ファッション

15年ぶりの再ブーム! 「イザベル マラン」が“ベケット”を復活させた理由

PROFILE: イザベル・マラン/「イザベル マラン」デザイナー

イザベル・マラン/「イザベル マラン」デザイナー
PROFILE: 1967年生まれ、フランス・パリ出身。85年にスタジオ・ベルソーを卒業し、ミッシェル・クランやマーク・アルコーリの元で経験を積む。88年に独立してニットとジュエリーのブランドを設立し、94年に「イザベル マラン」に改名。日本での販売も開始した。2000年以降はセカンドラインやキッズウエアもスタートし、ビジネス規模を徐々に拡大。2012年にはトゥモローランドとフランチャイズのパートナーシップ契約を締結し、東京・表参道に日本第1号店となる通称“イエローハウス”をオープンした。18年春夏シーズンにはメンズも立ち上げている

イザベル マラン(ISABEL MARANT)」は、ビヨンセ(Beyoncé)やアン・ハサウェイ(Anne Hathaway)らのセレブをきっかけに2010年代初頭に人気となった、ブランドを代表するスニーカー“ベケット(BEKETT)”を復活させた。最近では、Z世代に人気を誇るシンガーのタイラ(Tyla)やメッテ(METTE)が“ベケット”もスニーカー姿を披露し、再び注目を浴びている。今回は、「イザベル マラン」青山店で9月21日まで実施しているインスタレーションに合わせ、デザイナー本人が来日。“ベケット”を復活させた理由や、デザインの着想源を聞いた。

WWD:“ベケット”をリバイバルしたのはなぜ?
イザベル・マラン=「イザベル マラン」デザイナー(以下、イザベル): “ベケット”を発売してからもう15年ほど経つが、TikTokで再び話題となった。店舗でも、若者たちが親と一緒に来店し、クリスマスや誕生日のプレゼントとして欲しがっているのを目にする。意外だったし、とても良い機会でもあった。デザインから考えても、アジアの人々にとても似合うと思う。履き心地が快適なのはもちろん、履くだけで脚が長く見えるので女性たちに人気だ。ミニショーツに合わせるなど、少しY2K的な雰囲気が今の流れにぴったりだ。

WWD:今の若い世代には、ベケットをどのようなスタイルやコーディネートで履くことを期待している?
イザベル: 個人的には、レギンスやミニショーツと合わせることが多い。なぜなら、それは脚を見せる靴だから。また発売当時は、フランスのヒップホップに感銘を受け、スポーティーなスタイルが中心だった。しかし現在はカーゴパンツのようにゆったりしたパンツとタンクトップに合わせる人もいれば、イギリス風の刺しゅうが施されたガーリーなスタイルに合わせる人もいる。さらに、Y2K風の小さくシンプルなドレスやジャージードレスとのコーディネートもあって、とても興味深い。

WWD:Y2Kやレトロに対してどう思う?
イザベル: ファッションもそうだが、私たちは流行していたものが好きだ。私自身、1980年代後半の頃は70年代のスタイルに引かれていた。なぜなら、それは刺激的で面白く、自分が直接体験したことのない美学だったから。

WWD:当時、他に夢中だったものは?
イザベル:フリーマーケットだ。すばらしいビンテージ品を見つけられるし、着想源となることも多い。ファッションを始めた頃は、40年代のものが好きだった。服の作り方がクチュール的で、布地や服を愛する人にとっては圧倒的に魅力的だ。コレクションでは80年代を着想源にしたアイテムを多く作っていた。そして今は、90年代を中心にモノづくりをしている。ファッションは常に前進しているが、ときには振り返って「あれも悪くなかった」と思い、それを現代的に再解釈することもある。

WWD:「イザベル マラン」には、ボヘミアンという一貫性がある。同時に何か新しい要素を取り入れているということ?
イザベル:どうやって自分の好きなものをバランス良く取り入れ、コレクションに落とし込むかが重要だ。私はよく料理を例にあげる。同じ料理でも、その時の材料や気分次第で味は変わるもの。同じムードを保ちつつ、新しさや違いを生み出したい。例えばシルエットも、時にはゆったりだったり、小さめだったり、ボーイッシュだったり、よりカラフルだったりする。つまり、物事の雰囲気を感じ取りながらモノづくりをしている。とはいえ、中でもその中心にあるのは私自身の感性だ。

WWD:デザインの軸となるものは?
イザベル:私は世界中のクラフトに引かれる。育った環境が影響しているのかもしれない。父はフランス出身のスペイン人で、母はドイツ人。幼い頃は、カリブ海出身の黒人女性と暮らすこともあった。家族でよく旅行し、家の棚にはいつもたくさんのオブジェが並んでいた。それらの全てから、大きな影響を受けてきた。その後、自らもアフリカやインド、メキシコなどを訪れた。そのたびにジュエリーや織物、染色技術、詩作など人々が手で作り出すものに感動した。そこで「すべてのクラフトと関わりながら仕事をしたい」と思うようになった。人々がよく「イザベル マラン」のデザインを「ボヘミアン」と表現するが、それは旅を重ねるジプシー的な意味でのボヘミアンであり、私はその自由な精神が大好きだ。また、本来は組み合わせないアイデアを組み合わせることも軸の1つだ。手仕事の温かみを持ちながらモダンで光沢のあるもの、民族的要素と未来感、フェミニンとマスキュリン、柔らかさと強さなど対極の要素を組み合わせるのが好きだ。1つのアイデアで完璧に仕上げられたものより、むしろ完璧でないものに魅力を感じる。

WWD:現在ファッション業界のムードや動きについて、どう感じている?
イザベル:デザインは音楽と非常に近い関係にあり、時として音楽からインスピレーションを得ていると思う。特に今は、コンピューターを使うことが多く、音楽と同じように要素を混ぜることで、特別な何かが生まれる。私も音楽に多くの影響を受け、いつも音楽を大きめの音でかけながらデザインしている。エネルギー、テンポ、そして楽しさが必要だから(笑)。

WWD:最近注目している音楽は?
イザベル:南アフリカ発祥の、アマピアノというジャンルだ。ソウェト(南アフリカの都市)の昔のバンドからの影響を受けつつ、シカゴハウスやヒップホップの要素も混ざっており、非常にユニークなミックスだ。

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