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「ブルガリ」が女性科学者の声や貢献に着目 ウェビナーを開催

 LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)傘下のブルガリ(BVLGARI)は19日、新型コロナの研究をはじめとする科学の場における女性に焦点を当てるウェビナーを開催した。

 イベントでは英国のオクスフォード大学や米国のロックフェラー大学から科学者や教授ら5人を招待して、科学界での女性の声や貢献、ブルガリのこれまでの病理学に関する支援といったトピックに加えて、企業の社会責任や本業を超えた取り組みの必要性について語った。ブルガリからは、ジャン・クリストフ・ババン(Jean Christophe Babin)=ブルガリグループ最高経営責任者(CEO)が登壇し、フェアチャイルド ファッション メディア(Fairchild Fashion Media)のアマンダ・スミス(Amanda Smith)=プレジデントが司会を務めた。

 参加者の一人であるオクスフォード大学ジェンナー研究所のケイティ・エワー(Katie Ewer)准教授兼シニア免疫学者は、英製薬会社アストラゼネカ(ASTRAZENECA)と共同開発したワクチンの研究チームの一員だ。ブルガリは同研究に必要とされる機器を購入するための資金援助を行った。今回のワクチン開発への貢献だけでなく、エワー准教授はマラリアやエボラ出血熱の研究など広範に業績を残している。しかしたびたび研究とは関係のない質問を受けることがあるという。自身の体験を振り返り「女性が科学の場にいることについてよく不思議がられる。多くの女性が活躍しているが、要職に就くことが難しいので、実際よりも少ないと思われてしまっている」と語った。

 エワー准教授は、「オクスフォードでは年功序列ではなく、そのときの最適な人材を採用することが人事の基盤としてある。女性の声を取り入れる仕組みがあり、科学の世界におけるジェンダーの見え方だけでなく、全体のジェンダーバランスを保つよう取り組んでいる。女性が科学の世界でより困難を強いられるのは、学界全体に蔓延する家父長的な慣習のためだ。少しずつ改善されているが、それでもとても遅い。2021年にもなって“女性科学者”であることがどのようなものか尋ねられた時はがっかりした」と述べた。

 新型コロナウイルスのパンデミック下で女性の活躍する場が減少したと言及したのは、専門家チームの中で免疫や新型コロナについて研究を重ねるレスリー・ヴォスホール(Leslie Vosshall)教授だ。「コロナ以前に女性の地位は大きく向上していたが、パンデミックでなくなってしまった。ウイルス学者には多くの女性の専門家がいる。女性同士で群れる傾向にあり、互いに機会を与え合う。人間性を具体化するためには、もっと意識的な努力が必要だと思う」と語った。

 また新型コロナで変化する労働環境についてヴォスホール教授は、「科学の現場での仕事は、ノートパソコン一つでできるようなものではない。また世話が必要な幼児がいる場合でも、その子らを研究室に連れて行くのもとても危険だ。少なくとも一年は、女性の活躍を後退させることとなる」とコメント。在宅勤務がすすむ中で、女性の科学者が直面する厳しい労働条件について述べた。

 ブルガリはビューティ製造事業をハンドサニタイザーの制作に切り替えるなど、ラグジュアリーブランドとして早い段階からコロナ対策への支援を行なっていた。ほかにも、イギリスのオックスフォード大学ジェンナー研究所で女性のための教育プログラムの設立や、イタリアのラザロ・スパランツァーニ国立感染症研究所に3D顕微鏡を提供している。20年6月には、ウイルス研究の資金援助を目的としたブルガリ ウイルスフリーファンド(Bvlgari Virus Free Fund)を設立した。

 新型コロナウイルスの危機的状況下で何か行動を起こすことは、ブルガリの持つサステナビリティへの広い見解とも結びついているという。ブルガリグループおよびLVMHのイタリアブランドのエレオノーラ・リズート(Eleonora Rizzuto)倫理問題およびコンプライアンス部門兼社会的責任責任者は、「個人間でサステナビリティが定着するためには、公的な仕組みとのつながりがもっと必要だ。私たちは今世界全体でコロナに立ち向かっている。それに対して、現状を打破する科学に必要な最高の人材、つまり女性を支援する準備を2週間で整えた」と述べた。

 ババンCEOは「女性がこれまで距離を感じていた社会に対してもっと大胆になることを願っており、男性が中心となっている世界にどんどん踏み込んで欲しい。女性の役割は増えており、その支援をできることを誇りに思う」と語った。

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