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「フェムテック」座談会 女性だけのことじゃない、社会に可能性広げる新市場

 「WWDジャパン」2月17日号、「WWDビューティ」2月20日号で、合同企画「フェムテック特集」を刊行した。“フェムテック”とは、フィメール・テクノロジーの略で「女性が抱える健康問題をテクノロジーで解決するサービスやモノ」を指す造語だ。ただ、今や女性だけでなく、またいわゆるテクノロジーだけではない広がりを持つフェムテック。特集を担当した「WWDジャパン」記者2人と、「WWDビューティ」記者2人とで座談会を敢行。取材を進めた彼らが今、時流とも言えるフェムテックをどう捉え、どう感じたのかーー。

座談会参加者

大杉真心:「WWDジャパン」記者

美濃島匡:「WWDジャパン」記者

竹田紀子:「WWDビューティ」デスク

浅野ひかる:「WWDビューティ」記者

福崎明子:「WWD JAPAN.com」デジタルデスク

福崎明子「WWD JAPAN.com」デジタルデスク(以下、福崎):昨年11月に、大丸梅田店が作った自主編集売り場「ミチカケ」を機に、“フェムテック”が動き出した印象です。今回、なぜ特集をしようと思いましたか?

大杉真心「WWDジャパン」記者(以下、大杉):昨年5月18日号に行った「フェミニスト特集」の取材をしている時に、フェムテックという言葉が出てきて気になり出しました。女性が代表を務める企業で成長しているところは、フェムテックのリーダーであることも多かったのですが、ファッションを打ち出す「WWD」が取り上げるのは違うかなあとも感じていて。ただナプキンなしで使える経血吸収型の生理ショーツなど画期的な商品に出合い、実際に自分でも使ってみて感動したんです。その体験からフェムテックについて取材したいと思いました。

竹田紀子「WWDビューティ」デスク(以下、竹田):ビューティは女性の悩みを解決するという意味で近い業界です。これまでいわゆるフェムテックと捉えられがちな、デリケートゾーン周りの製品は多く発売されてきましたし、「WWDビューティ」でも再三、取り上げてきました。ただまだまだニッチな市場で、これだけで売り上げを伸ばしているブランドというのはない状況でした。でもパーソナルサプリの提案をはじめ、資生堂(SHISEIDO)のパーソナルスキンケアサービスの「オプチューン(OPTUNE)」や、花王の“第二の皮膚”技術「ファインファイバー」の製品化など、テックにつながっているアイテムは多く登場してきていますし、時代の流れだとも感じていました。

美濃島匡「WWDジャパン」記者(以下、美濃島):「ミチカケ」が出きて初めて市場を知り、さらにSNSでバズっていたりして、だからそういうブランドが支持され始めているんだろうと思っていましたが、実情は全然分からない中で特集に参加することになりました。

浅野ひかる「WWDビューティ」記者(以下、浅野):最初は正直、フェムテックってなんぞや?ってところでした。ビューティでは竹田さんが言うように、もともとデリケートゾーンケアや、それにまつわるオーガニックブランドもたくさんあり、脈々とあったカテゴリーだと感じていました。フェムテックと名前がついたことでより活性化、タブー視されていたジャンルが可視化されるのではと思い興味を持ちました。

福崎:取材を進めてみてどうでしたか?フェムテックといっても、何がフェムテックなのか、悩むところもあったのではないですか?

美濃島:正直、まだ結婚もしてないし、子どももいないし。なかなか課題を自分事化できないんです。月経カップとか、絶対に使うことはないし、使い心地とか分からない……。なんというかもどかしいところがありました。ただ、女性の社会進出が当たり前の今の時代に、晩婚化や出産の高齢化は高まっていることは明らかです。こういったことを知ることは価値がある、知ることで意識も変わるのではないかと思いました。

福崎:男性、特に若い男性ではそうですよね。きっと若い男性だけでなく、女性も生理一つとっても個人差があり、感じ方もさまざまですよね。

フェムテックの中でも定義が割れる

竹田:男性、女性ということでも感じ方に違いもありましたが、進めて行くうちに、みんなでフェムテックの「テクノロジー」ってなんなんだろうねえって話すようになっていたんですよね。テックに軸を置いている人からすると、デリケートゾーンケアや人工皮膚などとは考え方に隔たりがある。女性の問題を解決するという課題に重きを置いている人とは、ちょっと認識が違っているなあと。「フェムテック」という言葉自体も、まだまだ混沌としていると感じました。

浅野:どこから攻めるかですよね。クオリティーオブライフの観点から考えると、働き方、ライフステージの変化で取り入れ方も変わりますし。たくさんの問題をはらんでいて……。そういう意味で言えば、女性だけでもないですよね。

竹田:だから「フェムテック」という言葉はなくなるんじゃないかと個人的には思ったんです。フェムに留まらないジャンルである、とみなさん言っていたし。海外ではすでに投資家に対してもフェムテックとは使わないとも聞きましたし。ヒューマンウエルネスのジャンルの一つですよね。ロックの中にファンクロックがあるような(笑)。それもあって、タイトル、迷いましたよね。正直……。

大杉:そう。ある意味、“フェム”と限定しちゃうのは、ビジネスチャンスを失っているとも言えますよね。“フェム”(女性)と言ってしまったら、世界の人口の半分を遮断することになるし。でも、ヘルスケアというとまた違う気もするし……。何か違ういい言葉がないか、考えたいなあと思っているんです。次回の特集までには!

