの最も素晴らしい可能性を探求するとともにブランドとクリエイティブに交流する、私たちのコミュニティーにとっての究極の“遊び場”だ」と続ける。

 古き良きハリウッドの美学や装飾的で華美なイブニングウエアは、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)前クリエイティブ・ディレクターが描いたビジョンとも合致するが、究極にラグジュアリーな購買体験をLAで提供することはブランドのレガシーにも通じるものだ。というのも、創業者の息子であるアルド・グッチ(Aldo Gucci)は、1977年にロデオドライブにあるビバリーヒルズ店の上階に贅を尽くした製品を扱うスペース「グッチ ギャレリア(GUCCI GALLERIA)」を開設していたからだ。ビッザーリ社長兼CEOは、同スペースについて「メーンのブティックとは別の階にあり、プライベートキーでアクセスする特別な空間だった」とし、「最初のサロンをオープンすべき場所はLA以外にはない。ハリウッドが背景にあり、特にメルローズといえば何十年も前からLAのクールさを象徴する中心地だ」と話す。今後は、ニューヨーク、パリ、ミラノ、ロンドン、ドバイ、香港、上海、台北、東京の9都市に常設もしくは一時的なサロンをオープン予定。それぞれで独自のコレクションを用意する。

 こうした富裕層へのフォーカスは、「グッチ」が取り組む再建戦略の一環だ。「グッチ」は現在、ミケーレの後任であるサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)が9月のミラノ・ファッション・ウイークでのデビューに向けて準備を進めているところであり、過渡期を迎えている。しかし、2月の決算説明会で、親会社であるケリング(KERING)のフランソワ・アンリ・ピノー(François-Henri Pinault)会長兼CEOは、サロンは 「グッチ」が提案する製品の価格帯を高めるための最新の取り組みであり、昨年も平均販売価格が2ケタ増だったことを説明。「私たちは、サバトのデビューをただ待っているわけではない」と話した。

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