近藤広幸マッシュホールディングス社長
ファッションECサイト「グレイル(GRL)」で、「スナイデル(SNIDEL)」などの模倣品を販売したとして、運営するアートデコの親会社、Gio(ジオ)の塚原大輝・社長(36)と商品企画リーダーの遠藤綾(29)の2人が6月30日、不正競争防止法違反(形態模倣)容疑で大阪府西警察署に逮捕された。ジオとアートデコ、そして塚原社長を刑事告訴していたマッシュスタイルラボの言い分が認められた形だ。今回の事件の経緯と、業界に対する問題提起などについて、近藤広幸マッシュホールディングス社長に聞いた。
WWDジャパン(以下、WWD):今回の事件の経緯は?
近藤広幸・社長(以下、近藤):当該サイトの発見当初から、模倣品を販売されていると感じていた。特に「スナイデル」は数年前から、「リリー ブラウン」は2年前から販売されていた。憤るだけでなく何とかしなければと記録を取るようにした。証拠として精度の高いものを集めようと動き、1年間で100点以上が確認された。販売中止に関して、2014年6月末から3回にわたり、弁護士を通じて内容証明を送って警告してきたが、全く無視された。そこで、昨年9月に大阪府警に相談し、11月に大阪府西警察署で告訴状を受理してもらった。
WWD:逮捕の決め手になったのは?
近藤:警察がジオ本社等の現場を家宅捜索し、かなりの量の当社の商品が見つかり、当社の商品に依存したモノ作り体制であったことが明確になった。デザインの同一性に対して異議が出るような事案ではなかったと感じているが、警察には当社に何度も足を運ぶなど、誠意を持って対応していただいた。また、弁護士も経産省で模倣品対策専門官の経験のある模倣品対策のプロに入ってもらった。ざっと見ただけで模倣商品は数百点あったが、迅速な立件のため、警察とも相談し、数アイテムに絞った。
WWD:かなり悪質性が高かったと?
近藤:新しい犯罪のビジネスモデルが確立しているなと思っている。昔は「スナイデル」の偽物は「スナイデル」のタグを付けて売っていた。いわゆる、偽ブランド、商標権侵害品だ。これらは隠れて売っていたが、今回はもっと悪質で、売れ筋品番をピックアップし、デザインを模倣した商品を生産し、あたかも自分の自前ブランドの商品としてうたい、1/3〜1/4の価格で売っている。しかも、当社ブランドと同じようなメジャーファッション誌に、親和性の高いタレントを使い、堂々と広告をしている。最近ではテレビCMまで始めていた。信じられない開き直りだ。でも、良い媒体の良いポジションで堂々と掲載されているものだから、購入者も偽物を着ているという後ろめたさもないし、ジオの従業員にも後ろめたさが少ない状態で、あたかもコピーが肯定されているかのような状態が作り出されているというのがタチが悪い。しかも、商品の説明文までまるっきりコピーして使っているものもたくさんある。これが何年もの間、野放しになり、年間70億円を稼いでいたというから、業界の環境としても問題があると思う。出版社にもこのような違法品の広告を掲載することについて聞いてみたが、倫理観ではなく、犯罪と決まったわけではないので、法律にのっとって正しく指摘されないと対応できないと言われた。でも、これは立派な犯罪だ。単品が少々似ているケースはよくあるし、犯罪組織の存在も分かっているが、とにかく、一流の出版社やモデルが協力する事象を止めなければと感じた。
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近藤広幸マッシュホールディングス社長
WWD:被害総額はどれくらいだと?
近藤:証拠があるものだけでも、少なくとも数億円。過去5年ぐらいを遡ったら、ブランド毀損なども含めて、十億円近いと考えている。ファンに対して、同一商品に見える商品が大量に街に出回ってしまったことなどを考えると、ブランドに与えた損害は非常に大きかった。世の中、知らないところでブランドが傷付けられたり、売り上げを阻害されているものだと感じた。
WWD:ファッションで、商品形態模倣という不正競争防止法違反で刑事告訴が受理され逮捕されるのは、日本初というが?
近藤:これまでも多くのブランドがコピー商品や模倣商品に悩まされてきたが、「デザインをパクったから金を払え」と民事事件として進めるケースが多かった。けれども今回は立派な犯罪であることを立証したかった。コストも時間もかかったが、デザイナーが「悔しいです」と泣きながら僕に救いを求めて来たので、これは自社の娘たちのためにもファッション業界のためにも野放しにしていてはいけないと、本気で刑事で戦うことにした。容疑者は罪を認めていると聞く。逮捕は一つの節目。今後は司法の話になるが、しかるべきタイミングで権利主張を民事でも行っていきたい。
WWD:他に模倣されているケースは?
近藤:昨年から今年にかけて、「スナイデル」などのタグを付けたコピー商品を売る商標権侵害サイトで20ぐらい、「グレイル」のように新しい犯罪手口で別ブランドタグで模倣品を売るサイトにはざっと15サイトぐらい対応してきた。ファンが嫌な思いをしないためにも、今後も警告状の送付などを行い、警告に応じないサイトには厳格に対応するつもりだ。中国でも模倣品を摘発してもらっている。洋服、革小物などの模倣品製造工場や本拠地への立ち入りで模倣品を押収。JETROにも支援いただき商標権侵害が多数発見された。昨年は悪質業者5件を調査し、2件が摘発された。3件は摘発前に逃げたり証拠不十分のケースもあったが、商標権侵害については、中国政府も動いてくれているという印象だ。
WWD:業界へのメッセージは?
近藤:単品の模倣やコピーの話は議論が尽きないし、悪意でなくてリスペクトで行っているところもあると思う。けれども、今回はビジネスモデルとして大いなる悪意があるかどうかが焦点だった。犯罪の立証は別として、雑誌などはきちんと倫理観を持ち、犯罪や模倣の可能性があるかどうかを精査してから掲載してほしい。
※WWDジャパン7月13日号から一部抜粋