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新型コロナ対策で巣ごもりのデザイナーたち 何をして何を考えてる?

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、出入国制限や外出禁止措置、店舗や学校の閉鎖など、わたしたちの生活にも大きな影響が出ている。パンデミックが加速する中で、デザイナーたちはどのように過ごしているのだろうか?自宅作業をしたり、未来について考えたり、出口はすぐそこだと願いながら状況の改善について想ったり――この世界危機で、自分には何ができるのかを思案する人もいる。そしてもちろん世界中の人たちと同じように、新しい料理に挑戦したり、自宅で子どもに勉強を教えたり、ヨガや読書、映画鑑賞など、いそがしくあるために何かしら行いながら、それぞれクリエイティブな過ごし方を模索している。

 生活がガラリと変わってしまった今なおオフィスで働き続ける少数派が存在する一方で、多くのデザイナーたちが“#WFH”(working from home、在宅勤務中)というハッシュタグを付けてSNSに投稿をしている。新型コロナウイルスが猛威を振るう今、デザイナーたちは何を語るのか?

ヴァージル・アブロー
(Virgil Abloh)

 「私はスタジオをいくつか持っているから、すでにこうなる前からデジタルとフィジカルの両方を駆使して仕事をこなしてきた。アイメッセージ(iMessage)やワッツアップ(WhatsApp)、Eメールなどでコミュニケーションがしっかり取れれば問題はない。今のところ普通と違うのは、締め切りがはっきりしないことかな」

 「私はもともと楽観的だが、この状況の改善策は楽観主義と思いやりだと思うんだ。創造力、そしてデザインという専門的な仕事は逃げ場になる。このような緊迫した状況だからこそ本気の仕事ができるし、世界がさらに心温まる状況に変わっていくと信じている。いまは現状をリサーチながらいろいろ考えたいと思う。ユーチューブ(Youtube)はすごいよ。どんなトピックでも短いドキュメンタリーとしての学びがある。いまは大規模な小休止といったところかな。私たちの世界は動きが速すぎたから、今は休む時だと思えばいい。さまざまな面が映し出されている時なのかもしれない」

トミー・ヒルフィガー
(Tommy Hilfiger)

 「家族や友人とフェイスタイム(FaceTime)で会話をしたり、ニュースで逐一状況を把握しながら家族の安全を最優先にしている。あとはエクササイズをするか、妻のディー(Dee)とボードゲームのバックギャモンで遊ぶかだね」

アルベール・エルバス
(Alber Elbaz)

 「本当に別世界だよ。とても大変なニュースで溢れていて、みんなが困惑している。もちろんこんな状況には慣れていないから、みんな怖がっている。もとの美しい世界に戻れるように一生懸命頑張らないといけない」

 「街が封鎖状態に入って数日が経つけど、チームではなく個人で働くという新しい状況に適応しなければいけない。物事の本質に立ち返る時なのかも。事態が早く収束することを願っているし、そうなればもとの生活に戻れる。みんなで一緒に解決の道を見つけて、その方向に進めると信じているよ。私は短期的に見ると常に悲観的だけど、長期的に見れば楽観的なんだ」

 「デザイナーたちはアンテナみたいなもので、物事や感情、考えなどをピックアップしている。デザインの始まりはそこさ。新しいものの見方がファッションを変えていく」

ジョニー・コカ(Johnny Coca)/「マルベリー(MULBERRY)」
クリエイティブ・ディレクター

 「デザイナーたちは常に走ったり飛び回ったりしているもので、立ち止まって考えることはない。私がやろうとしているのは洋服と靴の断捨離だよ。着るものと着ないものを分けて、クリーニングの必要性や、譲りに出すべきものをチェックする。いろいろなブランドの洋服を買うのが大好きだから、この機会に自分がどんな服を持っているのか確かめてみるよ」

カロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)
/「プラン C(PLAN C)」
クリエイティブ・ディレクター

 「話し合いの結果、私たち家族はしばらくの間山ごもりをすることに決めたわ。今はひどく恐ろしい時だけど、同時にこの隔離期間がもたらすポジティブな面に感謝もしないといけない。私は自分の一日をすべて子どもたちに捧げているの。大変だけど学ぶこともたくさんあるわ。学校のビデオを一緒に見て、時には創造力を発揮しながら勉強している。私たちはみんな新しいことをするために共に学んでいるのね。午後は仕事をしてアクティブに過ごそうとしている。でもその前に、いつもテラスで太陽の光を浴びるようにしているわ」

