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注目のシューゲイザー・バンド、ジャスト・マスタードが初来日で語る「マイブラ、ピクシーズ、エイフェックス・ツインからの影響」

近年はアイルランドの音楽シーンが大いに活気づいている。フォンテインズ・D.C.(Fontaines D.C.)などのロック・バンドから、CMATのようなポップ・スター、そして、(Kneecap)に代表されるヒップホップ・アクトに至るまで、ジャンルをまたいで優れた才能が次々と世界的な躍進を遂げているのだ。アイルランド北東部の街ダンドークから登場したバンド、ジャスト・マスタード(Just Mustard)もまた、そんな勢いづく同地のシーンから頭角を現した逸材である。

彼らの通算3作目となる最新作「We Were Just Here」は、シューゲイザーの流れを汲む幻惑的な轟音ギター、エレクトロニック・ミュージックの影響も色濃く感じられるリズム隊、そしてドリーム・ポップのように甘美なボーカルが結合した作品。その音楽的な構成要素は過去二作と共通しているが、作品が放つムードは大きな変貌を遂げた。これまではダークで退廃的、かつ沈み込むような重さが充満していたのに対し、今作はむしろ空を駆け抜けるような疾走感とユーフォリアに溢れている。そこには、暗闇から光の差す方へと手を伸ばしているようなドラマティックさも感じられるだろう。いつになく開放的でありながらも、彼らの特徴である強い陶酔感も湛えた今作は、現時点での最高到達点と言える作品だ。

1月4日に幕張メッセにて開催されたフェス「ロッキング・オン ソニック(rockin’on sonic)」(以下、「ロキソニ」)で初来日を果たし、耳を突き刺す爆音ノイズと甘いメロディーで、トップバッターながらも鮮烈な印象を残した彼ら。そのライブの2日後、ケイティ・ボール(Katie Ball、Vo)、デイヴィッド・ヌーナン(David Noonan、G/Vo)、メテ・カリョンジュオール(Mete Kalyoncuoğlu、G)、ロブ・クラーク(Rob Clarke、B)、シェイン・マグワイア(Shane Maguire、Dr)の5人全員揃って、インタビューに応じてくれた。

日本のカルチャーからの影響

——これまで海外のインタビューで「日本に行きたい」と発言しているのを何度か読みましたが、実際に来てみていかがでしたか? インスタグラムでは、カラオケに行ったり、お酒を飲んでいたりする写真をポストしていましたよね。


ケイティ・ボール(以下、ケイティ):うん、カラオケはすごく楽しかった。なんか面白いよね。というのも、アイルランドを思い出して。私たちはお酒を飲むと、カラオケはしないけど、パブの隅っこで自然と歌い出したりするの。そういう意味で、日本とアイルランドって似ているなって思って。もう2回も行ったよね。

デイヴィッド・ヌーナン(以下、デイヴィッド):うん、(カラオケは)すごく楽しいよね。

シェイン・マグワイア(以下、シェイン):僕はちょっとオタク寄りの興味があるから、昔から日本のビデオゲームやアニメが好きだった。でもそれだけじゃなくて。そうした作品の中では日本文化が描かれていることも多くて、行く前から「きっとこんな感じなんだろうな」っていうイメージは持ってた。でも、やっぱり実際に行ってみないと本当のところは分からない。今のところ東京にしかいないけど、それでも本当に素晴らしい時間を過ごしている。昨日は秋葉原を歩き回っていたんだけど、かなり強烈だったよ。

ロブ・クラーク(以下、ロブ):僕も同じだね。ずっとビデオゲームに興味があった。1998年にプレイステーションを手に入れてから、日本文化のある側面にずっと夢中だった。音楽もそうだし、食べ物もね。今はアイルランドの自宅で寿司を作れるように練習している。米がいちばん難しくて、ちゃんと炊くのが本当に大変なんだ。でも、米も、酒も、酢も全部揃えて、かなりいいところまで来ているよ。

——すごい、かなり本格的ですね。

ロブ:それと、特にビデオゲーム音楽にはずっと影響を受けてきた。「ファイナルファンタジーVII」みたいなゲームのサウンドトラックは、個人的にとても特別な存在だし、子どもの頃の記憶とも強く結びついている。ゲームの美術やビジュアルの多くも、東京的なスタイルの要素に基づいている部分があると思う。配管や電線みたいなものを見ると、すごく惹きつけられるんだ。たぶん日本の人にとっては見過ごしてしまうようなものだろうけど、僕にとってはすごく美的に感じられる。ここで写真を撮る人が多い理由もよく分かるよ。

