フォーカス

フェムテックは “人生が豊かになる夢のある商品” 女性のためのセックストイから膣トレグッズまでそろえるアジュマ代表に聞く

 女性向けのセックストイや生理用品などを扱う専門店「ラブピースクラブ(LOVE PIECE CLUB)」を運営するアジュマは1996年に創業したフェムテック専門会社だ。現在は台湾発の月経カップ「フルムーンガール(FULLMOON GIRL)」や経血吸収型サニタリーショーツ「ムーンパンツ(MOON PANTS)」をはじめ、英国発オーガニックデリケートゾーンコスメ「イエス(YES)」などの海外のフェムテック商品の輸入代理店も務めている。

 創業当初からセックストイは男性が女性に使用する目的ではなく、女性目線のセレクトで選ばれており、創業時から繰り返し使える生理用品の月経カップを取り扱っている。現在は東京・本郷三丁目にショールームを構えているほか、昨秋には大丸梅田店の生理周期に寄り添った商品を扱う売り場「ミチカケ」にフェムテック専門店「ムーンド バイ LPC」を開いた。

 24年以上セクシャルウェルネスのマーケットを見てきたアジュマ創業者の北原みのり代表に、創業時の当初の話から国内外のフェムテックの傾向を話を聞いた。

WWD:どのようにスタートさせたのか?

北原:24年目になりますが、20代のときにこの社会で生きていくことって辛いと思っていたんです。性のことで困ったり、傷ついても情報がなくて話せる場所がない。だから自分でそういう場所を作ろうと思って「ラブピースクラブ」を立ち上げました。ピースは“平和(PEACE)”ではなく“個(PIECE)”。個人を愛しましょうという思いを込めています。

WWD:創業当初からセックストイを販売してきた?

北原:はい。アメリカに旅行へ行ったときに、フェミニストのセックスグッズショップを見て衝撃を受けました。日本の“大人のおもちゃ”は男性が女性に使う“オラオラ”したものばっかりで、自分には関係のないものだと思ってきたけれど、アメリカには女性が楽しめるセックスショップグッズがありました。これが私がやりたいことだと、思ったんです。形から全く異なり、男性器の形をしているのではなく、イルカの形だったり(笑)。素材もとても良くて、体に使うので安全なものを輸入販売したいと思いました。

WWD:取り扱い商品はどのように変わってきた?

北原:最初からセックストイと一緒に生理用品や避妊グッズなども扱ってきました。月経カップも24年前から販売しています。初めは全く売れなくて、自分でも使い方をよく理解していなかったんですが、天然ゴムのラテックス製で土に還るのでエコ素材のもので、ヨーロッパでは80〜90年代から出てきていたんです。また布ナプキンも早めに扱っていました。

WWD:ビジネスは小売りと卸の2軸だ。

北原:もともとオンラインで個人の方に販売してきましたが、女性経営者で興味を持ってくださる方が増え、10年前くらいから少しずつ輸入業を広めて生きました。

“生理ってずっと存在してきたのに、なぜ語られてこなかったんだろう?”

WWD:国内外でも“フェムテック”という言葉が広まりだして、マーケットはどのように変化していると感じるか?

北原:やっと今まで私たちがやってきたことに名前が付いたと感じました。去年の今頃まで“フェムテック”という言葉をパワーポイントで資料を作って説明してきたと思うと、本当にこの1年で空気が変わりました。昨夏に経血吸収型ショーツの「ムーンパンツ」を発売したときの反応は、一昨年に月経カップの「フルムーンガール」を出したときとは全く異なっていました。「こういうのが欲しかった!」というマーケットが少しづつできてきたと思います。反応も大きく、その波がどんどん膨らんでいる印象です。

WWD:特に昨年は生理にまつわる話題がSNSでも広がった印象だ。

北原:生理って人類が始まってからずっとあるものなのに、なんでこんなに語られてことなかったんだろうと思いました。いろんな世代の女性たちと話すと、“生理で失敗したことがない”という人はいないんですよね。皆「こういうものがあればいいな」と感じているけど、我慢してきたと感じます。現代女性は昔に比べて生理の回数が増えているので、生理用品にも選択肢が広がっていることはとてもポジティブなことだと思います。

WWD:“フェムテック”をどのように定義付ける?

北原:“フィメール+テクノロジー”で女性のテクノロジーという意味なので女性のセクシュアリティー、セクシャルヘルス、リプロ(不妊)や生殖に関わることももっと豊かで安心に安全に楽しめるようなものだと思っています。

WWD:“フェムテック”は5年後に世界で5兆円規模になるといわれていますが、その大きな可能性を感じられる?

