ファッション

ウィメンズスニーカーのヒット請負人! 「エミ」に聞く“バズる別注”のヒケツ

 近年のスニーカーブームで、働く女性の足元にスニーカーは当たり前になった。「#KuToo」運動など社会機運の追い風もあり、窮屈なパンプスからスニーカーに履き変える女性はますます増えている。

 そのような流れの中、2015年の発足当初から“女性のスニーカー通勤の定着”を掲げてきたのがマッシュスタイルラボの「エミ(EMMI)」だ。ファッションビルを主販路にヨガやアウトドアテイストのアパレルをスニーカーとのスタイリングで提案し、スニーカー特化型業態の「スニーカーズ バイ エミ」も展開。ブランドの売り上げ全体においても、スニーカー(主に買い付け、一部オリジナル商品)がけん引している。

 毎シーズンのスニーカーのラインアップにおいて、別注商品が5〜10型を占める点も特徴だ。スポーティーなスニーカーを、ほどよくトレンドを取り入れたシティライクなデザインに仕上げている。「男性はレアスニーカーに夢中になることが多いけれど、女性が『欲しい』と思うポイントはもっと多様できめ細かい」と話すのは木下沙理菜マッシュスタイルラボ企画部「エミ」デザイナー。「手に取って初めて気が付くようなさりげないデザインや、コーディネートをしっかりイメージできるバランスも重要視しています」。

 別注商品のヒット実績を積み重ねてきたことで、「メーカーが新作スニーカーをウィメンズ市場でバズらせたいと考える際、まず先にウチへ(別注の)相談をいただくことが増えた」と語る。ウィメンズスニーカーのヒット請負人として存在感を高める「エミ」が考える、女性に支持されるスニーカーの条件とは。木下デザイナーに聞いた。

WWD:スニーカー提案を重視してきた理由は。

木下沙理菜マッシュスタイルラボ企画部「エミ」デザイナー(以下、木下):マッシュグループは近年、1週間の真ん中で疲れがたまりがちな水曜日を「ウェルネスウェンズデー」と呼び、「女性が美容と健康を楽しむ日」としてさまざまなプロモーションを行ってきました。その取り組みの一環として「エミ」は、ヒールで疲れた女性の足元を癒すというコンセプトで、通勤におけるスニーカー提案を主軸としたブランドとして発足しました。ただ当時は、スポーツメーカーのスニーカーを取り入れたコーディネートは男性には浸透しつつあったものの、女性の間では、ワンピースやスカートにはパンプスやフラットシューズを合わせるのがまだまだ当たり前でした。そのような状況を変えるべく、女性が本当にほしいと思える別注スニーカーを積極的に企画するとともに、大人の女性が真似したいと思えるようなスニーカースタイリングを、アパレルとトータルで提案してきました。

WWD:「エミ」でスニーカーが売れ行きがいい理由をどう分析する?

木下:周りのショップの一歩先をいくラインアップには自信があります。スニーカーにおいては、メンズのトレンドをウィメンズが追従することが多いので、買い付け担当には男性社員もいます。「ロエベ(LOEWE)」とのコラボで人気に火がついてる「オン(ON)」も、ウィメンズショップでは「エミ」が他に先がけて取り扱いを始めました。豊富なラインアップを強調するため壁面にずらりとスニーカーを並べている店舗もあり、スニーカー好きの男性の興味を引いて入店されるカップルも多いです。私が店舗スタッフをしていたときも、彼氏が彼女に「これはイケてる」「買った方がいいよ」と勧め、成約に至るケースも多く目にしてきました。展示会では、男性の雑誌編集者や取引先の営業担当からは、「大きいサイズがあったら欲しかったのに!」と残念がる声がよく聞かれます(笑)。

WWD:これまでにどんな別注のヒット商品が生まれた?

木下:昨年秋、ある世界的なスポーツメーカーがネクストブレイクとして期待をかけていたモデルを発売したのですが、蓋を開けてみたら商品の販売が芳しくありませんでした。そんな中、「エミ」の別注モデルは発売から2週間で2500足以上売れるなど絶好調だったんです。メーカー側がうちの売れ行きの進捗を見て、「こんな店は世界のどこにもない」と仰天していました(笑)。そのほかにもオールベージュで別注した「コンバース(CONVERSE)」の“オールスター100”(1万1000円、19-20年秋冬)や「キーン(KEEN)」の定番サンダル“ユニーク”(1万3200円)は、いずれも数日で品薄もしくは完売になるなど、ご好評をいただきました。

WWD:別注スニーカーの企画のキモは?

木下:まず大事なのはファーストインプレッション。スポーツメーカーのスニーカーは、女性が気軽に日常のファッションの中に取り入れるには少々スポーティーすぎるものが多いなと感じます。近未来的なパキッとした配色ではなく、トーナル(同系統の配色)で洗練された雰囲気に仕上げています。

 女性のお客さまは手にとった後も、ディテールまでまじまじと見られます。そのためデザイン面では、光沢をつけるにしてもギラギラとした輝きではなくサテンっぽい華やかなつやめきだったり、一部をスエード素材で切り替えてみたりといった、繊細なこだわりを大切にしています。「このバランスなら、靴ひもはコットンじゃなくてポリエステルがいいよね」というような、理屈ではなく直感から生まれるチョイスも、女性のお客さまには「かわいい」と共感いただけるポイントだと考えています。

WWD:トータルスタイリングではどう提案する?

木下:スニーカーそのものの出来栄えだけでなく、「体の線がきれいに見えるか」「コーディネートにすんなりなじむか」といった点も重要。パンプスを履いたときのように背筋がしゃんと見えるよう、ヒールは高めに設計することが多いです。別注スニーカーの企画は、同じシーズンに販売するアパレルの1年以上前からスタートするものもあります。ですから、別注スニーカーと配色をリンクさせたアパレルも企画しています。別注スニーカーとアパレルでトータルスタイリングした店頭のVMDやビジュアルの訴求がうまく行くと、セット買いが顕著に増えます。スニーカー単体で見たときにはない、「これかわいい!」という化学反応が起こるんでしょうね。

WWD:今後の展望は?

木下:「エミ」のお客さまはスニーカーを取り入れたコーディネートを自由に楽しんでいて、スニーカーの民主化という一つのゴールは達成できたと思っています。これからはもっと視野を高く持ち、「エミ」発のブームや社会現象を作り出せたらと考えています。

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