メテ・カリョンジュオール(以下、メテ):うん、たぶん僕もロブやシェインと似ていると思う。かなり幼い頃から、日本のアートやビデオゲーム、アニメ、映画に影響を受けてきた。実写もアニメも含めて日本映画の大ファンで、今敏は特にお気に入りの一人だね。食べ物もすごく楽しんでいるし、新しい体験ばかりで本当に最高だよ。

——「ロキソニ」でのライブを観ましたが、やはり生で観るとギターやベースの使い方がとてもクリエイティブだったことが印象に残りました。普通だったらシンセサイザーで出すようなサウンドも、実はギターとベースを駆使して生み出しているのが面白い。なので、あなたたちの楽器演奏に対するこだわり、もしくはそれで何を表現したいと思っているのか、ということについて教えてください。

ロブ:(表現したいのは)没入するような感覚だね。曲をアレンジしたり作曲したりするとき、常に「この曲を観客がどう体験するか」を頭に思い描いている。あくまで個人的な感覚なんだけど、観ている人たちを自分自身の思考から少し解放してあげたい、という気持ちが強い。例えば、すごく良い映画を映画館で観たあとに外に出て、「え、今何時? 自分は誰?」みたいな感覚になることがあるよね? ああいう現実からの一時的な逃避。その感覚を、曲を書くときにもいつも意識している。聴いている人の頭の中を完全に消し去るくらい、徹底的に没入させたいんだ。

デイヴィッド:基本的には、何かしらの感覚を捉えようとしている、って感じかな。曲を書いているときに、自分の中で響いてくる特定のムードとか感情を掴んで、それをできるだけ広げて、一つの曲やアレンジとして成立させていく。結局は、感情を音に翻訳する作業なんだと思う。

メテ:僕はすごく簡単に型にハマってしまうタイプなんだ。一度パターンができると、そこに落ち着いてしまう。でも、クリエイティブでいるためには、それをどこかで壊さないといけないと思っていて。だから、自分の中の型を壊す、という感覚かな。音響的に面白いサウンドを作ろうとしたり、デイヴィッドが言ったみたいに感情を捉えようとしたりすることが、結果的に自分の創造性を開いてくれたんだと思う。

影響を受けたアーティスト

——では、そういった自分たちの演奏の仕方に影響を与えたアーティストはいるんですか?

メテ:直接的な影響ってわけじゃないんだけど、若い頃にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Rage Against The Machine)のトム・モレロ(Tom Morello)のインタビューを読んだことがあって。そこで彼が、ギターのことを「ただの木の板に弦が張ってあるだけのものだ」って言ってたんだよね。つまり、決まった弾き方をしなきゃいけないわけじゃないし、何をやってもいいんだ、って。その話を聞いて、「あ、なんでもやっていいんだ」って腑に落ちたんだ。それと、ソニック・ユース(Sonic Youth)もそうだね。ソニック・ユースは本当に好き。

ロブ:僕の場合は、ジョイ・ディヴィジョン(Joy Division)かな。ベースに関して言うと、ピーター・フック(Pete Hook)は自分にとって本当に大きな影響源で。彼のベースラインはすごくミニマルなものが多くて、曲の背景に位置しているんだけど、同時に強いメロディーも持っている。ジョイ・ディヴィジョンの曲では、ベースがリード楽器みたいな役割を果たしていることも多いよね。そういう感覚は、自分の中にも少し取り入れていると思う。ベースラインを、ただ後ろに引っ込めるんじゃなくて、曲の前面に出てくる存在にしたい。実際、僕らの曲でもそうなっているものは多いし。だから、そういうところが自分のインスピレーションかな。

デイヴィッド:僕はやっぱりマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)の影響が大きいのは間違いない。それから、アイルランドのバンド、ギラ・バンド(Gilla Band)もそうだね。ああいう存在があったから、いつか自分たちもバンドを始めようと思った部分はあると思う。影響を挙げだしたら本当にキリがないけど、結局は、聴いている音楽すべてかな。普段聴いているもの全部が、少しずつ混ざり合っていく感じ。

シェイン:エレクトロニック・ミュージックみたいな、まったく別のジャンルからの影響もあるよね。みんなそれぞれ違うタイプのエレクトロニック・ミュージックを聴いているし、彼らがエフェクト・ペダルで作り出している音も、アルペジオのループみたいに聴こえたりして、それを作曲のアプローチとして使っているのが面白いと思う。

