ファッション

ワコールのアバター接客体験リポート 本音トークでより深いカウンセリングが可能に

 ワコールは、アバターを活用した新しい接客システム「アバカウンセリング パルレ(以下、パルレ)」を10月末、東京の「3Dスマート&トライ」東急プラザ表参道原宿店に導入した。2019年に同社がスタートした「3D スマート&トライ」とは、3Dボディースキャナーで約5秒でバストをはじめ全身18カ所を計測し、AIを用いて最適な下着を提案するサービスで、現在日本国内の14店舗で提供されており年内に数店舗に導入予定だ。「対面接客は苦手」という消費者や体のメンテナンスへの意識が高い20〜30代を中心に、今年の10月末までに約3万人が計測した。「3Dスマート&トライ」の店舗ではカウンセリングルームを設けて予約制でサービスを提供していたが、新型コロナ感染拡大で現在は行っていない。その代わりに登場したのがアバター接客「パルレ」だ。「パルレ」とはどのようなサービスか、ここでリポートする。

 店舗に到着するとカウンセリングルームに案内される。スクリーン上に2人のアバターが登場。ショートヘアの進藤みなみさんか、セミロングヘアの明石舞さん、どちらかを選ぶ。まず、アバターによるカウンセリングがあり、奥の3Dボディスキャナーで計測後、アバターがおすすめのインナーやアドバイスをしてくれるという流れだ。カウンセリングにかかる時間は約1時間。アバターの進藤さんを選び、カウンセリングをスタートした。アバターはお辞儀をしたり、自然な仕草や目線で想像以上にリアルだ。下着に関する悩みや理想のバスト、好みのつけ心地について聞かれた。自分の体に関することなので対面だとどうしても控えめになりがちだが、相手がアバターなのでざっくばらんに話せる。

計測結果やおすすめ商品を丁寧に解説

 3Dボディースキャナーの計測方法の説明があり、セルフで計測が終わるとタブレットに必要情報を入力して登録、そうすると計測データを見ることができる。自分自身の体型を360度客観的に見るのは初めてという人も多いだろう。私自身、想像以上にお尻が下がっていてがっかり。進藤さんは「皆さん、お尻や下腹の話をされます」と言う。このデータをアバターの進藤さんと共有することで、体型の特徴や体型に合う下着選びのポイントを説明してくれる。計測結果のパーソナルシートをはじめ、タブレットでA Iによる商品の提案からお気に入りを選びプリントアウトすることもできる。進藤さんはカウンセリングと計測結果から、「すっきり3/4カップのブラジャーがおすすめです。後ろの棚にサンプルが幾つかあるので、実際商品に触って見てください」と言う。カウンセリングルーム内にある棚からサンプルを取り出して、実際触りながらその商品の特徴について進藤さんが説明してくれる。気に入った商品の在庫が店舗にあれば、購入可能だ。店舗スタッフに頼めば、試着も可能。また、即決しなくてもお気に入りアイテム情報をプリントアウトして、後にワコールウェブストアやショップで購入してもO Kとフレキシブルだ。カウンセリングが終了すると進藤さんは、うやうやしくお辞儀をして、さようならと手を振ってくれた。対面のストレスもなく、可愛らしいアバターとおしゃべりしながら楽しく下着選びができる「パルレ」。しかも、そこで購入しなくてもいいという自由度も魅力だ。カウンセリングルームへの案内以外は、対面接客はなく、全てセルフで完結するコロナ時代にはぴったりのサービスといえる。だが、「パルレ」はコロナ対策ではなく、別の目的から開発されたサービスなのだ。

消費者、販売員どちらにとっても画期的なシステム

 「パルレ」の着想は2019年秋。下着についての相談は抵抗があると人も多い。だが、アバターだったら、相手の顔色を伺うことなくより深いカウンセリングができるのではという理由から。今年に入って、ワコールが持つビューティーアドバイザー(BA)の接客技術とソーシャルデザイン企業のヒーローズのアバターコミュニケーション技術である“アヴァ・トーク(Ava Talk)”を融合させて開発を進めた。ワコールは、システム開発企業のテックファームにシステム開発および運用に関する技術支援を受けている。

 アバターとBAの融合はどのように行われているのだろうか。PCのカメラがBAの動きを感知しアバターに反映。まばたきは連動しているので、とても自然な反応だ。BAがお辞儀をしたり手を振ればアバターも同じ動きをするという仕組みになっている。BAにとっても仕事とはいえ、1時間対面カウンセリングをするのはプレッシャーだという。しかし、アバターを介せばBAも消費者もお互い楽に、悩みや感情の共有ができる。

 また、このシステムは、“接客員は店頭に立たないと仕事ができない”という概念を覆すものでもある。ワコールでは、将来的にこのシステムを活用することで、B Aのリモートワーク環境を実現し、自宅からでも接客できる新しい働き方の創造を目指している。コスト削減や効率化ではなく、消費者もBAも両方ハッピーになれるシステム「パルレ」。これからのアバター接客の大きな布石になりそうだ。

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