パリ拠点の日本人デザイナー、トシタロウ・ツチハシによるジュエリーブランド「ラ・レフレクション(LA REFLEXION)」が、日本に本格上陸する。阪急メンズ東京で5月27日から6月2日まで、国内初のポップアップストアを開催する予定だ。
ブランドはコロナ禍にパリで設立。アメリカとフランス、日本と国境を超えて、ファッション業界のコミュニケーションやセールスに携わってきたツチハシが、「人生を共にするジュエリー」をテーマに立ち上げた。ブランド名は、フランス語で“反映”を意味し、身につける人それぞれの生き方や感情を映し出す存在でありたいという思想を込めている。ジュエリーは主に18金イエローゴールドとシルバー925を使用し、フランスでハンドメイドで制作。建築物から着想を得た曲線と直線のコントラストが特徴で、削ぎ落とした造形美を追求している。ポップアップではシグネチャーピースに加え新作もラインナップ予定だ。価格帯はリングが3万7800円〜、ブレスレットが9万4400円〜で、ユニセックスで着用できるよう幅広いサイズを展開する。
ツチハシは「ブランドの世界観や制作背景について直接紹介できる機会が楽しみ」と話し、ポップアップではデザイナー自身が在店するという。ジュエリーデザイナーへと転身した経緯から、“内省”を軸としたブランド哲学、建築やアートに影響を受けた独自のクリエイションについて話を聞いた。
PROFILE: トシタロウ・ツチハシ/「ラ・レフレクション」デザイナー

WWD:ファッション業界でコミュニケーションやセールスに携わったきた中で、ブランドを立ち上げ、“つくる側”へと転身したきっかけは?
トシタロウ・ツチハシ「ラ・レフレクション」デザイナー(以下、ツチハシ):これまでのキャリアでは、ブランドの思想や世界観を整理し、人へ伝える役割でした。ブランドを分析し言語化する中で、本当に長く残るものには、作り手自身の哲学や視点が宿っていると感じていました。それは言葉だけでは伝えきれない領域でもあり、次第に“つくる側”への関心が強くなっていたんです。きっかけは、コロナ禍にフランスで外出規制が施行された時期、「自分も表現する側でありたい」と強く考えるようになったことです。自分自身の感覚や思考を、より直接的に形へ落とし込む手段が「ラ・レフレクション」です。
WWD:美意識やモノ作りへの感覚はどう育んだ?
ツチハシ:父が古美術商を営んでいたこともあり、幼い頃から美術品に囲まれて育ちました。その中で、形や構造、物が持つ美しい均衡に自然と惹かれていきました。父は職人への敬意や、モノ作りに対する知識を非常に大切にしており、そうした価値観は現在の自分の感覚にも深く繋がっていると感じています。
WWD:なぜジュエリーという表現方法を選んだ?
ツチハシ:ジュエリーは家具と同じように、世代を超えて長く受け継がれ、時間と共に人生の一部となっていく存在です。さらにジュエリーには建築的な構造や思想、そして感情までも凝縮できる可能性があると考えています。学生時代からジュエリーへの憧れは抱いていましたが、一方で自分自身が本当に身につけたいと思えるピースになかなか出合えなかったことも理由の一つです。「ラ・レフレクション」では、装飾品を超えて、身につける人の人生や感情を映し出す存在となるようなジュエリーを目指しています。
「大きな人生の転機の記憶と
結びつく存在になれたら」
WWD:「映し出す存在」でありたいという思いから、“反映”を意味する「ラ・レフレクション」というブランド名へとつながっている。
ツチハシ:常に自分自身と向き合いながら、長い時間をかけて身につけ続けてほしいという思いを込めており、その考えはブランドの核となる“内省(Auto-reflexion)”というフィロソフィーへと繋がっています。「ラ・レフレクション」は、今日のスタイリングのためのジュエリーというよりも、人生の思い出や時間を共にするピース。自身の生き方を内省する良いきっかけになってほしいと思っています。何かの決断を後押ししたり、大きな人生の転機の記憶と結びつく存在になれたら理想的です。
同時にブランドには、私自身の人生経験も投影しています。東京で生まれ、サンフランシスコ、ニューヨーク、パリと異なる都市での生活を通して、さまざまな文化や言語に触れ、価値観や視点に大きな影響を受けてきました。異なる環境の中で自分自身の感情と向き合うことは、自己を見つめ直し、本質を理解する契機にもなりました。そうした“内省”の積み重ねが、ブランドの思想の基盤になっています。その姿勢は、モノ作りの工程にも反映しており、試作と検証を繰り返しながら、一つの形を丁寧に導き出していきます。思考と試行の積み重ねによる「ラ・レフレクション」という概念を、形として表現しています。
WWD:着想源である建築物を、どのようにジュエリーデザインへ落とし込んでいる?