ダナ・キャラン
(Donna Karan)

 「安穏を求めて米ニューヨークのイーストハンプトンにいるわ。肉体的にも精神的にも自分の習慣は維持するようにしている。朝晩の瞑想は欠かさないし、ズーム(Zoom)を通じてインストラクターのキラ・S・ラム(Kira S. Lamb)とピラティスもしている。ビーチを歩いて、写真を撮って、小石で色のパターンを作ったりもする」

 「『アーバン ゼン(URBAN ZEN)』のチームと毎日仕事もしていて、ECやインスタグラム、Eメールやビデオ会議などデジタル方式のコミュニケーションを通じて連携を取っているわ。コミュニケーション、絆、共同作業、創造力、コミュニティー、そして変化は、私のやること全ての原動力となっていく。今までにないくらい行動を促されている気がする」

 「ロドニー・イー(Rodney Yee)、コリーン・セイドマン・イー(Colleen Saidman Yee)、そして『アーバン ゼン』のセラピストたちと共に、ヘルスケアシステムにどう貢献できるかも考えている。学校が休校になった子どもたちやお年寄りなど、日々の食事に影響を受けている人たちを手助けできればと思って、地域の慈善団体ゴッズ・ラブ・ウィー・デリバー(God’s Love We Deliver)、フードバンク・ニューヨークシティー(Food Banks NYC)、ミールズ・オン・ホイールズ(Meals on Wheels)、サグ・ハーバー・フード・パントリー(Sag Harbor Food Pantry)に寄付もした。この世界も私たちの生活もまったく同じ状態には戻らないと思う。今こそしっかり考え、リセットをして、自然に感謝しながら未来に向けて変化を起こしていきましょう」

ダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)

 「家族がどこにいようと会話をしている。新しい本を読んで、散歩をして、日記を書いて……オーディブル(Audible)でニュースや本を聴きながらiPadでジグソーパズルもするわ。動けない時だからこそ、何かアイデアを思いつこうと必死よ。この状況から学べることは何なのかについても考えているわ」

オリヴィエ・ルスタン
(Olivier Rousteing)
/「バルマン(BALMAIN)」
クリエイティブ・ディレクター

 「私はひとりでオフィスにいる。コレクションの発表があるからひとりで仕事をしている。ウィメンズとメンズのリゾートコレクションにメンズのファッションショーもあるからね。チームのほかのメンバーとはフェイスタイムとワッツアップでコミュニケーションを取っている。大きな問題と言えばモデルのフィッティングができないこと。モデルに服を送るか、チームの誰かが試しに着てみるしかない。チームのメンバーには『何があったとしてもクリエイティブでいよう!』と言った。私たちはポジティブだ。チームのメンバーは若いし、世界中から集まっている。つながりを保っていれば大丈夫さ」

 「境界線を引かず、勝手な判断もしないという根本に戻る必要がある。ファッションはいま再出発の時にあり、そのシステムが問い直されている。ラグジュアリーの持つ意味は変わっていくだろうし、すべてのことが問い直されていく。準備を整えて、希望と新たなアイデアを提案していく必要があると思う」

プラバル・グルン
(Prabal Gurung)

 「ゆっくり立ち止まって自分の価値を問い直し、この経験を自分自身や自分のブランドにどう生かせるかを考えている。いまは回想や内省をするのに重要な時期であるべき。もう少し軽い話をすれば、いそがしくて読めなかった本をようやく読むことができる。ポッドキャストやテレビも見られる。ワークアウトは続けていて、昨夜はランニングをした。あとは、少なくとも1日1時間はポップやR&B、ボリウッドミュージックをかけて踊るという日々のルーティンも継続中。その後カラオケを出してきて大声で歌うんだ。まだ苦情は届いてないよ!」

