ファッション

「ジンズ」銀座グローバル旗艦店がオープン 藤本壮介らが語る「建築 × アート」で“体験する店舗”

アイウエアブランド「ジンズ(JINS)」は銀座にグローバル旗艦店をオープンした。藤本壮介が設計を担当し、店内には現代アーティストの名和晃平の大型作品を設置。銀座の一等地にあって店舗の半分近くをギャラリースペースに割くという大胆な発想で、建築とアートが一体となった店舗空間を打ち出す。オープンを記念したトークイベントには、ジンズホールディングスの田中仁会長と藤本、名和が登壇。出店の経緯や店舗を“売る場”から“体験の場”へと進化させる同社の戦略、銀座という街との“縁”について語った。

「ジンズ」にとって銀座出店は、単なる出店戦略の一環ではなく、ブランドの現在地を示す象徴的なプロジェクトだ。田中会長は「『ジンズ』はカジュアルなブランド。銀座は縁遠い街と思っていたが、会社が大きくなりグローバル展開を進める中で、日本発のブランドとして認知されるには銀座に拠点を持つことが戦略的に重要だと考えた」と語る。

一方で「実を言うと、今回出店した場所は『銀座に出店するとしたらここしかない』と10年以上前から狙っていた」というエピソードも明かした。「ジンズ銀座店」が入るのは、チェコ出身の建築家、アントニン・レーモンド(Antonin Raymond)による設計で1933年に竣工した教文館ビル。教文館は、キリスト教に関する書籍や児童書を扱う老舗書店だ。

今も1階から3階、そして9階に同書店が居を構え、歴史的にも価値の高い教文館ビルにどうしても銀座店を持ちたいと考えた田中会長は、30年以上前に作った前橋の自邸が、レーモンドの孫弟子にあたる建築家、横内俊人の設計だったことからその「縁」を冊子にまとめ、ラブレターのように教文館に送ったのだという。その甲斐あって田中会長の熱い思いが伝わり、世界の名だたるブランドが出店を希望する中で「ジンズ」がこの場所に選ばれた。銀座のまちと新たな“縁”を育んでいきたいと据えた店舗のテーマ “縁(えにし)”を象徴するようなエピソードだ。

設計を担当した藤本にとっても、銀座は特別な場所だ。藤本は「大学時代の卒業設計の舞台が銀座だった」と振り返り、「歴史や格式とともに、空間的にも非常に面白い挑み甲斐のある都市」と語る。今回の店舗設計では、明確な完成形を最初から定めるのではなく、田中会長と対話を重ねながら形を探るプロセスを採用した。

象徴的なのは、外観デザインだ。藤本は「最初はシンプルな箱型も提案したが、田中さんが“何か違う”と感じた。その違和感を起点に試行錯誤を重ねた」と説明する。その結果、目地がなく有機的で、和菓子のようなフォルムのファサードが生まれた。「人工的な街の中にありながら、どこか自然のような存在にしたかった」といい、手仕事の痕跡が残る左官仕上げで独特の存在感を生み出している。ファサード表面の不思議な光沢感は、白の左官材にミラーの破材を混ぜ込んだことによるものだ。

そして店舗空間の核となるのが、名和による大型作品だ。もともとは田中会長が出資して2025年大阪・関西万博のために構想した高さ5mの彫刻作品“スノー ディアー(Snow-Deer)”を、「ジンズ銀座店」オープンに際して建築と連動する形で設置した。藤本が「上下階から360度で体験できる構成にした」と語る通り、動線そのものが作品体験となるよう設計した。

設置にあたっては物理的な困難も伴ったというが、田中会長は「アートが入ったことで初めて空間が完成した」と語る。その言葉が示す通り、「ジンズ銀座店」においてアートは装飾ではなく、空間の本質を構成する要素として位置付けられている。店舗にアートを組み込む理由について、田中会長は「店舗は商品を売る場所であると同時に、ブランドが何者かを体験してもらう場」と説明する。「アートは直接売り上げに結びつくものではないが、ブランドの“ルーツ”を示すもの。結果的にブランド価値の向上につながる」と続けた。

藤本は「ジンズ銀座店」の空間を「店舗でありながら、どこかパブリックな性格を持つ場」と表現する。「単なる商業空間ではなく、人が集まり何かが起こる場所。都市と接続された空間を意識した」と話す。

田中会長は「『ジンズ』は眼鏡を売る会社だが、本質は“見ることを通して人生を広げる”ことにある」と語る。その意味で、今回の銀座店は単なる旗艦店ではなく、ブランドのビジョンを空間として可視化した試みであり、「ジンズ」が提示する“体験”を軸にした新しい店舗像を体現する場でもある。グローバル旗艦店ならではの取り組みとして、同店では、福井県鯖江市の職人技が光るハイエンドなアイウエアコレクションをそろえる(6型18種、価格は8〜9万円)ほか、地下のギャラリースペースでは今後不定期にさまざまな展示を開催していくという。

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