ツチハシ:建築物のデザインをジュエリーで表現するというのではなく、実際に行ってみた時に感じる空間のバランスや構造や曲線、余白に影響を受けています。気になる建築物があれば実際に足を運び、そこで感じる空間や体験を大切にしています。例えば、シグネチャーである“オメガ”ブレスレットは、光の反射によって際立つ素材の美しさ、直線と曲線の均衡による構成美を意識して製作しました。余計なものを削ぎ落とした建築物のように、“間”を感じるデザインを目指しています。
家具などのプロダクトデザインやアート、心理学などからも影響を受けています。人間の内面について考えさせられるものには強く惹かれます。それらが今の自分の考え方や生き方に刺激や内省のきっかけを与えてくれるからです。私の場合、そういった刺激や内省のきっかけが、デザインへのインスピレーションや意欲に繋がります。
少しの“違和感”と“余白”を大事に
経験や感情を自由に重ねて
WWD:デザイン面では、具体的にどのような点にこだわっている?
ツチハシ:強く主張しすぎないけれど、ふとした瞬間に存在感を感じる。そういった、少しの“違和感”が記憶に残るデザインを大切にしています。細かな点で言えば、直線と曲線のバランスと、それらが際立つように仕上げています。ただ、見る人にデザインの意味を押し付けたくないので、説明しすぎないことも強く意識しています。人によって解釈が変わる“余白”を残すことで、ジュエリーと身につける人との関係性はより深くなると考えています。身につける人の経験や感情を自由に重ねていってほしいです。
デザインにおいては、時間をかけてプロダクトに向き合うことを大切にしています。そのため「ラ・レフレクション」ではシーズン毎の新作発表をせず、デザインから制作まで、すべての工程にしっかりと時間をかけ、本当に納得できた製品だけを発表しています。デザイン(2D)が決定してからスムーズに製作が進むというわけではなく、立体的(3D)にするとミリ単位で印象が変わってしまうため、原型を製作するまでに時には何カ月もかけることもあります。時間と労力を要しても、決して妥協したくないんです。
WWD:ブランド設立から約4年で、どのような反響を感じていますか?日本初となるポップアップ開催に至った経緯は?
ツチハシ:少しずつですが、ブランドとしての思想に共感してくださる方が増えてきた実感があります。特に背景にあるコンセプトや空気感まで受け取ってくださる方が増えてきたことは、とても嬉しく感じています。今回の阪急メンズ東京でのポップアップは、日本で初めて直接ブランドの世界観を体験していただける機会になります。以前から日本の方からの反応は多く、実際に手に取れる場を作りたいと考えていた中で、今回ご縁があり実現しました。
日本では10金や14金のゴールドジュエリーなども幅広く普及していますが、フランスでは基本的に18金という認識が強い印象です。「ラ・レフレクション」も主に18金を使用しています。パリで活動するブランドとして日本の皆様の感性とどう共鳴するのか、とても楽しみにしています。