ファッション

「エミリー、パリへ行く」主人公エミリーの装いは最新トレンドだらけ シーズン3の着こなしを読み解く

 おしゃれ好きの間で話題なのがネットフリックス(NETFLIX)の「エミリー、パリへ行く(Emily in Paris)」です。最新のシーズン3では、リリー・コリンズ(Lily Collins)演じるエミリー・クーパー(Emily Cooper)が過去のシーズンにも増してパリでオリジナルな着こなしを披露しています。“世界で最もファッショナブルなドラマ”といわれた「セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)」で知られたパトリシア・フィールド(Patricia Field)に代わって、シーズン3ではマリリン・フィトゥシ(Marylin Fitoussi)がメーンスタイリストに就いたことから、今までとは一味違う変化が起こりそう。今のトレンドを映すエミリーの装いを読み解いていきます。

 これまでのシーズンを上回る勢いでシーズン3に目立つのは、多彩なテイストミックスです。たとえば、こちらのプールパーティー姿は、レトロ風味のギンガムチェック柄の水着がアイキャッチー。でも、羽織っているのは、花柄の着物のような薄物。タイムレスで無国籍風のカオス感がエミリーの奔放さを示しています。今回はこのようなエミリーらしい着こなしをまとめてご紹介します。

大人仕様のY2Kコーデはなつかしげでまばゆく

 主人公のエミリー・クーパーは、20代の設定だから、Z世代にギリギリ引っ掛かる年頃。着こなし方も若めで、2000年代に盛り上がった装いをよみがえらせたY2K風もお得意です。パリの街中で見るY2Kは、ベーシック好みのパリジェンヌたちの間で、いい具合に浮いて見えます。

 カフェで談笑するエミリー(写真中央)が着たのは、マルチカラーのゆる編みニットトップス。抽象画のような配色が印象的です。ボトムスはメタリックのマイクロミニで、Y2Kの原点となったLAセレブ風に仕上げています。ゆるニットは古着っぽくて、どこかレトロな雰囲気。一方、きらめきを帯びたスカートとサイハイブーツは未来的な見え具合です。“レトロ×フューチャー”のミックステイストが、型にはまらないエミリーらしさを物語るかのようです。

 グリッターなゴージャス感もY2Kルックを華やがせる演出です。2023年春夏シーズンのトレンドにもキラキラ素材やアクセサリーがカムバック。エミリーは、メタリックなつやめきを帯びたジャケットをまとっています。端正なテーラリングのクラシックなジャケットに、ひねりを加えるうえで、ブリンブリン(きらきらに光輝く)なディテールは効果的。Y2Kを大人っぽくクールにまとう際に役立つアレンジです。

“柄ミックス”コーデは肌見せや袖まくりが鍵

 エミリーの装いに特徴的なのは、適度にチグハグな雰囲気です。全体をきれいにまとめすぎないで、ほどほどにバランスを崩すスタイリング。異なるモチーフ同士を、やや強引に引き合わせる“柄ミックス”もエミリー流コーディネートの得意技です。

 黒と白のモノトーンでまとめたエミリー(右から2人目)ですが、程よいずれ感が出ているのは、上下で柄が異なるから。クロップド丈のニットトップスは格子が大きなウィンドーペン柄。一方、ハイウエスト気味のスカートは千鳥格子(ハウンドトゥース)です。大きなくくりでは同じチェック柄ですが、モチーフの寸法も形もずれていて、動きが生まれています。

 柄ミックスのスタイリングにマルチカラーを取り入れると、さらに表情が深くなります。ポジティブな気分をまといたくなるこの春夏のおしゃれマインドにもマッチしたコーデです。エミリー(写真左)はボーダー柄Tシャツの上から、マルチカラーのチェック柄ジャケットを着て、入り組んだ柄ミックスのレイヤード姿に仕上げました。ネオン系の強めなカラーが響き合って、“着るダイバーシティ(多様性)”のようです。

フリルやピンクで“あざとかわいく”

 野暮ったさやダサ感を戦略的に盛り込むのは、エミリーらしさの際立つ着こなし術です。日本で言う“あざとかわいい”に似た独特の押し出し方。ぎりぎりの線を狙うきわどい感じのリスクテイクぶりがキャラクターを引き出しています。

 フリルを生かしたドラマティックな装いです。デコルテから肩口に迎えたビッグコサージュは抜群の小顔効果を発揮。ボリューミーなコントラストを使って、めりはりを際立たせました。赤とピンクのくどめな組み合わせで、濃厚な華やぎを盛り上げています。リップも濃いめのレッドで顔周りもたおやかに。妖艶なあでやかさをまとうスタイリングも、エミリーのレパートリーです。

 中世の宮廷貴婦人をイメージした、クラシカルでエレガントなテイストが復活しています。エミリーの身を包んだドレスは、お姫様ライクなムードで、フリルやドレープをふんだんに施しました。英国ヴィクトリア朝時代を思わせる襟や袖先のひだ飾りが優美な風情。全体に抽象的なぼかし花柄をあしらって、上品なロマンチックを薫らせました。背中側に長く垂れたスーパーロングのトレーンが立体感を強めています。

ランジェリーとボディコンで艶っぽくヘルシーに

 自分の体を肯定する「ボディー・ポジティブ」が昨年からのトレンドキーワード。ランジェリーを街着として着たり、ぴったりとした服でボディーラインを際立たせたりするのが旬な装いに。ほのかにセンシュアル(官能的)を醸し出しつつ、健やかでフェミニンに見せるのが“新・ボディコンシャス”のポイントです。

 ランジェリーの街着使いはセクシー感が強く出すぎるところがありますが、今のさじ加減は“控えめセクシー”。むしろ健康的なイメージを押し出すテイストが本命です。エミリーはギンガムチェックのブラトップの上から、オパール加工のジャケットを重ねて、見え具合をセーブ。色も黒と白にまとめて、過剰なセクシー感を封じ込めました。

 体の線に沿うボディーコンシャスの装いがリバイバルしつつあります。昔との違いは、異性の視線を求めないプラウドなスタンス。凜々しくストイックなボディースーツは、“新・ボディーコンシャス”の象徴的なアイテムです。エミリーはかつての歌姫・マドンナ(Madonna)を思い起こさせるような宇宙服風のボディースーツを着用。首から下はほとんど肌を隠しているのに、体の各パーツを強調したデザインが目を引く仕掛けです。

 エミリーの装いは、大胆で前向きな彼女のパリライフを代弁しているかのよう。異素材ミックスや肌見せ、ボリューミーなコントラスト、ランジェリー、ボディコンなど、今のトレンドが凝縮されていて、登場するたびにおしゃれ心を刺激してくれそうです。海外ドラマではこうしたファッション面での工夫がしっかり加えられているから、“物言わぬ裏・主人公”のような役割を果たしていて、ドラマの大事な見どころにもなっているのではないでしょうか。

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