ファッション

「ロエベ」の遊び心あふれるクラフト ファッションを通して表現する前向きなエネルギー【2026-27年秋冬パリコレダイジェストVol.3】

2026-27年秋冬のコレクションサーキットが終わり、シーズンを象徴するムードやトレンド、デザイナーたちの考えが見えてきました。「パリコレダイジェスト」では、毎回一つのトピックをもとに気になったブランドのコレクションを取り上げます。

第3回は、春夏に続きファッションを通して表現された前向きなエネルギーです。現在の混沌とした世界や暗い時代に対して、デザイナーたちは“ジョイ(喜び)”や“希望”のメッセージをコレクションに込めました。ここでは、ジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)による2シーズン目の「ロエベ(LOEWE)」「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」「アンドレアス・クロンターラー フォー ヴィヴィアン・ウエストウッド(ANDREAS KRONTHALER FOR VIVIENNE WESTWOOD)」をピックアップします。

ジャック&ラザロの「ロエベ」が
実験的なクラフトに込めた遊び心

半年前のフレッシュなデビューコレクションに続き、今季もジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスが手掛ける「ロエベ」は、若々しくスポーティーなスタイルと鮮やかな色使い、そしてユニークなシルエットや素材使いで、着実に新たなイメージを確立しつつあります。今季はウィメンズとメンズを一緒に披露しました。

今季、2人が特にこだわったのは、「ロエベ」の代名詞であるクラフトをどのように生かすかということ。「ただ伝統として扱うのではなく、いかに現代的なものとして再解釈するか。手仕事と最新テクノロジーを融合させ、昨日までは存在し得なかったものを生み出すことを目指している」と、ショー後にラザロは説明。ジャックも「クラフトという概念を、いかに現代へと前進させるかをずっと考えてきた。手仕事と機械を融合することで、これまでにない新しいものが生まれる。私たちは、そういうクラフトに関心がある」と明かします。

そんな2人にとって重要だったのは、クラフトを「遊び」として捉えること。「クラフトはモノ作りの喜びであり、どこかジョイフルで遊び心のある要素がある。そして、義務ではなく自分が楽しいと思うからできること。その遊び心や喜びに惹かれたし、それらは今、世界が必要としているものだと思う」とラザロが語るように、今季のコレクションには遊び心があふれていました。

例えば、ショーの幕開けを飾ったスリップドレスはラテックス製で、レースの模様やリボンまでを3Dプリントで忠実に再現。糸状にしたレザーを編んだタータンチェックのセーターやラッカー加工を施したレザーをループ状にすることブークレのように仕上げたコートなど、「ロエベ」ならではのレザークラフトも見応えがあります。そして、グラデーションになったシアリングのアウターやドレスは、プードルのトリミング技術を生かしてトリマーが刈り込んで仕上げているそう。コレクションに遊び心やポップさをもたらすため、会場に作品も飾ったアーティストのコジマ・フォン・ボニン(Cosima von Bonin)による造形作品に見られるようなシルエットや柄も随所に取り入れました。

また今季は、「空気より軽いものはない」という発想のもと、軽やかにボリュームを表現するために用いた空気でふくらませる“インフレーテッド“なデザインもポイント。ウィンタースポーツのイメージにつながるカラフルなマウンテンパーカはぷっくりとしたシルエットを描き、ボイルドウールのチェスターコートに付いた膨らむライナーはサイドベンツから飛び出して弾みます。

ウエアにも見られた遊び心は、アクセサリーにも表れていました。バッグで目を引いたのは、新しいアイコンとして昨シーズンから打ち出している“アマソナ180”の開口部からぬいぐるみが飛び出したデザイン。巾着型の“フラメンコ“も、ドローコードのノット(結び目)部分がロブスターの爪になっています。それだけでなく、会場にも飾られたコジマの作品を思わせる犬やヤドカリをモチーフにしたチャームやジュエリー、そして“インフレーテッド“なデザインに欠かせないロブスターの爪型の空気入れまで登場しました。新作モデルとしては、ワンハンドルの“ウィスカー“を提案しています。一方、足元はダイブシューズをキトゥンヒールで再解釈したようなスポーティーなデザインが印象的でした。

