ファッション

俳優・中島健人が“性(セックス)”に真摯に向き合ったNetflix「SとX」 「この作品を見て、人生を少しでも生きやすくなってほしい」

PROFILE: 中島健人/俳優、アーティスト

PROFILE: (なかじま・けんと)1994年3月13日生まれ、東京都出身。2011年11月にSexy Zoneのメンバーとしてデビュー。24年3月にグループを卒業し、ソロアーティストとしての活動をスタート。その後、キタニタツヤとのユニットGEMNを結成、7月にテレビアニメ「推しの子」第2期のオープニング主題歌「ファタール」を配信リリース。26年2月にリリースした2ndアルバム「IDOL1ST」では、自身 初のオリコン週間アルバムランキング1位を獲得し、デジタル、合算を含む3冠を達成。俳優としても、映画「ラーゲリより愛を込めて」(22)、Netflixで映画化された「桜のような僕の恋人」(22)、主演映画「おまえの罪を自白しろ」(23)、「知らないカノジョ」(25)をはじめ、海外ドラマデビューとなるHuluオリジナル「コンコルディア/Concor dia」(24)や「ちるらん 新撰組鎮魂歌」(26)、NHKドラマ10「コンビニ 兄弟 テンダネス門司港こがね村店」(26)、主演映画「ラブ≠コメディ」(26)など 幅広い作品に出演している。

中島健人がセックスセラピスト・霜鳥壱人(しもとり・いちと)を演じる、Netflixシリーズ「SとX」が8月20日から配信される。同作は多田基生による漫画「SとX~セラピスト霜鳥壱人の告白~」(講談社)を実写化したもので、テーマは、日本社会において未だ公に語ることがはばかられる「性(セックス)」。一見、センシティブで取り扱いが極めて難しい題材でありながら、中島はこれを「世界共通言語」と捉え、グローバル配信というプラットフォームを通じて、自身のアーティスト像・俳優像を大胆にアップデートしようとしている。

アイドルという強固なアイコンでありながら、なぜ今、「性」という難しいテーマに挑むのか。撮影の舞台裏、そして「30歳」という年齢を機に訪れたという内面のパラダイムシフトについて、内に秘めた思いを語る。

「性」を世界共通言語として解剖する

——最初に、Netflixで「性」を取り扱うテーマだと聞いたとき、どのような印象を抱きましたか?

中島健人(以下、中島):最初にNetflixからこのお話を伺ったときは、やっぱり少しエキセントリックな作品になるのかな、という風に想像していました。性という題材は、特に日本においては非常に取り扱いが難しく、世間との距離感があるテーマですから。しかし、届いた脚本のページをめくり、中身を深く解剖していくと、その印象は180度変わりました。性への向き合い方や悩みについて、老若男女、本当に多くの方がしっかりと共通の議題としてカジュアルに適切な距離感を作れるような、非常に知的で温かい作品なんだなと確信したんです。

——最終的に出演を決めた一番の理由、役者としての目的意識はどこにありましたか?

中島:当時、俳優としての僕の気持ちからすると、世界中の人に自分が出ているドラマを見ていただければ、役者としての責任もまっとうできているな、と感じていた時期でもありました。では、それができる「世界共通テーマ」「世界共通言語」って一体何だろう?と考えたときに、浮き上がってきたのがまさに「性」だったんですよね。プロデューサーの方から「性を題材としたテーマの作品を、ぜひ中島健人で」というお話をいただいたので、ちょうどその時の自分の目的、グローバルな視点や目標と合致したので、前向きにお引き受けしました。

——主人公の霜鳥というキャラクターをどう肉付けしていったのでしょうか。

中島:自分自身の霜鳥の役柄としては、観てくださる視聴者の方々が、僕を基準にして、その性に対してよりフラットに、カジュアルになってくれたらいいなという気持ちが強くありました。ですから、これまでの僕がまとってきたパブリックイメージとは真逆の、いわゆる“無色透明”のようなキャラクター設定というものを徹底的に心がけました。できるだけ柔和に、声のトーンやリズムも含めて、グラデーションを削ぎ落とした佇まいを意識しました。

アイコンを通して性の悩みを知ってもらう

——性の悩みや多様性を、尊厳をもってしっかり描いている作品だと感じます。中島さんがこの作品の座長を務めることは、表現者としての可能性や境界線を大きく広げるターニングポイントになるのではないでしょうか。新しいアーティスト像への挑戦という意識はありましたか?