——ケイティはどうですか? ボーカルに関しては。

ケイティ:ピクシーズ(Pixies)のことを考えてたかな。彼らが光と闇をどう表現しているかって。そのコントラストの付け方は、私たちも常に意識していると思うし、男女のボーカルの関係性とか、キム・ディール(Kim Deal)のベースラインも含めてね。それからアレンジもそう。必ずしもサビがたくさんあるわけじゃなくて、Aパート、Bパート、みたいな構成だけで進む曲も多いでしょ。私たちの曲もそういうものが多い。だから、ピクシーズは間違いなく、初期の段階でのすごく大きな影響源だったと思う。

——最初にバンドを始めた頃、みんなが共通して好きだった音楽やバンド、いわば「共通の好み」みたいなものがあったと思うんですが、それはどういうものだったと説明できますか?

メテ:たぶん、エイフェックス・ツイン(Aphex Twin)かな。まあ、僕らの音楽を聴いていると、あまりピンとこないかもしれないけど(笑)。

——いや、エレクトロニック・ミュージックの影響は確実にありますよね。特にドラムとベースにはそれを強く感じます。

メテ:彼の音楽はみんな本当に心から敬愛していると思う。正直、説明するのは難しいね。ただ、みんなそれぞれかなり雑多で折衷的な趣味を持っているから、自然と引き寄せ合ったんだと思う。

アイルランドの音楽シーン

——では、地元であるアイルランドのダンドークという街や、そこの音楽シーンから何かしらの影響を受けたところはあると思いますか?

ケイティ:シーン自体はすごく健全だと思う。ダンドークには、いわゆるDIY的な気質があると思うんだよね。すでに健全な音楽シーンがあるから、「まずはダブリンに行ってからバンドを始めよう」とか、「ダブリンに引っ越してからじゃないと」みたいな発想にならない。北部では、みんなそのまま地元でバンドを始めて、都市に出ることをあまり気にしない。そういう姿勢は、私たちにも影響を与えていると思う。

——なるほど。

ケイティ:実際、最初のアルバムを作っていたときも、「まずはEPを出して、もう1枚EPを出して、それから契約を待ったほうがいい」って言われたけど、私たちはそんなこと気にしなかった。ただアルバムを作りたかっただけ。それも、ダンドークの影響だと思う。他人のやり方に合わせたり、周りに流されたりしない、っていう感覚が。

ロブ:ダンドークは東海岸にある港町で、場所によってはちょっと工業的なんだ。工場があったりしてね。だから、人によっては少し無骨で荒々しい場所に感じるかもしれない。一方で、とても穏やかで静かな場所でもある。でも、独特のざらつきは確かにあるんだ。そういう意味で、僕らの音楽にも、少しヘヴィな質感があるのかもしれない。似た例を挙げるなら、ポーティスヘッド(Portishead)かな。彼らの音楽って、彼らが育った場所(*イギリスのブリストル)の音がするよね? 工場や港湾地帯の雰囲気が音になっている。だから、もし僕らがカリフォルニア出身だったら、音楽はもう少しリラックスしたものになっていたかもしれないね。

ケイティ:ただ、ダンドークの他のバンドが私たちと似た音を出しているわけではなくて。みんな本当に個性的で、それはすごくいいことだと思う。お互いを支え合っていて、競争意識みたいなものはなかった。みんなそれぞれ、自分のレーンで自分のやりたいことをやっている、って感じ。

メテ:それがこの街のいいところの一つだと思う。例えば、「ここはLAパンクの街で、みんな同じ方向性」みたいなシーンも、それはそれで悪くないけど、ダンドークでは本当にみんな違うことをやっているし、お互いの音楽をちゃんと聴いている。どれもすごくユニークで、それぞれが自分のものを作ろうとしている。それができる場所として、本当にいい環境だと思う。

——先日、アイルランドの音楽シーンを特集したガーディアンの記事を読んだんです。そこでは、いま台頭しているアイルランドのアーティストたちは、リーマンショック後の大不況や北アイルランド紛争の余波の中で育った世代であることが強調されていました。実際、そのような社会背景は、あなたたち自身、そしていまアイルランドから優れたアーティストたちが続々と登場していることと何かしらの関係があると思いますか?

