ビューティ

メイクアップの歴史に特化した博物館がマンハッタンに開業 海外ビューティ通信ニューヨーク編

 世界に目を向けると日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで、連載「海外ビューティ通信」では、パリやニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。(本文中の円換算レート:1ドル=105円)

 メイクアップに特化した世界初の“メイクアップ博物館(MAKEUP MUSEUM)”が、9月1日にニューヨークのミートパッキング地区にオープンした。化粧の歴史とそれが社会でどのような役割を果たしてきたのかを展示している。当初は5月にオープンする予定だったがコロナ禍で延期となっていた。

 共同設立者はビューティデータ会社を創設し経営するドリーン・ブロック(Doreen Bloch)、美容マーケティングを専門とするケイトリン・コリンズ(Caitlin Collins)、そして著名メイクアップアーティストのレイチェル・グッドウィン(Rachel Goodwin)の3人だ。同博物館長であるブロック共同創設者は「このような危機の中でもビューティと芸術、文化はなお人々にとって非常に大切なものです。ビューティに捧げる文化的施設を開館できることをうれしく思います」と語り、コリンズ共同創始者も「この数カ月間、多くの支援の言葉をもらいました。博物館を開けるための情熱とクリエイティビティー、喜びは決して途絶えることがありませんでした」と述べる。

 スポンサーにはアーノラズロ(ERNO LASZLO)社、コンエア社(CONAIR)、アルコン(ALCON)社、ジボダン(GIVAUDAN)社が名を連ねる。現在、コロナ対策のために時間制限を設け、入館人数を収容可能人数の16%に抑えて運営している。チケット(40ドル=約4200円)は事前にオンラインで購入でき、入館時には検温と常時マスク着用が求められる。

 同館初の特別展は「ピンク・ジャングル:アメリカの1950年代のメイクアップ(PINK JUNGLE 1959s Makeup in America)」と題して、50年代の化粧品や香水の数々やロシアからの移民としてハリウッドで活躍したメイクアップアーティストのマックス・ファクター(Max Factor)のメイクアップルームも再現している。そして当時のアイコンであるマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)やグレタ・ガルボ(Greta Garbo)、ジャクリーヌ・ケネディ(Jacqueline Kennedy)が愛用したアーノラズロ(Erno Laszlo)博士によるスキンケア製品や肌診断のメソッドも見どころだ。

 エルジン(ELGIN)社製の小鳥の形をした手首につけられるコンパクトは、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)のデザインによるものという稀少な品だ。またブラック層をターゲットにした雑誌「エボニー(EBONY)」(1945年創刊)と「ジェット(JET)」(1951年創刊)のコピーが常設展示してあり、メインストリームの雑誌では見えにくいブラック層のメイクアップの歴史を辿ることができる。そのほか細眉とリップライナー、光と影を駆使して立体感を出すコントゥアリングを広め、革新的なメイクテグ額で90年代に一斉を風靡したメイクアップアーティスト、故ケヴィン・オークイン(Kevyn Aucoin)の日記も7冊が展示してあり、夭逝した彼の内面が窺い知れて興味深い。

 館内にはセルフィーにぴったりの色別にわけられた一角があり、ギフトや化粧品の販売コーナーも設けている。またメイクアップの歴史や展示物をインタラクティブに検索できるアプリも用意されている。とても興味深く一見の価値がある博物館だ。

黒部エリ(くろべ・えり)/ライター:東京都出身。雑誌ライター、ジュニア小説家を経て1994年からニューヨーク在住。ニューヨークのトレンドやビューティ情報を女性誌などで発信している。著書に「生にゅー 生のニューヨーク通信」(文藝春秋社) ブログ「黒部エリぞうのNY通信」

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

ファッション&ビューティメディア大特集 一緒に働く人も目指す人も必読!

11月29日発売の「WWDJAPAN」は、毎年恒例のメディア特集です。今週号には10社、14媒体、そして総勢32人の個性豊かな編集者が登場します。特集は、コロナ禍で編集長に就任&復帰した「25ans」と「MEN’S EX」そして「ハニカム(HONEYEE.COM)」編集長の座談会からスタート。「おめでとう」より「大変だね」と言われることが多かった編集長は、コロナが背中を押したかもしれない新事業への…

詳細/購入はこちら