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廃棄イチゴで染めた織物 兵庫県・播州産地のサステナブルな取り組み

 織物の産地として知られる播州(兵庫県西脇市を中心とした地域)で、廃棄イチゴなどを活用したモノ作りプロジェクトが進んでいる。仕掛けるのは桑村繊維(兵庫県多可郡多可町、桑村達郎社長)で先染織物のコーディネーターを務める松原俊介氏だ。地元のイチゴ農家と協業し、廃棄イチゴで染めた生地を開発。7月1日からクラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で開発資金の調達とファン作りに挑戦している。

 播州は先染めの綿織物を得意とし、国産織物における国内シェアはおよそ58%(2018年度)。シャツやブラウスなどに用いられ、海外のハイブランドからの評価も高い。ただ、ピーク時の1987年に比べ、近年の生産量は10分の1にまで落ち込む。安価な海外製に押され、後継者不足やアパレル不振などもあいまって衰退の危機に直面する。

 「産地では分業制でモノ作りをしているため、一つのパートが廃業すれば、全体に影響が出る。時代が激変する今、先行きが見えないのが現状」と松原氏は話す。播州で生まれ育った松原氏にとって、歴史のある播州織を守り、後世に残していきたいという思いは強い。

 そこで2020年5月に立ち上げたのが「PLOW COLORSプロジェクト」である。野菜や果物などの染料で天然繊維を染めて製品化し、オリジナル商品として展開する。第1弾が地元の篠田いちご園から無償提供された廃棄イチゴの活用だった。

「キズがあり、流通ルートには乗らないイチゴが毎年500kg以上ある。コロナ禍でイチゴ狩りができなくなり、例年よりその量が増えているが、廃棄コストがかかり、農家の負担になっていた」(松原氏)

 植物の染料で染める場合、色の濃度の調整が難しい。イチゴも従来のやり方ではうまく染まらなかった。染料の作り方を変えながら何度もやり直した。独自の染色方法にたどり着くまで約半年。既存の染工場で安定的に生産でき、色むらも少なく、安全な堅牢度を保てるノウハウを生み出した。

 糸を染色した後は、最少限の水で洗い加工を行い、天日干しする。整経工程で糊を使わないことで糊抜き剤が不要になり、糸のしなやかさを残すことができた。糸はGOTS認証(オーガニックテキスタイルの世界認証)付きのインド産オーガニックコットンを使用した。すでにイチゴと相性のいいシルク地でも実証済みだ。

 現在、目標金額100万円の達成をめざし、クラウドファンディングに挑戦中。「同じ危機感を抱いているモノ作りの人たちと、音声SNSのクラブハウスで出会い、感化されたのがクラファンにチャレンジするきっかけになった」と松原氏。目標達成できなければ、プロジェクトは成立しないため、未経験の広報活動にも奔走中だ。

 リターン品としては、ドット柄や迷彩柄、ペイズリー柄のイチゴ染めジャカード生地とデニム生地を50センチ1100円から提供するほか、オリジナルデザインのシャツや帽子、オールインワンも用意。20万円以上の支援で、オリジナル柄のジャカード生地製作にも対応する。

 廃棄イチゴに続く取り組みとして、兵庫県産の山田錦(酒米で知られるコメ)のもみ殻とぶどうの染料づくりにも成功している。耕作休耕地を活用した綿花栽培も今後も計画している。「第2、第3弾につなげるために、クラファンでの消費者の声をモノ作りに生かしていきたい。ゆくゆくは先染ならではのチェック柄やストライプ柄も作る予定」と、松原氏は意欲を燃やす。

 コロナ禍で大打撃を受けたファッション業界は、モノ作りの考え方から仕組みまで根本的に変えざるをえない大転換期にある。そんななか、松原氏はこれまでアパレルや商社との取引に頼ってきた産地に変革を起こそうとしている。生産者と消費者を直接つなぐことで繊維産地に新たな産業を創出できるのではと期待する。廃棄イチゴ染めはその第一歩。成功すれば、疲弊する全国の産地にとっても活性化のヒントになるだろう。

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