デイヴィッド:北アイルランド紛争の時代や、これまでのアイルランドのいろんな局面を振り返っても、この国は小さいし、チャンスも多くはない。だからこそ、自分たちで作るしかない、っていう状況になるんだと思う。空気そのものを自分たちで変えていく、というかね。前回の不況のあとも、確かに音楽やアートが一気に出てきた印象はある。外に出て何かをするための選択肢がほとんどなくて、結局は友だちと何かをやるしかない、自分たちでコミュニティーを作って動くしかなかったから。アートって、退屈さや、他に選択肢がない状況から生まれることが多いと思う。ただ、単に暇という意味じゃなくてね。自分で何か面白いことを作らなきゃいけない、自分で何かを始めなきゃいけない。そういう意味での退屈さのことだよ。

ケイティ:うん。やることといえば、パブに行くか、友だちと集まって音楽をやるくらいしかないしね。

デイヴィッド:お金もないし、行き場もない。だから、無料でできることをやるしかない。音楽は、一度始めたらずっとタダでできるからね。

ロブ:バンド練習って、無料のギグみたいなものだよ。好きなだけできる。5時間でもいいし、15年続けることだってできる。

デイヴィッド:それに、いい逃避にもなると思う。

メテ:うん。不況はアートにとっては最高だよ。

ロブ:それに、バンドでも何でも、創作的なコラボレーションを持つこと自体が、メンタルヘルスにもいいと思う。友情や友だちのつながりを保ってくれるからね。理由や口実がないと集まりづらいこともあるし、特にアイルランドだと、集まる場所といえばバーでお酒を飲む、になりがちだから。昼間に、しらふで友だちとスタジオに入って、創作に集中する。あれはすごく健全な関係性だと思う。だから、そういう意味でも、バンドをやることは人にとって良いことなんじゃないかな。

最新作「We Were Just Here」

——なるほど、よく分かりました。では、最新作「We Were Just Here」について訊かせてください。前2作はダークで沈み込むようなムードを湛えていましたが、今作では爽快で疾走感があり、眩しい光に包まれるようなユーフォリックな感覚があります。こうした違いはどこから生まれているのでしょうか?

ケイティ:たぶん、単純に何か違うことをやりたかった、というのが大きいと思う。3作目でもあるし、ここで一度変化をつけて、これまで掘り下げてこなかった感情を探ってみたかった。デイヴィッドが言っていたみたいに、私も曲を書くときはムードを作ることを意識しているんだけど、ユーフォリアってすごく面白い感情だと思うんだよね。いろんな側面があるし、その中に書けることがたくさんある。そこに惹かれた、というのが大きいかな。

デイヴィッド:音楽を作る上で、自分たちのアウトプットに正直であろうとするなら、人生と同じで、暗い場所に長くいたら、いずれは光のほうを見にいかざるを得なくなると思うんだ。だから、正直に作っているなら、作品はその時々の人生と自然に重なってくる。これまでのアルバムは、その時の自分たちの気分がそのまま表れていたし、今回のアルバムも、まさにあの時の自分たちの感覚そのもの。そういう意味では、とても自然な流れだったと思う。個人的には、アルバムを通して、ひとつの物語みたいなものが見えてくる感じがしていて、それも気に入っているんだ。

——僕の観点から言わせてもらうと、「We Were Just Here」は、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの「Loveless」、ブリアルの「Untrue」、そしてニルヴァーナの「Nevermind」というトライアングルの中心に存在するアルバム、という印象を受けました。

メテ:うわ、すごいね。

ロブ:うん、かなりいい線いってると思う。かなり近い。

——「Loveless」は全体的な陶酔感、「Untrue」は強烈なサブベースやドラムの疾走感、「Nevermind」は歌詞の書き方からの連想です。ただ、あなたたちであれば、僕が挙げた3作品以外に、どんな作品を付け加えたいですか?

ロブ:そうだね、この円の中には、もっといろんなバンドを加えることもできると思う。例えばナイン・インチ・ネイルズ(Nine Inch Nails)も、僕らにとってはすごく大きな存在だから、どこかに入ってくると思う。

——アルバムで言うと?

ロブ:僕にとっては「The Downward Spiral」だね。

メテ:うん。たぶん、(「We Were Just Here」の)荒々しい音色とかは、そういうところから来ているんだと思う。いくつか共通する感触はあるし、この作品に関して言えば、ああいう質感は確かに影響していると思う。

——今作はカラフルで多幸感を覚えさせますが、プレスリリースには「自分にとって害になりかねない幸福」「陶酔感を得ようとしてるんだけど、そこには犠牲が伴う」というケイティの発言が引用されていて、あなたたちが表現しようとしていることにはある種の二面性があることが示唆されています。この感覚について、もう少し詳しく教えてもらえますか?