中島:すごく面白いと思うんですよね。だから今こうして取材を受けられているのも、この題材を通してこの取材を受けられているのもすごく嬉しくて。先ほども言った通り、欧米諸国とは違って、日本という国は性に対しての距離感が確実にある。だけれど、実は日常の中で絶対に遠ざけちゃいけないテーマだと思っています。この脚本の中で僕が放つセリフに「セックスに悩んでいない人なんていませんから」という言葉がある通り、誰しもがやっぱり性に対して必ず何かを抱き、何かを悩んでいる。

だからこそ絶対に「このドラマを見たら、ちょっと心が落ち着くな」「自分の性的な悩みがちょっと救われるな」という場所を作ってあげるべきだなと、普通の“中島健人”じゃない客観的な思考でもきっと思うはずなんですよ。でも、そういう作品にみんながたどり着くには、やっぱり一つ分かりやすい“しるべ”がないといけなくて。僕はアイドル・中島健人として今このエンタメ業界を生きているけれども、では俳優・中島健人としてどういうものを表現するべきかって言ったら、正直ジャンルは問わないんですよね。性というテーマに対して距離を置いてほしくないという思いが制作陣にあるのであれば、自分というアイコン、フィルターを通して、みなさんにセックスを知っていただく。それも新しい時代の見方や表現のあり方なんじゃないのかなと思っているので、それは僕がこのドラマに対して抱く、一つの大きな矜持である気がしています。

——霜鳥が抱えるED(勃起不全)という設定や、新木優子さん演じる市之瀬佑美とのインティマシーシーンは、演じる上で非常に繊細なバランスが求められたと思います。壁になった部分や、苦労した点はありましたか?

中島:そうですね。難しいなと感じたのが、佑美に対して、お互いのそういう気持ちを交わし合うシーンのとき。自分は心理的状況では好意を寄せられるけれども、身体的にそれが果たして追随するのか、体が心に追いつくのかなっていうのが、霜鳥としても僕自身としてもすごくわからなくて。EDというのは過去のトラウマからのものであり、そうなってしまってはいるけれど、彼の中にも必ず性的衝動はあるはず。では、どれくらい佑美に対して自分のそのパッションみたいなものをぶつけられるか。いわゆる、何も考えずに本能のままに、自分の気持ちをぶつけられるか否かっていうのは、かなり悩みました。普通のラブシーンではない、傷を抱えた者同士のインティマシーシーンですから。

そこは新木さんと現場で本当にものすごく話し合いましたね。今回はインティマシーコーディネーターの西山さんという方も入ってくださったんですけど、密にコミュニケーションをとりました。映像として「どこに手があると少し芸術的に見えるか」「アートに見えるか、かつ色気が感じられるか」という枠組み、型は綿密に作りました。だけれども、型は作ったけれど、本質はやっぱり自分たちの“本能”だよね、という話を新木さんとして。だから、1回目に関しては、一度お互い本能のままに寄り添ってみよう、というお芝居をしました。逆に別のインティマシーシーンに関しては、1回目はしっかり向き合ったから、2回目は精神的に寄り添い合ってみようか、とお互い意識したり。一辺倒ではなく、ちゃんと相談をして、お互いの気持ちを掛け算した状態でシーンが作れたのかなという風に思っています。

他者をケアすることと
音楽を創造することのシンクロニシティ

——霜鳥は他者をカウンセリングする一方で、ご自身も深い傷を抱えている複雑なキャラクターです。中島さんは以前、「このプロセスはご自身の音楽制作と似ている」とお話しされていましたが、そこを詳しくお聞きしたいです。

中島:これには、多角的なロジックがあると思っています。カウンセリングというのは、クライアントの方のお話を聞いて、その人の仕組みやストーリーラインを分解・理解して、その人に対しての「処方箋」を出す仕事ですよね。僕の音楽作りに対して言うと、例えばタイアップの楽曲を書くとしたら、そのタイアップという名のクライアントをちゃんと僕がカウンセリングするんですよ。この映画、このアニメがどういう仕組みで、どういうストーリーラインで成り立っているのかを分析して、それに対して「楽曲」という名の処方箋を出す。読み取り、分解、そしてストーリーを自分に入れ込んで理解する。その理解のプロセスが、曲作りとカウンセリングでまったく同じなんですよね。

——では、キャラクターが抱える「消えない傷」という部分については、ご自身のクリエイションや生きてきた軌跡と重なる部分はありますか?

