「アントワープ・シックス(アントワープの6人)」の一員としても知られるベルギー人デザイナーのマリナ・イー(Marina Yee)が11月1日、がんとの闘病の末に死去した。享年67。アントワープにあるモード博物館MoMuが発表した。
2026年3月から「アントワープ・シックス」の展覧会を開催する同館のカート・デボー(Kaat Debo)館長は、「彼女はベルギーファッションにおける類まれな本物であり、その作品は誠実で詩的、そして常に人と素材への敬意に根差したものだった」とコメント。「ファッションが単なるトレンドを超え、内省や思いやり、つながりの手段となり得ることを教えてくれた。彼女のレガシーはMoMuをはじめ、広く受け継がれていくだろう」と続けた。
イーは1958年アントワープ生まれ。アントワープ王立芸術アカデミーでアン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)やドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)、ダーク・ビッケンバーグ(Dirk Bikkembergs)、ダーク・ヴァン・セーヌ(Dirk Van Saene)と共に学んだ。86年にはロンドンの「ブリティッシュ・デザイナー・ショー(British Designer Show)」に彼らと一緒に参加し、「アントワープ・シックス」として才能を世界にしらしめた。
「グルーノ&シャルダン(GRUNO & CHARDIN)や「バセッティ(BASSETTI)」で経験を積んだ彼女は、86年に自身のブランド「マリー(MARIE)」を設立。90年以降はファッションの表舞台からは離れ、舞台衣装やインテリア、アートなどさまざまな分野で活動。教育にも携わった。その後、2016年に日本のライラ トウキョウ(LAILA TOKIO)とビンテージウエアを再構築した小規模なコレクション「エムワイ・プロジェクト(M.Y.PROJECT)」を立ち上げて復帰。22年の正式な再始動後は、米ニューヨークとロサンゼルスのドーバー ストリート マーケット(Dover Street Market)やカナダのエッセンス(Ssense)、中国・北京のSKPなど世界40店舗以上で取り扱われていた。24年には「ベルジャン・ファッション・アワード(Belgian Fashion Awards)」で審査員賞を受賞した。