福崎:なるほど、確かに。今回の特集はフェムテックの中でも、女性の生理関連を中心に広げた内容であるけど、でも本来はもっと違うステージのことも含まれているから、言葉は変わっていくのが必然の流れなのかしら?実際、取材で面白かったこと、改めて認識したことはありましたか?

大杉:やっぱり、こんなのがあります!っていう商品・サービス紹介だけでは壁があると思いました。月経カップを扱うインテグロの神林美帆代表は「月経カップは使い方をマスターするのが難しく、ワークショップを開いて使い方を説明する機会を設けている」と話していました。確かに新しい分野で、商品自体もこれまでになかったモノだから、レクチャーやコミュニケーションは必要だと感じました。私も使い方を教わってから「そう使うのが正解だったんだ」と知ったんです。特に10〜20代の母世代はまだそういった新しい生理用品を使っている人は少ないし、子どもに教えられる知識を持った人も皆無だと思います。今のミレニアル世代以降が普通に使うようになってから、次の世代の子どもにも普及していくのかなと。

世代間ギャップを感じる問題

浅野:今回の取材を通して、社内でもいろいろ話しましたが、世代間ギャップがあることをすごく感じました。一つの話として、娘さんが生理痛の辛さの緩和にピルを頼んだら、親から反対を受けたというのを聞いて、びっくりしたんです。現在、30歳の私は親の世代がまだまだ理解のないことに驚きました。もっとオープンに話さないといけないと。

大杉:「ルナルナ」と東京大学医学部附属病院の甲賀かをり准教授の取材で、生理痛が辛い人は月経困難症という病気だと聞いて驚きました。私はピルの知識はありませんでしたが、ピルで生理痛が軽減されるということを知って。「フェムテック」企業のスマルナは、スマホ上のオンライン診療でピルを処方しており、(初診は病院に行かなければだけど)2回目からはピルの処方が郵送になるというのも画期的だと思ったんです。通院が面倒だったりとなかなか一歩踏み切れないことがオンラインでできるのはすごく便利。これにより、女性の働き方も変わると思います。

浅野:私もそう思いました。海外ではアフターピルも薬局で売っていたりしますよね。日本ではなんでないのかなあと思っていたんです。

美濃島:男性からすると、ただ20代から子どもを産んでいた時代と、今の出産の高齢化した時代では、一生の生理の数が全然違うということさえも驚きで。生理とは子ども産むための準備なんだということを知っておくべきだと。

福崎:男性は特に知る機会さえもなかったですよね。母娘、女性間でもなかなかオープンに話をしないことだから。ただ少女漫画の「りぼん」が創刊65周年でポップアップストアを開いたんですが、そこではフェムテックアイテムのムーンパンツをオリジナルで作って販売していて。読者が大人になり母になって、娘との会話がうまれるきっかけになるなあと。

海外では福利厚生にフェムテック

竹田:私が、一番驚いたのはアメリカのフェムテック事情です。ミレニアル世代の獲得策というのもあると思いますが、会社の福利厚生として、卵子凍結や乳飲み子を持つ女性社員のための母乳のデリバリーなどの補助が含まれているんです。企業として、こういうことに取り組む姿勢を持っているアメリカって市場が拡大するはずだなあと。その裏には、日本のように医療制度が確立されていないってところもあるとは思いますが……。今回のビューティの特集では、小売りにおける売り方にフォーカスしたので取り上げなかったですが。

福崎:単に女性の福利厚生と考えがちですが、こういったことで女性の働き方が変われば、仕事の効率にもつながると思います。そうなると、チーム、さらには企業にとってプラスですよね。

大杉:そうですよね。会社の福利厚生として可能性があると感じました。今回、「フェムテック」を取り上げてよかったと思います。今後、福利厚生で取り入れているなど、働き方を含めて実際に活用しているところを取材していきたいです。

竹田:私も、参入企業を追いかけていきたい。いわゆる化粧品と比べると、まだまだニッチな市場なので、可能性が広がっていくと感じています。

浅野:まだスタートアップが多く、そういう意味で画期的な商品、サービスを追っかけていきたい。一方で、大手はどうなんだろう?今後、深く参入していくのでしょうか?気になるところです。

美濃島:社会背景をとらえたサービス・モノとして面白いと感じています。日本じゃまだこれからともいえそうで、ちゃんとみて取材していきたいです。今回、取材相手は圧倒的に女性でした。これって今までのファッション業界の圧倒的な男性経営者が多い中で、逆に偏っていると思いました。自分が男性なだけに、もっと男性目線のフェムテックニュースを追っかけていきたいです。