 「母親が同じ建物に住んでいてよかった。彼女の安全を特に考慮して、2m弱の距離を保つように心掛けている。母親の手作り料理には癒されるし、アドバイスはいつもとても参考になる。私はとても社交的だから、平常心を保つためにも好きな人たちとはつながっている。メッセージ、電話、Eメールやインスタグラムのライブチャットなんかもする。フォロワーと考えやアイデアをシェアしているよ。運がよればフィリップ・リム(Phillip Lim)やティナ・クレイグ(Tina Craig)みたいな素晴らしい考えを持った仲間と話すこともできる。困難な状況に対する解決策がすぐには見つからない可能性があるからこそ、友人や同僚、業界のリーダーやすべての層の人たちとのコミュニケーションの場を持ち、考えをシェアすることが重要だと思う」

 「危機的状況に陥って学んだのは、人間が本来持っている感情や性質について。無関心や外国人嫌悪、恐れと共に、愛情や思いやり、共感の心に触れることもある。誰もが同じ状況にあり、ひとりではない。まずは僕たちの世界の脆さに気付き、恐怖を受け入れて助けを求めること。選択肢を与えられた大多数の人びとは正しい判別をする。僕たちは共感と愛情に溢れる心を持った人間だから」

マッシモ・ジョルジェッティ
(Massimo Giorgetti)
/「MSGM」創業者兼デザイナー

 「先週の金曜日に本や雑誌を買いこむと決めたけど、それまでは働いていた。ちなみに本はまだ一冊も開いていない。夫も在宅勤務中で、今はお手伝いさんもいないから私が家事をしているよ。毎日食器を洗い、掃除をしたら掃除機をかけて整理整頓もする。家事の面白さを発見しつつあるし、ある意味健康的だとも思える。何かを知ると同時に自分自身も知っていく感じ。いそがしくて今まで家での暮らしを楽しむ機会がなかった。今はそのいい機会だし、自分たちだけの広々とした空間がある素敵な家に住めることに感謝の気持ちも湧いてきている。もちろんみんながそうだとは限らないから、自分はとてもラッキーだってことには気付いているよ」

 「ヨガのオンラインクラスも毎日受講していて、精神統一ができる倒立をしょっちゅうしている。ヨガの後には15分ほど瞑想もしている。だいたいいつも早朝にヨガをするけど、今は家にいるから、例えば夕闇の中でヨガをする面白さも発見した。あとは、注文したランニングマシンがついに届いたんだ。これで1日30分走れる。体を動かすのは私にとって大事なことだけど、ジムが閉鎖されて、運動がどれだけ欠かせない習慣だったのかに気が付いたよ」

 「料理もたくさんしている。今は私も夫も肉や魚を食べないようにしているから野菜をたくさん料理して、ショウガとターメリックを入れた緑茶もいっぱい飲んでいる。これがこの時期のネガティブな雰囲気と闘う方法かな。あとは、そこまで質がいいわけでもないネットフリックス(Netflix)は見るのをやめた。代わりにアマゾンプライムビデオ(Amazon Prime Video)で『ナチ・ハンターズ(Hunters)』を見ている。『1917 命をかけた伝令(1917)』もまた見ると思う」

フィリップ・リム
(Phillip Lim)

 「今はただ存在して、息をするように心掛けている。私の料理本『More Than Our Bellies』に登場する全ての料理を作ってインスタグラムに投稿しているよ。私にとって食べ物は愛情そのもの。私は母親が恋しくて料理を始めたし、料理をしていれば、この状況を乗り切ることのできそうな愛に溢れた記憶も呼び戻せるから。キッチンでは食べ物と精神面で母親の存在を感じることができるから心地いい。面と向かって接する時間を持つのが難しい時だからこそ、みんなが大切な人とのつながりを感じるために私のレシピが役立てばいいと願っている」

スコット・ステューデンバーグ
(Scott Studenberg)
/「バハ イースト(BAJA EAST)」
共同創始者兼クリエイティブ・ディレクター

 「普段から在宅勤務をしているから、外出規制がかかってからも大きな変化はないよ。家ではテレビを見たり――リアリティー番組の『ラブ・アイランド・オーストラリア(Love Island AU)』のシーズン2とかね。愛犬と寄り添ったりCBDのお風呂に入ったりもする。マッチングアプリを再開したり、届けてもらったお花で毎日を明るく過ごしたり、この時間を自分のために使っている。仕事をするときはちゃんと着替えるようにしているし、毎日のコーディネートを写真に撮ってもいる」