北原:私が1990年代に出合いましたが、アメリカでさえ広まるのに20年以上の時間がかかっているんです。“フェムテック”の商品はとても便利で一度使うと戻れないです。地球にいる半分が女性で、彼女たちが性や生理のことで悩んでいるとしたらこのマーケットはどんどん広がって生きます。

WWD:繰り返し使える月経カップや経血吸収型パンツなど環境問題の部分でも時代が注目するタイミングだ。

北原:本当にそのタイミングが来たんだと思います。膣トレ関連の商品も大企業が投資をして作っているのとは異なり、クラウドファンディングで始まっているものも多い。輸入販売しているオーストラリアの生理用品では、売り上げの半分は女性の教育に寄付されるようなコンセプトになっていて、フェムテックの根底には社会を良くしたいというポジティブでエシカルな考えがあります。購入すると“人生が豊かになる”と信じられるような夢のある商品がフェムテックだと思います。

WWD:膣トレ(骨盤底筋のトレーニング)のアイテムも扱っている。

北原:出産した後や40〜50代の方で、膣の筋肉がゆるくなってきて尿漏れなどで困ってらっしゃる方たちもいます。今までも膣トレというと、“大人のおもちゃ”の一つで男性のために膣締めようっていう考え方がメインでした。でも、昨今は女性たちが開発して真面目にトレーニングする商品があります。

WWD:売れ筋の商品は?

北原:台湾発の経血吸収型の「ムーンパンツ」です。アイデアは約2年前から聞いていたんですが、ナプキンやタンポンのいらない生理用パンツがあると聞いて、「そんなものある訳ない」と思ったんです。でも、台湾って布の技術が発達していて、こんなに薄い生地なのに防水ができて、抗菌作用もあり、雑菌が繁殖しないためにすごく研究がされているんです。「フルムーンガール」も台湾の別会社なのですが、台湾の生理用品はとても進んでいます。

WWD:商品のパッケージもかわいいが、日本向けのデザインに変えてローカライズしていると聞いた。

北原:はい、「ムーンパンツ」も「フルムーンガール」も台湾版パッケージもかわいいんですけど、全部漢字になって“月経杯”って書かれると少し焼酎っぽい名前になってしまうので(笑)。10〜20代の方にも手に取ってもらえるようにかわいいパッケージを目指しました。

“性や生理について話せる
場所があることの大切さ”

WWD:大阪の大丸梅田店の新ゾーン「ミチカケ(MICHIKAKE)」にフェムテック専門店「ムーンド バイ LPC」を開いた理由は?

北原:私たちの販売するデリケートゾーンケア商品が百貨店で扱われるようになったのは約3年前から。商品があることで、コスメを買いに来たお客さまが販売員と生理やセックスの話を百貨店でできるようになったと実感しました。そういう場所があることは大切だと思って、大丸梅田店さんの話を聞いたときに絶対に出店したいと思いました。

WWD:「ムーンド バイ LPC」をオープンして見えて来た課題、発見はあるか?

北原: まだ“フェムテック”って言われても、性教育が全くない中でこの分野がなぜ必要なのか説明すること。このマーケットを作るにはお客さまと会話をしながら私たちも学ばなければならないと思います。また、一人車椅子のスタッフがいるのですが、彼女の話は本当に勉強になります。障害を持っている方の生理用品の開発はすごく重要だと感じました。

WWD:商品を手に取るときに相談できることは大事?

北原:例えば、性交痛の悩みは誰に話たらいいのか分からない。病院にいっても相手にされず、「ローションを使えばいい」と言われたり。でも痛みって我慢できないもの。クラウドファンディングで出て来た「オーナット」は男性側にクッションを付ける新しいタイプの性交痛緩和アイテム。この商品がいかに良かったか電話で30分以上語られたお客さまもいました。

WWD:海外ではどの国が進んでいるのか?

北原:今はアメリカやイギリスの女性たちがクラウドファンディングで立ち上げている商品が盛り上がっていて、ドイツはテクノロジーにも強く先進的です。アジアでは台湾。どの会社もまだ会社の規模は小さくて、オフィスも15〜20人くらい。日本からもそういった企業家が増えるといいなと思っています。

WWD:フェムテックは会社としても商品としても女性の働き方を変えていきそうだ。

北原:そうなんです。やっぱり実際にその商品を使用する女性が決定権の場に立つことで、商品の質は変わってきてると思います。こんな商品があるんだって気付きとか、豊かな感じになるなってことをこの数年で実感しています。フェムテックの分野で日本が遅れをとっているのは、女性が自由に発言できて、性に関してきちんと知識を持つ機会がないからだと思います。そういったところは解放できるように、組織の中も女性がもっと生き生き働けるような場所とか、性のことを真面目に商品化できるようなそういった機会が与えられるような職場が増えて、女性たちが希望を持って自分たちの場所を作っていけるといいなって思います。

最新号紹介