ケイティ:たぶん、そのとき自分が感じていたこと、そのままだったんだと思う。うん、本当にそれだけかな。

——では、そういった感覚というのは、どこから出てきたものだと思いますか?

ケイティ:私は曲を書くとき、何について書いているのか自分でもよくわかっていないことが多いんだよね。あとから、「ああ、そういうことだったのか」って、一年くらい経ってから腑に落ちたりする。それが、その時の自分の感情だった、ってことなんだと思う。まあ、起きたこと全部、結局は自分自身の感覚なんだよね。

——あなたの書く歌詞は、意図的にシンプルな単語とシンプルな文章を使って、何かしらのフィーリングを伝えようとしているところがあると思います。その点でインスピレーションを受けたものは何かありますか?

ケイティ:正直、たくさんあると思う。ずっとカート・コバーンの歌詞が好きで。彼が何について歌っているのか、いつもはっきりわかるわけじゃないところがいいんだよね。聴き手が自分なりの意味を見つけられるところが好き。だから、たぶんそういう感覚かな。うーん、ほかにもいっぱいあるはずなんだけど、今は思い浮かばないな。デイヴィッド、何かある?

デイヴィッド:どうだろう。でも、デイヴィッド・リンチ(David Lynch)のアートに対する姿勢には、間違いなく影響を受けていると思う。直接的に歌詞というわけじゃないかもしれないけど、物事を説明しすぎずに、そのまま提示すること。観る人や聴く人が、自分なりに意味を読み取れるようにする、という考え方だね。特定の考えを押し付けるんじゃなくて、ムードやイメージを差し出して、それをそれぞれの人生に当てはめてもらう。そういう反応を引き出したいんだと思う。

ケイティ:物語を語るというより、フィーリングを作ることがすべてなんだと思う。スタジオで何かを演奏していて、そのときに感じたフィーリングに合う言葉を書こうとすることもあるしね。

デイヴィッド:逆のやり方をすることもあるよ。先に歌詞があって、それに反応するかたちで、音楽のムードが決まっていくこともある。

ケイティ:うん、音楽によって歌詞の意味が変わることもあるしね。

デイヴィッド:それに、歌詞が持っているムードとはあえて違う感情を、音楽のほうで作ろうとすることもよくある。そうすると、ふたつが組み合わさって、ひとつの感情じゃない、二面性のある、あるいは多面的な感覚が生まれるんだ。伝わるかな?

2025年のベスト・アルバムは?

——ええ、よく理解できました。では最後に、皆さんにとっての2025年のベスト・アルバムを教えてください。

ケイティ:私はギース(Geese)の「Getting Killed」がすごく好き。たぶん、それかな。一番よく聴いてる。

——僕も昨年のベストはギースでした。

ケイティ:だよね。

デイヴィッド:迷う余地があまりないというか、僕もすぐにそれが思い浮かぶかな。

シェイン:最近、エセル・ケイン(Ethel Cain)の「Willoughby Tucker, I'll Always Love You」を聴いたんだけど、彼女は普段はポップ寄りの作品を作っているのに、これは突然ドローン/アンビエント的な作品になっていて、それがすごく面白かった。個人的にはかなり衝撃的だったよ。

ロブ:僕はワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(Oneohtrix Point Never)の「Tranquilizer」がすごく良かった。とにかく雰囲気があって、シンセティックで、クールなアルバムだよね。

メテ:正直、2025年のアルバムをちゃんと聴き込めてないんだよね。だから、まだお気に入りって言えるものはないかなあ。むしろ昔の作品をよく聴いてるんだ。

ロブ:じゃあ、僕たちの「We Were Just Here」がベストって言えばいいじゃん。

メテ:あ、そうだね!「We Were Just Here」が僕の2025年のベスト・アルバムだよ(笑)。

PHOTOS:MICHI NAKANO

■ジャスト・マスタード「WE WERE JUST HERE」
収録曲:
01. POLLYANNA
02. ENDLESS DEATHLESS
03. SILVER
04. DREAMER
05. WE WERE JUST HERE
06. SOMEWHERE
07. DANDELION
08. THAT I MIGHT NOT SEE
09. THE STEPS
10. OUT OF HEAVEN
https://bignothing.net/justmustard.html

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