中島:もちろん反映されますね。やっぱり自分自身も完璧な人間ではないので、心の中に消えない傷というのはあります。ただ、そういう傷みたいなものをあえて音楽的な角度で言うと、僕は「作品に昇華しよう」と思っているし、ドラマや映画の芝居に昇華できるんだったら、すべてそこに注ぎ込みます。作中の霜鳥っていうのは、一種のショック療法も使うセラピストなんですけど、自分にとっても、ショックな出来事や痛みをエンターテインメントに変換すること自体が、ある種の治療だと思うんですよね。

行き先のないまま感情を心の中に閉じ込めておくよりも、1回その大きな痛みを作品に昇華して、痛みの継続を「切る」ということ。鎮痛剤で痛みを切るのと同じように(笑)、作品で痛みを切った後、それがどういうコンテンツとして育っていくかは作品次第。でも、心に傷があること自体は、僕は決して悪くないと思うんですよ。なぜなら、その人が強くなるための、確実なきっかけになるから。

開けた視点でアプローチできるようになった

——本作において、悩みの解消の先にある「自己受容」というテーマも深く描かれます。中島さんご自身、なかなか自分を肯定できない、受け入れられない状態から変わっていったタイミングはあったのでしょうか。

中島:これはね、10代とかの多感な時期の子に「自己受容しろ」って言っても絶対に無理ですね(笑)。精神年齢がだいぶ高い方々ではないと、本当の意味での自己受容は起きない。じゃあ精神年齢をどうやって上げるのって言ったら、人間一人ひとり生きるペースは違うから、もう「当たって砕けて受け入れろ」っていうことだと思うんです。当たって砕けない状態では、受け入れるものなんて何もないですから。まずは踏み出してみること、悩んでいることを誰かに話してみる。記述化して、視覚化して、自分のアイデンティティーを内省して受け入れる。自己受容っていうのは、踏み出した先にあるものなんです。

僕自身の話をすると、霧が晴れて自己受容ができたのは、実は30歳くらいなんです。本当に最近の話なんですよ、僕、“自己受容の新人”なんです(笑)。世間からは、僕が勝手に「自己受容の天才」みたいに思われているかもしれないですけど、全然そんなことはなくて。僕は色んな部分で自分を抑えてきた人生でもあったので。

——20代の頃の中島健人さんは、どのような葛藤の中にいたのですか?

中島:20代の頃は、いわゆる“役者シーズン”がめちゃくちゃ長すぎたんですよ(笑)。「俺、役者なんで」みたいなモードで、現場に対してもプランをガチガチに持っていっていて。でも、同世代の役者たちがみんな素晴らしい作品に出て、現場が終わった後に「次のクールはあの人と一緒なんだよね」とか話している中で、僕には次クールの作品の予定がなかった。この撮影が終わったら、僕はすぐアイドルの主軸に戻るから。役者として結果を出したい自分と、アイドルという主軸の狭間で、「これはアイドルという職業に対するアンチテーゼとして俳優ぶっているのか」が自分でも分からないまま、30歳まで過ごしていたんです。

それが30歳になって、改めて自分が今まで何をしてきたかを内省したときに、高校時代から、授業中もプリントの裏に歌詞を書いていたり、大学時代もメロディーを思いついたら速攻でお手洗いに行ってボイスメモに録音したこともありました 。自分は本当に音楽を作ることが、クリエイティブすることが大好きなんだな、と。それをソロとしていろんな人に受け入れられて、ちゃんとライブのステージで歌えたときに、ようやく自己受容ができた。「なるほど、自分が本当に好きなものは、今はアイドルというフィルターを通してちゃんと音楽をすることなんだな」って。それが分かったからこそ、この「SとX」という作品に対しても、「中島健人というフィルターを通して、観てくれた誰かの人生が生きやすくなったら嬉しいな。そのために偶像は存在しているんだから」という、非常に多角的な、開けた視点でアプローチできるようになりました。

「ウォルトとミッキーの共存体」としての
セルフマネジメント論

——ご自身を客観的な「アイコン」として見つめる視点は、まさにプロデューサーのようでもあります。

中島:そうなんですよ。僕、自分の中に「ウォルト・ディズニー」と「ミッキーマウス」が共存している感覚なんです。中島健人が、表に立つ「ケンティ」というアイコンをどうマネジメントしていくかを常に考えている、マネジメントプレイヤーみたいな。