ジャックとラザロは「ロエベ」の根幹にあるクラフトやレザー、スペインのルーツに焦点を当てながら、彼ららしいモダンで楽観的なアプローチや2人が慣れ親しんできたアメリカンスポーツウエアの要素を生かして新時代を切り開いています。6月にはメンズ単独でのショーも初めて開催するとのこと。彼らの描く世界観の広がりが楽しみです。

「ノワール ケイ ニノミヤ」の
暗闇に咲く希望の花

コレクションのタイトルは、「ダーク・ブルーミング(DARK BLOOMING)」。「今の世界には悲しみがあるけれど、それをポジティブなものに変えていくべき」と語る二宮さんは、前向きに考えることの大切さを示しました。

ショーの中盤までは、ブランドの代名詞である黒をベースに、体を包み込む立体的なピースをテーラリングやレザージャケットに合わせたスタイル。チリチリの毛をまとめたような立体をくり抜いて形成した骸骨や、アクリル樹脂で表現した棘のモチーフが目を引きます。そして、顔の一部はアーティストのショップリフター(SHOPLIFTER)が制作したヘッドピースやフード、マスクなどで覆われており、「ノワール ケイ ニノミヤ」らしいフリルやリボンといったガーリーなディテールを織り交ぜながらもダークな雰囲気を醸し出します。

そこから一転して登場したのは、立体的な花の装飾があしらわれたミリタリーウエアをベースにしたベージュのジャケットやドレス。キッチュなニットの花を飾ったハーネスやクリノリンのような骨組みのドレス、黒のカラーの花がランダムに散りばめられた巨大なピース、小さな花々が絡み合うように体を覆うドレスなど、暗闇の世界に希望をもたらすように、さまざまな手法で生み出した花々が咲き乱れました。

以前から「基本的にファッションはポジティブなもの」と語ってきた二宮さんは、今季も黒の世界の中を基調としつつ、明るい気持ちを感じさせてくれました。

恐ろしい時代に明るい一面を示す
アンドレアスによる「ヴィヴィアン」

アンドレアス・クロンターラー(Andreas Kronthakler)にとって21回目となるコレクションのタイトルは、かつてヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が語った「Catch the rhythm!(リズムに乗れ!)」という言葉からヒントを得た「CATCH THE RHYTHM! LET’S GO!」。「世界は奇妙な状態。多くの人や物事にとっては、恐ろしい時期とも言えるだろう。でも、立ち止まることはできない。だから生み出し続け、それを正当化させるために情熱を込めた。私たちは、道を切り開いていかなければならない。ファッションは、明るい一面を見せるものだから」。そう語るアンドレアスは、彼と同じオーストリア出身でパワフルかつ恐れ知らずの女優ロミー・シュナイダー(Romy Schneider)や、古代を想起させるスタイルが得意だったイタリア人衣装デザイナーのダニーロ・ドナーティ(Danilo Donati)から着想を得て、前向きな思いを込めたコレクションを制作しました。

中心となるのは、肩を誇張したテーラリングやさまざまな着方で楽しめるドレープドレスを核に、歴史的な要素やパンクなアティチュードを織り交ぜたスタイル。チェックやストライプのジャケットやコートでクラシカルな印象を与えながら、男女共に下着とガーターベルト&ストッキングを合わせていたり、足元がパンプスだったりと今季もジェンダーの概念にとらわれない自由さを打ち出しています。そして、モデルは手にロリポップ(棒付きキャンディー)を持っていたり、巨大な帽子を被っていたり。そんな遊び心とエレガンスが交じり合うスタイリングは、彼が惹かれる詩人ジェフェリー・チョーサー(Geoffrey Chaucer)の「人間はユーモアを交えながら理性的な生活を追求する」という考え方を映し出しています。

プレスリリースの中で、ヴィヴィアンに対して「毎日あなたが恋しい。私は、あなたからたくさんのものを受け取った。そして、あなたのいない世界に慣れようとしている。簡単ではないが、これからも努力を続ける」と綴ったアンドレアスは、 彼女の精神や美学を受け継ぎながらも前進し、彼自身のユーモアや官能性を交えたスタイルを通してブランドの未来を描こうとしている。そんな姿勢を感じるショーでした。

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