ビジネス
連載 元FR上席執行役員の心に火をつけた“トーチング”

悩みのどん底にいたチームの奇跡が始まる 元ファストリ上席執行役員の心に火をつけた“トーチング”回顧録Vol.4

 ファーストリテイリンググループで社内改革を推進する「有明プロジェクト」をけん引し、史上最年少で上席執行役員に昇格した神保拓也はこのほど、人の「心に火をつける。」ことを目指し、株式会社トーチリレーを設立した。まず取り組む同社の主たる事業は、「心に火をつけることを主題に置きつつも、ティーチングやコーチングとは一線を画す」という「トーチング」。山に登るためのトーチ、登る山を見つけるためのトーチを提供する。ただ、その料金はタダだ。神保はなぜ、タダで「トーチング」を始めたのか?人の心に火が付くことで起こった、ファーストリテイリング時代の「ユニクロ(UNIQLO)」の「奇跡」をたどり、「トーチング」の魅力を考える(「トーチング」のビジネスモデルは、コチラから)。

(前回からの続き)

 店長とスーパーバイザー(以下、SV)、そしてスタッフ。それぞれが、それぞれのトーチングでのやり取りを知り、それぞれに悩みがあることを学ぶと、「最高のメンバー」は「最高のチーム」になって奇跡を起こした。

 奇跡の第一歩は、連続した「低評価」からの脱却。神保“隊長”が定期的に訪問・サポートしたロードサイドの「ユニクロ」は、ようやく「低評価」から1ランクアップ。しかし神保“隊長”には、「高評価」に至らなかった悔しさを滲ませたり、前面に押し出したりのメールが相次いだ。「残念ながら、目指していた評価ではなかった」ーー。その連絡について神保“隊長”は、「ビックリした。3カ月前は悩みのどん底にいたチームとは思えなかった」と振り返る。

 チームは、想像以上のペース、これまでとは全く異なるスピードで成長した。スタッフからは、「今回の結果は、SVのサポートや指導がなければ出せなかった。私たちのことを最優先に考え、行動してくださって本当に感謝している」との連絡。「本当に同じ人たちなのか?」。神保“隊長”は、ドラマが起き始めている予感を抱く。さらにスタッフは店長に対して、「挫折を味わったが、SVとの関係も大きく改善。今は戦える『チーム』になってきた」「だからこそ、早くこの店舗から異動して欲しい。もっと大きな店舗で活躍して欲しい。『20代で経営者になる』という彼の夢を叶えて欲しい。それが、部下として店長に示すことができる最大の愛」というメッセージ。互いに尊敬し合うからこそ「早く異動して欲しい」と言えるようになったチームワークを目の当たりにして、「自走が可能な組織になった」との実感を得たという。

 間もなく神保“隊長”はこのロードサイドの店舗を離れ、次の地方店舗のサポート業務をスタート。しかし、このロードサイド店の躍進は続く。

「着任当初は弱気だった店長が、勢いづいている」。

「やっぱり店長は生意気で、勢いがあって、ビッグマウスなくらいがちょうど良い」。

「店長を見て、苦労や挫折は自信になると学んだ」。

「店長から『モデル店舗に選ばれたい』という宣言があった。その思いに応えようと、一丸となって頑張っている」。

「たった1年で30数人のスタッフが、お客様と、25歳の2年生店長のために全力で、本当に全力で頑張るまでになった。『ユニクロ』が大切にする、『きれいな売り場にすること』の意味を思うと感極まる」。

「SVが売り場を見て、『皆さんの爆発力はスゴい……』との言葉をくださった。本当に嬉しい」。

「店舗運営やスタッフの統率は本当に大変。失敗と遠回りをたくさん経験したからこそ、応用力が生まれたり、何かに向かう時の力になった。25歳の店長が教えてくれた」。

「店長は『大きな店舗に異動する!』と言い張っているし、私は『早く出ていけ!!』と言っているが(笑)、残りの期間、スタッフ全員で店長からたくさん学びたい。自他ともに認めるチームワーク集団になった私たちは、必ず成果を出せる」。

 神保“隊長”が最初に店舗を訪れてから1年後。郊外のロードサイド店は単月ではあるものの、日本で一番の「ユニクロ」に選ばれた。ごくごく標準サイズの店舗はこの時、世界でもベスト10にランクイン。標準サイズの店舗でTOP10に選ばれたのは、このロードサイド店だけだった。神保“隊長”には、またまたスタッフから連絡が届いた。「どん底も経験したが、誰も『私たちなんて……』とは言わず、ひたすらに頑張って明るくやってきた」「本当に山あり、谷あり。心から泣いて、笑って。その繰り返しで、私たちはたくさんの出来事をパワーに変えてきた。それが私たちの誇りです」。

 そして、奇跡は終わらなかった。(次回に続く)


お知らせ:申し込み殺到中という神保“隊長”のトーチングを受けてみませんか?「WWD JAPAN.com」は取材させていただくことを条件(企業名や個人名は匿名でも構いません)に、トーチングを受けたいファッション&ビューティ業界の皆さまを募集します。トーチリレーの業務には、アナタの登る山を見つけたり山への登り方を一緒に考えたりするトーチングと、神保“隊長”の経験を語るグループ向けのセッションがあります。どちらでも構いません。ご興味がある方は、コチラまで簡単な自己紹介をお送りください。神保“隊長”と相談の上、ご返信差し上げます(お送りいただく情報は取材後、速やかに破棄します)。


最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2024-25年秋冬パリコレ特集 デザイナーたちからの提案「何気ない日常を特別に」

3月18日発売号の「WWDJAPAN」は、2024-25年秋冬パリコレクション特集です。2月末から3月にかけて約100ブランドが参加して開催されたパリコレを現地取材し、その中で捉えた次なる時代のムード、デザイナーの視点をまとめました。ファッションデザイナーたちから届いた大きなメッセージは「何気ない日常を特別に」。戦争、物価高騰、SNS疲れと私たちを取り巻くストレスはたくさんありますが、こんな時代だ…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。

メルマガ会員の登録が完了しました。