——その自己受容の決定的なモーメントを迎える前段として、Netflix映画「桜のような僕の恋人」での深川栄洋監督との出会いも大きかったとお聞きしました。

中島:「桜のような僕の恋人」は、僕が渋谷のジュンク堂で原作の小説を見つけて、自分で提案して実現した、まさに「ここで人生を変えるんだ」と挑んだ作品でした。当時の僕はまだ“役者シーズン”の凝り固まったプライドがあったんですけど、深川監督の演出の方向性がそれまでと全然違って。一回丸裸になって殻を破りたいと思って、初めて監督に「僕は泣く芝居が苦手です。プライドがあって言えなかったけれど、もし泣けなかったらすいません」って赤裸々に告白したんです。その時、深川監督が僕に近寄ってきて、「健人くん、役者の仕事は、忘れることですよ」って言ったんです。「はあ!」ってなって(笑)。未だに深川さんにはずっと感謝しているし、名セラピストだと思っています。定時になったら速攻で帰る、ものすごく健やかな監督でしたけど(笑)。

失敗をチャンスに変える駆動メカニズム

——過去に「つらいことや失敗はチャンスだと考える」とおっしゃっていましたが、最近それを最も実感した「修羅の道」のエピソードがあれば教えてください。

中島:それこそ、年末年始の東京ドームでの「COUNTDOWN CONCERT 2025-2026 STARTO to MOVE」に出演した時ですね。ソロになって久々の「カウコン」のステージだったんですけど、出演者のラインナップを見たとき、個人名が僕だけだったんですよ。「こわー!」と思って(笑)。周りはみんなグループで固まっている中、ポツンと一人。でも、その瞬間に、一切怖くなかったんですよね。なぜなら、ソロになってからのこの2年間、香港のフェスに行ったり、海外のステージに挑戦したりして、めちゃめちゃいっぱい失敗もしてきたし、修羅の道を通ってきていたから。その積み重ねがあったから、恐怖が「めっちゃ楽しい!」というエネルギーに100%変換されたんです。

それで、テンションが溢れすぎて、自分のソロ楽曲「CANDY〜Can U be my BABY〜」のイントロで、全然喋る場面でもないのに「2年以内に東京ドーム行きます!」って宣言しちゃったんですよね。だから、もう自分で言った以上、そこに向かっていくしかない。自分で口にしたからには、そこに向かっていきたいと思っています。

——最後に、この「SとX」という作品を通じて、現代を生きる視聴者にどのような処方箋を届けたいですか。

中島:僕のこのドラマに対する定義として、「信頼」「コミュニケーション」「自己受容」「愛」、そして最後に「孤独」という5つの柱があります。パートナーと一緒にいるのに、自分の性の悩みやコンプレックスを伝えられない状態というのは、まさに5つ目の「孤独」なんです。でも、中島健人、ケンティがこういう難しいテーマをやっているんだったら、ちょっと1回見てみようかな、と思ってドラマの扉を開けてほしい。もし、世間の性に対する偏見や凝り固まった規範が「100」あるのだとしたら、僕というフィルターを通すことで、それが「97」くらいに少しでも落ちればいい。誰かがこの作品を見て、自分の人生を少しでも生きやすくなってくれたら、僕がこの時代に、このドラマの座長となった意味が、確実にあるのだと思っています。

PHOTOS:NA JINKYUNG(TRON)
STYLING:MAYU KAWAHARA
HAIR&MAKEUP:CHIE ISHIZU

コート 7万5900円、シャツ 2万6400円、パンツ 3万8500円/全てベリーテイジ(Sakas PR︎ 03-6447-2762)、メガネ 4万7800円/ジェントルモンスター(M 03-6721-0406)

作品概要

◾️Netflixシリーズ「SとX」
出演:中島健人 新木優子
原作:多田基生「SとX ~セラピスト霜鳥壱人の告白~」(講談社「モーニング」刊)
監督:草野翔吾
シリーズ構成・脚本:吉田智子
脚本:草野翔吾 松島瑠璃子 ばばたくみ
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
企画・製作:Netflix
©多田基生/講談社
https://www.netflix.com/jp/title/81684448

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

「スポーツブランド」の好調をファッションスタイルの二極化から読み解く

近年、スポーツブランドの好調が続いています。2025年スポーツブランド世界売上高トップ15の企業のうち、13社は昨年度比プラス成長、どのブランドも自身の強みを打ち出しながら市場の中で独自性を発揮しています。好調の要因はスポーツ世界大会の影響やスポーツコミュニティーの形成などさまざまですが、ファッションシーンの中での影響力の強まりも無視できません。元より、ファッションの1ジャンルとして確立しているス…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。